【短編if】聖女はそっちなんだから俺に構うな!

ネオン

文字の大きさ
8 / 9

【省吾が聖人で田辺さんがおまけだったらIF】⑦

しおりを挟む
◇◇◇

 つい最近シンディさんたちは婚姻届けを提出して夫婦になった。嬉しいことにこの街に家を構えて定住することに決めたらしく、うちは今日新居にお呼ばれだ。

「結婚おめでとうございます! 今日は呼んでくれてありがとう。これ手土産だよ」

 街で流行っている焼き菓子をシンディさんに渡す。

「手土産なんて良かったのに。マリカの顔を見れるだけで嬉しいんだから」

 シンディさんはにっこりと笑うと、リビングに通してくれた。部屋に入ると、ヨハンさんがキッチンで料理をしながら挨拶してくれる。

「ヨハンさんこんにちは! シンディさんにはさっき言ったけど、改めてご結婚おめでとうございます。いつまでもラブラブな夫婦でいてくださいね」

「ありがとう。俺はシンディのこと心から愛してるから勿論だ」

「あら、私だってヨハンのこと世界で一番愛してるし、この愛は永遠だわ」

 うちがいるのも忘れてイチャイチャしかねないから、一応声を掛けとこうかな。うちとしては思う存分イチャついてもらって構わないんだけど、恥ずかしくなっちゃうかもだしね。

「これだけラブラブなら余計なお世話だったねww」

「マリカ、ヨハンが料理してくれている間にお茶にしましょう」

 ソファーに座るように勧めてくれたから遠慮なく座る。実はサプライズで二人の結婚祝いにプレゼントを用意していたから、シンディがお茶の準備をしてくれている間にそれを取り出す。

 王子様が魔王討伐の旅に出る前に、仲間全員に亜空間収納機能の付いた鞄を作ってくれていたらしくて、なんとうちにもくれたの! 北川の同郷の好でかもだけど、素敵機能なポシェットをくれたから、手ぶらに見えて色々持ち運んでいるのだ。北川と王子様も何だかんだいい雰囲気っぽいし、このまま上手くいくといいなあ。キラキラ王子様と女顔の綺麗系イケメンの組み合わせは、妄想が捗ります。妄想だけでごはんが何杯でもいけちゃうね。

 お茶とさっき渡した焼き菓子を持ってシンディさんとヨハンさんがソファーに座る。料理も一段落ついたみたいで、ヨハンさんも一緒にお茶をすることになった。渡すなら二人が揃っている今だな。

「うちから二人に、結婚祝いのプレゼントです」

 そう言って渡したのは、うちの手作りリース。この世界にはリースはないみたいだけど、お母さんやお姉ちゃんと何回か作ったことがあるから、結構得意なんだよね。うちが住んでるアパート(でいいや)の中庭にある木にたくさんのツタが絡まってたから、それを使わせてもらったの。ツタが柔らかいうちにリースの形にして、硬くなるまで乾燥させる。それからお花屋さんでドライフラワーに出来そうな花を選んで、部屋の風通しの良いところでドライフラワーを作る。リースの土台とドライフラワーが完全に乾燥したらあとは、布を縫い合わせて作った花とか、リボンとかを飾れば出来上がり! リースの真ん中にはね、熊の人形とエルフの人形が寄り添ってるんだけど、それもうちが作りました! 実はこういう手芸とかクラフト系好きなんだよね。こっちの世界に来て初めて作ったけど楽しかったなあ。大好きな人たちのために作ったからっていうのも大きいと思うけどね。

「すごく可愛い! これって私たちよね!?」

「そうだよ♪ うちの大好きな仲良し夫婦人形です!」

 感激したシンディさんが立ち上がってまた抱き着こうとしてきたけど、お腹も大きくなってきたからヨハンさんが止める。

「これはリースっていう飾りなんだけど、『幸福がいつまでも続くように』っていう意味があって、輪っかになってることで永遠を意味するんだって。うちの実家ではね、季節ごとに飾りを変えたりしてたんだけど、これは一年中飾れるようにデザインしてみたんだ」

 ドヤーって二人の方を見ると、二人とも涙ぐんでて慌てて声を掛ける。

「ごめん。何かダメだったかな? うち、こっちの常識とか疎くって――」

「違うの! とっても嬉しかったの。実は私たち、家族に結婚を反対されてたから、こんなに私たちのことを心から祝福してくれる人がいるんだって思ったら――」

 話を聞くと、種族が違うカップルも最近では珍しくないんだけど、一昔前は同族同士で結婚するもんだっていうのが常識だったから、まだそんな古臭い考え方に縛られている人もいるんだって。それはシンディさんの親族も例外じゃなくって、冒険者をしている中でヨハンさんと出会って恋に落ちて、説得しにいったんだけど大反対されて――。故郷を捨てて駆け落ち同然で出てきたらしい。

「うちはこの街で二人に出会えて嬉しかったし、友達になれて幸せ。大好きな二人には幸せになってもらいたいもん。お祝いくらいいくらでもするよ!」

 そのあとはヨハンさん特製の料理をご馳走になって、カフェに毎日来るしつこい侯爵子息の相談をした。結局、一回食事にでも行ってきちんと断るのが良いんじゃないかってことになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

悪役キャラに転生したので破滅ルートを死ぬ気で回避しようと思っていたのに、何故か勇者に攻略されそうです

菫城 珪
BL
サッカーの練習試合中、雷に打たれて目が覚めたら人気ゲームに出て来る破滅確約悪役ノアの子供時代になっていた…! 苦労して生きてきた勇者に散々嫌がらせをし、魔王軍の手先となって家族を手に掛け、最後は醜い怪物に変えられ退治されるという最悪の未来だけは絶対回避したい。 付き纏う不安と闘い、いずれ魔王と対峙する為に研鑽に励みつつも同級生である勇者アーサーとは距離を置いてをなるべく避ける日々……だった筈なのになんかどんどん距離が近くなってきてない!? そんな感じのいずれ勇者となる少年と悪役になる筈だった少年によるBLです。 のんびり連載していきますのでよろしくお願いします! ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムエブリスタ各サイトに掲載中です。

塩対応だった旦那様の溺愛

詩河とんぼ
BL
 貧乏伯爵家の子息・ノアは家を救うことを条件に、援助をしてくれるレオンハート公爵家の当主・スターチスに嫁ぐこととなる。  塩対応で愛人がいるという噂のスターチスやノアを嫌う義母の前夫人を見て、ほとんどの使用人たちはノアに嫌がらせをしていた。  ある時、スターチスが階段から誰かに押されて落ち、スターチスは記憶を失ってしまう。するとーー  作品を書き直したものを投稿しました。

BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた

BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。 断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。 ーーそれなのに。 婚約者に婚約は破棄され、 気づけば断罪寸前の立場に。 しかも理由もわからないまま、 何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。 ※最終的にハッピーエンド ※愛され悪役令息

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

処理中です...