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第一章 聖女召喚に巻き込まれてしまった
一.田辺さんは聖女らしい
「マジ最悪――。何でうちがあんたと一緒に日誌なんか書かなきゃいけないのよ。あんたが適当に書いて提出してくれれば済む話じゃない」
そう文句を言いながら日誌を書いているのは、このクラスのピラミッドの頂点にいるような美少女の田辺 茉莉花。そして文句を言われている俺は、ピラミッドの底辺にいるような地味な男で、北川 省吾。
「そんなこと言ったって、担任が田辺さんに書くように指名してきたんだから仕方ないよ……」
このクラスの担任は、日直の間で日誌の押し付け合いが起こらないように、毎回ペアのどちらかを指名してくる。指名されたのにもう一人に押し付けると次の日のクラス全員の宿題が増やされるから、従わざるを得ない。一度、指名された奴がペアに日誌を押し付けて、そいつが元々の奴の字を真似て記入して提出したんだけど、速攻バレて翌日の宿題がえげつない量になってクラス中の顰蹙を買ってたから、それ以来押し付ける奴はいなくなったのだ。
文句を言いながら田辺さんは日誌を書いているけど、嫌がってる割にイラストを入れたりして凝ったことをしている。正直言うと俺、今日発売の漫画を早く買いに行きたいからさっさと終わらして欲しいんだよね。まあ、そんなこと口が裂けても言えないんだけど――。
あとは今日の日記的な一言を書けば終わりって時に、急に田辺さんの周りが光り出した。
「ちょっと! これ何!? 動けない! 北川助けて!」
そう言われても俺にも分からないのだから答えようがないし、助けてって言われてもどうしたら良いのか分からない――。そんなことを言っている間に、田辺さんを包み込んでいる光が大きくなって、彼女の頭上に魔法陣のような物が現れた! もしかして――これって、異世界召喚ってやつ!? すげー本当にあるんだ! 目の前で行われている光景に興奮が隠せない。すると、魔法陣から一本の腕が出てきて田辺さんの腕を掴んで引っ張り始めた。
まずい――これはおそらく田辺さんを魔法陣の中に引きずり込もうとしている。ここで下手に手を出せば俺まで巻き添えを喰らってしまうのが異世界召喚の鉄板だろう。
田辺さんには悪いけど、俺は傍観させてもらうよ。
「何この手!? マジ気持ち悪い!! 北川~お願い助けて――」
田辺さんが泣きながら俺の名前を呼んで手を伸ばしてきた――。さすがにここで拒むのは良心が痛むし、人間としてどうかと思うよな――。俺は諦めて田辺さんの腕を掴んで引っ張った。
魔法陣から出ている腕もすごい力で引っ張っていて、俺と引っ張り合って田辺さんは綱引きの綱状態――。
「痛いし、もうヤダ~!」
田辺さんは腕を引かれる痛みでさらに激しく泣き出した。思わず俺はその泣き声に怯んでしまい、田辺さんを引っ張る力が一瞬緩んでしまった――。魔法陣の先の相手がその隙を突かない訳もなく――俺は田辺さんごと魔法陣に引き込まれてしまった。
魔法陣に引き込まれた俺たちは、やっぱり異世界召喚物のファンタジー漫画にありがちな神殿みたいなところに着いた。
「おお! 聖女様を無事に召喚することが出来ましたぞ!」
そう言って俺たちの前に現れたのは、腰まではありそうな程長く伸ばした白髪の爺さんで、白くて綺麗な服を着ていることから、それなりに偉い人なんだってことは分かる。
それから――。
俺が腕を掴んでるのは田辺さんだけど――俺の腕を掴んでいるこいつは誰だ!? こいつは田辺さんの腕を掴んでたはずなのに、いつの間にか俺の腕を掴んでいる。キラキラした金髪に碧の瞳で見るからに王子って感じの男――。俺の腕を離すまいとずっと掴んで離さない。
白髪の爺さんが自己紹介を始めた。この『何とか神殿』の神殿長で偉いんだって――。何か神殿の名前を言ってたけど、発音が難しくて聞き取れなかった。神殿長は田辺さんを『聖女様』って言ってたから、彼女がそうなのだろう。
