【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
116 / 683
第六幕 転生歌姫の王都デビュー

第六幕 プロローグ 『異世界の車窓から』

しおりを挟む
 私達を乗せた列車はイスパルナを出発して快調に走っている。
 線路は黄金街道から少し離れたところに敷設されていて、ときおり道行く馬車や旅人が遠くに見える。
 きっと、こちらを見てさぞかし驚いていることだろう。


「ちゃらっちゃっちゃっちゃちゃ~らら~…」

 レティが口ずさむのは前世の某旅番組の曲…列車の旅にはピッタリだ。
 結構スピードは出ているが、思ったより揺れが少ないのでゆったりと優雅な曲調が合っていると思う。
 …やや調子ハズレなのはご愛嬌だ。




「凄いものだな、鉄道というのは。あっという間に景色が変わっていく」

「本当ですわ。これは旅や物流の概念が変わると思います」

 ルシェーラの言う通り、歴史的な大事業になるだろうね。


 ミーティアは窓にかじり付いて外を見るのに夢中だ。
 いや、ミーティアだけではなく初めて乗車する殆どの人が夢中になってる。



「さあ!ちょっと遅くなったけど、お昼ごはんにしよう!列車旅の醍醐味の一つ『駅弁』だよ!」

「「「駅弁?」」」

「そう。カティアのアイディアでね。列車の中で車窓を眺めながら食事が楽しめれば…って事で、試作品をウチの料理長に作ってもらったんだ。はい、どうぞ」

 私のアイディアってことにするんだ…
 まあ、私の言葉がきっかけではあるけど。

 レティから貰った駅弁は、色々なおかずが少しずつ入った…前世で見た幕の内弁当そのもの。

「あら?これは、東方風の料理ですのね」

「見た目も華やかで美味しそうだな」

「おいしそ~」

 あ、ミーティアが食べ物につられて窓から離れたよ。
 さすが食いしん坊さんだね。


 流れる車窓を眺めながら美味しい食事を楽しむ。
 何とも贅沢なことだと思う。

 この世界の旅行と言えば移動は専ら徒歩か馬車だ。
 私はそれも楽しいと思うが、やはり純粋な移動という側面が強い。
 こんなふうに移動そのものが娯楽になり得ると言うのはこの世界の人たちにとっては新鮮なことではないだろうか。






 駅弁も食べ終わって、再び車窓の景色を楽しんでいると、リディーさんのアナウンスが入った。

『皆さま、当列車は間もなく終点のトゥージスに到着いたします』

 どうやらもう終点になるようだ。
 イスパルナを出てから大体一時間くらいは経っただろうか?

「…もう到着するのか。聞いてはいたが理解が追いつかないな」

「朝イスパルナを出たら夕方に到着するのが普通ですからね…」



 私達が下車の準備をしていると、リュシアンさんとケイトリンさんがやって来てレティに話しかける。

「レティ…これを返しておきますね。助かりました」

「ホント、凄い魔道具ですよね。こんなものも作るんだから…流石は神童と言われるレティシア様ですよ」

「もう必要無いの?兄さん?」

「ええ。今回は任務のために借りましたが、まだ試作品なんでしょう?完成したら正式に騎士団の備品として手配しますよ」

 リュシアンさんがレティに渡したそれは…

「それはまさか…『スマホ』?」

「ん~、そこまで高機能じゃないけど…通信の魔道具だよ」

「へえ~…そんなのも作ってるんだ…」

「こういうのも実際に運行するとなると必要になるからね。他にも細々した調整事はまだまだたくさんあるよ。法整備も必要だし」

 まあ確かに線路敷いて列車走らせるだけじゃ済まないよね。
 本当に、果てしない道のりなんだろうなぁ…










 そして列車は終点のトゥージスの町に到着した。
 現在敷設されている線路はここまでだが、営業時にはここから更に先…王都までつながる予定だ。

「式典にはカティアも呼ぶからね。出席ヨロシク。あ、歌ってもらうのもいいかも」

「…まあ、いいけど」

 そうか…王族ってそう言うこともやらないといけないのか…
 人前に立つのは慣れてるからいいけど。


 そんな話をしながらホームに降り立った。
 トゥージス駅も町外れに作られていて、町の規模もそれほど大きくないので駅の周りは閑散としている。
 
「じゃあ、カティア、ルシェーラちゃん、ここで一旦お別れだね。まあ、私もすぐに王都に行くからまた連絡するね」

「うん、またねレティ。王都で会えるのを楽しみにしてるよ」

「お待ちしておりますわ」

 ちょっと名残惜しいけど、またすぐに会えるからね。
 再会を楽しみにしておこう。

「あ、そうだ、これを渡しておくよ」

 と言ってレティは、先程のスマホモドキ…もとい通信の魔道具を私とルシェーラに渡してくれた。

「え?いいの?試作してるところなんでしょう?」

「ああ、だいじょ~ぶだよ。他にもたくさんあるから」

「そう?じゃあ借りておくね。これで連絡が取れるんだね」

「どこでも、ってわけじゃないけどね。これって地脈に流れる魔力を利用してるから、土地の状態に左右されたりするんだ。だからまだ改良の余地があるんだよね」

「ああなるほど。だから試作品なのか」

「そゆこと」

「…それでも凄いですわよ。ぴーちゃんの仕事が無くなってしまうかも…」

 …危うし!ぴーちゃん!

「私アイディアは出せるけど、魔道具の専門家ってわけじゃないからね…どこかに腕の良い魔道具職人がいると良いんだけど」

 と、手を頬に当てて首を傾げながら、ため息と共にこぼす。

 魔道具職人かぁ…
 特に知り合いには………いた。

「知り合いに腕の良い魔道具職人がいるけど…」

「ホント!?」

 ばっ!と食いついてきた。

「う、うん。これ、ミーティアの服を作ってくれた人なんだけど…神代遺物アーティファクトを解析して応用してたし、凄い人なんじゃないかと思うんだけど」

「おお!それは期待できそうだね!」

 ちなみに、ミーティアはおねむで今はカイトが背負ってます。

「プルシアさんって言って、ブレゼンタムの魔道具店の店主なんだけど…王都の大きい商会の傘下って言っていたよ。ええと…確か紹介状が…あった!」

 ユリシアさんたちから貰った紹介状を鞄から取り出してレティに見せる。

「どれどれ…おぉ、アズール商会!流石はお姫様、コネも凄いわね~」

「たまたまだよ。でも、そんなに凄いところなの?」

「そりゃあね、王都一…いや、王国一と言っても良いくらいの大商会だよ」

「…そんなに?確か、父の商会って言ってたけど」

「ふえ~、娘さんなんだ~。でもいい話を聞いたわ。早速オファーしてみよっと」

 前世の知識チートのレティと、マッド魔道具職人のプルシアさん。
 二人が出会ったら一体どんな化学反応が起きるのやら…




 さて、貨車から荷物も下ろしたみたいだし、これで本当にお別れだね。

「じゃあねレティ。あなたに会えてよかったよ。これからもよろしくね」

「うん。私こそカティアに会えて嬉しかった。またね」

 名残を惜しむように私達はハグする。

「ルシェーラちゃんもまたね。兄さんのことよろしく」

「はい、また学園でお会いしましょう」

 レティとルシェーラも別れの挨拶をしてハグする。


 そして、列車を降りた一行は今日の宿泊先を確保するべくトゥージスの町に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...