僕と天使の終幕のはじまり、はじまり

緋島礼桜

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第一幕~青年は再会を果たす4









 彼の記憶の中にあるルイスは、こんな性格ではなかったのだ。
 子供ながらにエスタや周りの同年代よりも、とても落ち着いていて、物事の先を見据えているような。
 よく言えば冷静沈着、悪く言えば背伸びした性格の人物だと、記憶している。
 しかし、彼と別れた後に送られた手紙には、性格を改変したいという文面もあった。
 最後に彼から送られてきた5年前の手紙では、今の彼を彷彿とさせる文章も確かにあった。
 が、過去の想像とはあまりにも打って変わってしまったルイスの性格に、エスタは飲み込めることも、受け入れることもまだ出来そうになかった。




「人ってホント、変わるもんだな…」

 首を傾げながらそう呟き、エスタはルイスの後を追った。





 この工場は住み込みで働く者がほとんどで、食事や彼らの生活をまかなっているのがアークレおばさんだった。
 工場長である夫をなくしてからは余計に忙しそうにしているが、それでも彼女と工場が止まることはない。
 そして今食卓に並んでいる食事もまた、一切の手抜きが無い豪勢な料理ばかりだった。
 本来は工場員たちと共に食事をしているエスタだったが、今日は客人であるルイスもいるため、一足先にご馳走になることとなった。
 テーブルの上には魚介に肉料理、サラダまで所狭しと並んでいる。
 と、アークレおばさんは両手を合わせて「今ピザを焼いてくるわ。直ぐにできるから待っててね」と、ご機嫌な様子でキッチンへと姿を消した。
 よほどルイスのキスが嬉しかったのだろう。
 残されたエスタはルイスを小突きながら笑みを零した。

「おばさんのピザは最高だから、覚悟した方が良いよ」
「そうみたいだな」




 そうして始まった二人での食事の最中。
 おもむろにエスタは隣に座るルイスへと質問した。

「ところでさ…どうして僕のところへきたの?」

 ルイスの手が止まる。
 が、また直ぐに動かし、口にサラダを頬張りながら彼は話した。

「仕事だよ。ついでにお前に会いたくてきた」
「会いたくてって…探したの? 住所」

 するとルイスは得意げに「まあな」と言って笑う。
 エスタは静かに魚介スープを飲み干した。
 と、ルイスの手が再び止まる。

「…俺たちの『約束』について、どうしてるか気になってな」

 約束。
 エスタの記憶の中にある『約束』。
それは、遠い日に二人で交わした小さな夢のことだ。

「僕については見ての通りだよ」
「…そうみたいだな」
「それよりルイスの方こそ、何で軍人に……?」
「そ、それは―――」


 と、そのときだ。
 まるで嵐でも来たのかというくらいの騒音を出しながらやって来た男たち。
 彼らは待てないとばかりに椅子に座ることも忘れて、テーブルの食事にがっつき始める。

「はらへったー」
「おお、俺の大好きな魚介出汁のスープじゃん!」
「あ、それ俺が狙ってたベーコンだぞ!」

 その場が一気に汗臭い空気と食器の音、数多に伸びる手に包まれた。
 すっかり遅れをとってしまったエスタとルイスの二人も、慌てて食事に手を伸ばしていく。
 それから暫くして、香ばしいチーズの香りと共にアークレおばさん特製ピザがお目見えとなった。







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