「はあっ!? 聖女って何!? 北川――うちらどうなるの?」
いつも強気な田辺さんが、地味な俺に縋り付いて震えている――。ちょっと可愛いかもって思ってみたり――。取り合えず落ち着いて神殿長の話を聞くことにした。まずはこういう時は状況を把握するのが大切なんだよな。
応接室みたいなところに案内されたんだけど――俺の腕はなぜだかずっと王子っぽい奴に掴まれたままだ。当然の様にソファでは隣に座ってきた。田辺さんは少しだけ落ち着いたみたいで、俺の腕からは手を離していて王子っぽい奴とは反対側の隣に座り、俺は田辺さんと王子っぽい奴に挟まれる形になった。
話の内容は本当に漫画の世界みたいで感動すら覚えた。要約するとここは剣と魔法の世界で、魔王復活により世界が瘴気で溢れそうになっているから、異世界より召喚されし聖女様が祈りを捧げて瘴気を祓って、勇者と一緒に魔王討伐の旅に出る――。こんな感じのありきたりな話。
「うちが魔王とかいう奴の討伐に行くの? あり得ないんだけど! だってうちはただの女子高生だよ!?」
神殿長に食って掛かる田辺さんの気持ちは良く分かるぞ。そうだよな、いきなり知らないところに連れて行かれた挙句そんなこと言われたら誰だって驚くし、一回は拒否するだろう。しかもやはりというか――召喚は一方的なもので、元の世界に帰ることが出来ないからこの世界で生きるしかなくて、その自分も生きて行く世界が危機に陥っているのだから、勇者と共に魔王を打ち滅ぼして住み良い世界にしてくださいって。本当に他力本願。
でもどうして俺はこう冷静なのかと言えば――。それは俺が聖女じゃないから! この一点に尽きる。それにもう元の世界に戻れないって言うなら、諦めてこの世界で生きて行くために住むところや仕事を探さないといけないなって、田辺さんが聖女の説明をされている傍らずっと考えていた。それにしても、いい加減王子っぽい奴よ、俺の腕を離してはくれまいか? 強く握られ過ぎて少し痺れてきたんだが――。
そう文句を言いながら日誌を書いているのは、このクラスのピラミッドの頂点にいるような美少女の田辺 茉莉花。そして文句を言われている俺は、ピラミッドの底辺にいるような地味な男で、北川 省吾。
「そんなこと言ったって、担任が田辺さんに書くように指名してきたんだから仕方ないよ……」
このクラスの担任は、日直の間で日誌の押し付け合いが起こらないように、毎回ペアのどちらかを指名してくる。指名されたのにもう一人に押し付けると次の日のクラス全員の宿題が増やされるから、従わざるを得ない。一度、指名された奴がペアに日誌を押し付けて、そいつが元々の奴の字を真似て記入して提出したんだけど、速攻バレて翌日の宿題がえげつない量になってクラス中の顰蹙を買ってたから、それ以来押し付ける奴はいなくなったのだ。
文句を言いながら田辺さんは日誌を書いているけど、嫌がってる割にイラストを入れたりして凝ったことをしている。正直言うと俺、今日発売の漫画を早く買いに行きたいからさっさと終わらして欲しいんだよね。まあ、そんなこと口が裂けても言えないんだけど――。
あとは今日の日記的な一言を書けば終わりって時に、急に田辺さんの周りが光り出した。
「ちょっと! これ何!? 動けない! 北川助けて!」
そう言われても俺にも分からないのだから答えようがないし、助けてって言われてもどうしたら良いのか分からない――。そんなことを言っている間に、田辺さんを包み込んでいる光が大きくなって、彼女の頭上に魔法陣のような物が現れた! もしかして――これって、異世界召喚ってやつ!? すげー本当にあるんだ! 目の前で行われている光景に興奮が隠せない。すると、魔法陣から一本の腕が出てきて田辺さんの腕を掴んで引っ張り始めた。
