この世界のしくみを知る男

序章

3話

　ウラカヌスから聞いた言葉にヴェンは固まってしまった。

（は？どゆこと？アイダルキアを救う？何言ってんだこいつ・・・）

　ウラカヌスはそんなヴェンの反応を気にせず、話を続ける。

「このままだとアイダルキアが消えてしまう未来はそう遠くないだろう。だから闇の魔力を持つお前を選び、ここに導いた」

「そ、それならば僕じゃなくてもいいじゃないか。スキルを持つ人なら他にもいるんだろう？」

「いや、だめだ。闇の魔力を持ったお前にしかできない」

　ウラカヌスは何としてもヴェンを選びたいらしい。なぜだろうか。

「闇の魔力を持ったやつなんて他にもいるんじゃないか？別に僕じゃなくても・・・」

「いや、お前だけだぞ。人間が殺し続けたからな」

「なっ・・・！？」

ウラカヌスからとんでもない事を聞いた気がする。

「そ、それは・・・本当なのか？」

「ああ、そうだ」

　ヴェンは驚いていた。まさか闇の魔力を持った人間が自分だけだなんて想像もしていなかった。ウラカヌスは絶対引き受けろという顔でヴェンを見ていた。

「・・・けど、僕がアイダルキアを助ける理由などあるのか？殺されかけたんだぞ、この世界の人間に」

「そうかもしれない。だが手を貸してくれないか？お前しかいないのだ」

　そう言われると断れない。ヴェンはお願いされると断ることのできない性格だった。

「わかった。で、何をすれば良い？」

「それは、詳しい話をしてから教えよう。」

「詳しい話？」

「ああ、この世界のしくみについてだ」

（この世界のしくみ・・・？）

「この世界は・・・・・・」

　～～～

「う、嘘だろ・・・」

「お前でなければならない理由がわかっただろう」

「う、うん。でもどうすればいいんだ・・・？街に戻ったりしたらすぐ殺される・・・」

　ヴェンは頭を抱えた。もし、この世界を救うために動いたら、すぐに捕まって殺されるだろう。かと言って隠れ続けたらこの世界のしくみが知られることはないだろう。

「・・・ウラカヌス、どうすれば良い？」

「うむ、まずは闇の魔力の気配を消せるように、その次はスキルを使いこなせるように修行だ。また、他の属性の魔術も使えた方がいいな」

「そんなことが可能なのか？」

「可能だ」

「どれくらいかかる？」

「一年くらいだろう」

（よし、やるぞ）

　ヴェンは覚悟を決めた。殺される身だった自分が生き残ったのだ。やれることはやらないと損だ。

「では、修行に入るぞ」

　ウラカヌスがそういうと、あたりがいきなり眩しく光った。ヴェンが目を開けるとそこには見たことのない美形の男がいた。

「・・・お前だれ？まさか、ウラカヌスとか言わないよな」

「そのまさかだぞ。我はウラカヌス、これは人間態だ。」

「こんなイケメンなのかよ」

　ちょっと嫉妬するヴェンだった。

「そんなことはどうでもいい。修行を始めるぞ」

「そんなこと！？とても重要・・・」

「修行！！！」

「・・・はい」

　こうしてウラカヌスによるヴェンの修行が始まったのだった。

　～1年後～

「じゃあ、行ってくる、ウラカヌス」

「ああ、気をつけるんだぞ」

　ヴェンは一年の修行を終え、人間界に戻ることになった。

（あの歳であんなにも強くなるなんて思いもしなかった。・・・頼んだぞ、ヴェン。お前が最後の希望だ・・・）