幻想の挽歌(ファンタジーのバラード)

幻影の狙撃手

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第42話 未来の自由を確保するための行動を開始する

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テロ事件の翌日。

いつも部屋に来てくれるクラウディアさんの姿はなかった。

代わりに別のメイドさんが部屋に来てくれたが、クラウディアさんがいつ復帰できるかは分からないとのこと。

また追ってコンスタンチンさんが連絡してくれるとメイドさんは言っていたが、具体的にいつかは分からないと言っていた。

朝食を一人で取る。

ベルリオーネさんは用事のため昨日からしばらくの間いないそうだ。

スコットさんもなんか用事があるとかでギルドでも見かけなかった。

城の中の華麗な部屋で俺は一人カイザーゼンメルをナイフで上下に切り、中にハムとトマトのスライスとピクルスを皿の上で挟みながらふと考えた。

・・・何か嫌な予感がする。

幼稚園の時、嫌な予感がした後に親族に亡くなる人が出たり、友人が交通事故で重傷を負ったことがあった。

俺も嫌な予感がした後で自動車に轢かれそうになったことさえある。

こういう時は何か人が死ぬか、災いがあるときと昔から思っている。

クラウディアさんの華麗な舞には驚いた。

この世界には俺が想像できぬような実力者が多い。

それに対抗するすべを一つでも多く持っておかなければ。

特に必要なのは正攻法の実力は当然として、奇手をできるだけ多くそろえることだ。

根性鍛えて実力つける?

そんなことは分かってるわ!

それだけでは足りぬ!!



俺はさっそく近くに補助アイテムの買い出しに行くと城内のメイドさんたちに告げて城下町を出た。

俺は図書館で写本したノートを持って、北部地方攻略の際に偶然発見した森の中の隠し小屋へと向かった。ベルリオーネさんその他にも内緒で見つけたそこにはうまいぐあいに程よい広さの地下室があった。

相当古い小屋は恐らく大昔にうち捨てられた何らかの軍拠点の跡地の一部と考えられるほど意外と強固な造りで、何より地下室には探索の結果、敵が襲撃してきたときの逃走経路として使える複数の脱出口があった。


誰も周囲に監視している者がいないことを確認してから地下室に入り、雷撃魔法を応用して明かりをともす。

地下室入り口は目立たない造りの上、内側から鍵をかけられるので、しっかりとかけておく。

現実世界の電灯と同じ明るさで照らされたそこは松明と違い酸欠になる心配がないので地下室入り口を締めきっても長時間作業や作戦を練るのに使える。

しかも、複数の脱出口から吹いてくる外気のおかげで地下室ながら空気はよい。

最も冬場はちと困るが・・・・。


俺は腰に付けたマブクロを取り外し、さらにその中からベルリオーネさんにも知らせていない別のマブクロを取り出した。

その中身をおそらく作戦会議で使うような大きな机の上にぶちまける。

これまでの制圧作戦で始末したモンスターどもから押収したアイテムと金はかなりの額に達していた。

通常、冒険の際に魔王軍の城や拠点など、あるいは倒したモンスターから鹵獲できる武器防具アイテム、さらにお金は各自が戦闘中などに個別に回収した分も戦闘の後、パーティ全体の管理用マブクロに入れてギルドに提出し、何パーセントかの組合互助費などの税金を引かれて各パーティの物になる。

それからどう分配するかは各パーティのリーダー格が決定するが、大抵は均等に分けられる。

だが、俺は黒魔女との一件と、そんなのが女王の部下の一人であったという事実を知ってから未来の選択肢を増やすための具体的行動をしていた。

ベルリオーネさんやスコットさんのことを信用していないわけではない。

だが、前の世界でもそうだったが、信用していたら騙されのが世の常だ。

前の世界で日本的美風がもてはやされていて、それを信じて学校とかでえらい目に遭った。

日本的な美風とされるものが通用するのは正月とかの御祝いの席でおばあちゃんとかと会うときだけだった。

誰が信用できるか分からないとき、確実に信用できるのは自分と金、そして力と武器だけ。

俺は魔王の各拠点を掃討している時、ベルリオーネさんに内緒で鹵獲した物の一部を腰に付けたいつものマブクロの中に隠しておいたさらに別の隠しマブクロへと使えそうなアイテム、武器、防具と金をひそかにプールしておいた。

ベルリオーネさんにもスコットさんにも他のパーティのメンバーにもギルドの係官にもばれていない。

恐らく相当古い時代に使われていたであろう作戦会議などで使うような大きな机の上には金貨の入った一つ約5kgのグレーの袋20個、金のインゴット一つ500gが50本、強力な攻撃魔法または特殊な補助魔法が封じられて魔力なしでも事実上無限に魔法を生じさせられる武器防具アイテム計25点、さらには黒色火薬が原料の爆薬200キロ、煙幕筒32本、閃光弾58個、毒消し薬78個、傷や体力を回復する聖水68本、その他いろいろ。

巨大な机の上に広げられた自分の成果を見て、須藤はニヤリと笑みを浮かべた。

須藤はふと考えた。

“強大な敵に対抗するためには正攻法だけではなく一味違う発想の転換が必要だ”

俺は図書館で魔導書の気になった箇所を書き写したノートを広げた。











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