まずい――これはおそらく田辺さんを魔法陣の中に引きずり込もうとしている。ここで下手に手を出せば俺まで巻き添えを喰らってしまうのが異世界召喚の鉄板だろう。
田辺さんには悪いけど、俺は傍観させてもらうよ。
「何この手!? マジ気持ち悪い!! 北川~お願い助けて――」
田辺さんが泣きながら俺の名前を呼んで手を伸ばしてきた――。さすがにここで拒むのは良心が痛むし、人間としてどうかと思うよな――。俺は諦めて田辺さんの腕を掴んで引っ張った。
魔法陣から出ている腕もすごい力で引っ張っていて、俺と引っ張り合って田辺さんは綱引きの綱状態――。
「痛いし、もうヤダ~!」
田辺さんは腕を引かれる痛みでさらに激しく泣き出した。思わず俺はその泣き声に怯んでしまい、田辺さんを引っ張る力が一瞬緩んでしまった――。魔法陣の先の相手がその隙を突かない訳もなく――俺は田辺さんごと魔法陣に引き込まれてしまった。
魔法陣に引き込まれた俺たちは、やっぱり異世界召喚物のファンタジー漫画にありがちな神殿みたいなところに着いた。
「おお! 聖女様を無事に召喚することが出来ましたぞ!」
そう言って俺たちの前に現れたのは、腰まではありそうな程長く伸ばした白髪の爺さんで、白くて綺麗な服を着ていることから、それなりに偉い人なんだってことは分かる。
それから――。
俺が腕を掴んでるのは田辺さんだけど――俺の腕を掴んでいるこいつは誰だ!? こいつは田辺さんの腕を掴んでたはずなのに、いつの間にか俺の腕を掴んでいる。キラキラした金髪に碧の瞳で見るからに王子って感じの男――。俺の腕を離すまいとずっと掴んで離さない。
白髪の爺さんが自己紹介を始めた。この『何とか神殿』の神殿長で偉いんだって――。何か神殿の名前を言ってたけど、発音が難しくて聞き取れなかった。神殿長は田辺さんを『聖女様』って言ってたから、彼女がそうなのだろう。
「はあっ!? 聖女って何!? 北川――うちらどうなるの?」
いつも強気な田辺さんが、地味な俺に縋り付いて震えている――。ちょっと可愛いかもって思ってみたり――。取り合えず落ち着いて神殿長の話を聞くことにした。まずはこういう時は状況を把握するのが大切なんだよな。
応接室みたいなところに案内されたんだけど――俺の腕はなぜだかずっと王子っぽい奴に掴まれたままだ。当然の様にソファでは隣に座ってきた。田辺さんは少しだけ落ち着いたみたいで、俺の腕からは手を離していて王子っぽい奴とは反対側の隣に座り、俺は田辺さんと王子っぽい奴に挟まれる形になった。
話の内容は本当に漫画の世界みたいで感動すら覚えた。要約するとここは剣と魔法の世界で、魔王復活により世界が瘴気で溢れそうになっているから、異世界より召喚されし聖女様が祈りを捧げて瘴気を祓って、勇者と一緒に魔王討伐の旅に出る――。こんな感じのありきたりな話。
「うちが魔王とかいう奴の討伐に行くの? あり得ないんだけど! だってうちはただの女子高生だよ!?」
神殿長に食って掛かる田辺さんの気持ちは良く分かるぞ。そうだよな、いきなり知らないところに連れて行かれた挙句そんなこと言われたら誰だって驚くし、一回は拒否するだろう。しかもやはりというか――召喚は一方的なもので、元の世界に帰ることが出来ないからこの世界で生きるしかなくて、その自分も生きて行く世界が危機に陥っているのだから、勇者と共に魔王を打ち滅ぼして住み良い世界にしてくださいって。本当に他力本願。
でもどうして俺はこう冷静なのかと言えば――。それは俺が聖女じゃないから! この一点に尽きる。それにもう元の世界に戻れないって言うなら、諦めてこの世界で生きて行くために住むところや仕事を探さないといけないなって、田辺さんが聖女の説明をされている傍らずっと考えていた。それにしても、いい加減王子っぽい奴よ、俺の腕を離してはくれまいか? 強く握られ過ぎて少し痺れてきたんだが――。
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