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第九幕 転生歌姫の学園生活
第九幕 31 『魔素結晶』
しおりを挟む「そう言えば…『異界の魂』の出没する場所は魔素が比較的濃い場所が多いって聞いたんですけど、地脈って確か…」
『地脈とは魔素の流れる通り道。この星を巡る血の様なものだ。本来であれば正常な流れのそれは【陽】の気を帯びる。だが、何らかの異常によって流れが乱れると…滞った魔素が変質し【陰】の気を帯びる事がある。【界】の境が曖昧になるのに加えて、この陰の気を媒介して異界への扉が開かれるようだな』
なるほど…そう言う理由なのか。
今の説明の通りなら、魔素の濃い場所での出没事例が多いと言う話も頷ける。
『だが…先にも言った通り、その様な状況が発生するのは遥か古代より一定周期で起きていた事だ。ある時を境に、何か他の要因が加わったものと考えられる』
「…現状、それがどう言うものかは想像もつきませんが……少なくとも、出現のメカニズムがある程度分かっているのであれば、対策はできるかもしれまけんね。その【陰】の気を帯びた魔素と言うのは、どうにかして検知できるものなのでしょうか?」
ある程度出現地域が予測可能なら、戦力配置など対策も立てやすいだろう。
『そうだな…【陰】の気を帯びると言うのは、負の想念に染まるという事だ。生きとし生ける者の負の感情。恐れ、妬み、憎しみ、悲しみ…そういったものが淀み凝った魔素と結びつく。そのような場にはこの世ならざる者も寄り付きやすいであろうな』
「この世ならざる者…不死者ってことですか?」
『そうだ。まあ、確実なものではなく、そう言う傾向があるというだけだが』
「いえ、何も分からないよりは良いですよ」
現状、この件については分からないことの方が多いんだ。
少しでも情報を積み重ねて行く必要があるだろう。
「では、私達はそろそろ行きます。いろんな話を聞かせてくださいまして、ありがとうございました。…次は襲わないで下さいよ?」
また話を聞かせてもらうこともあるかもしれないからね。
その時にまた襲われたんじゃたまったものではない。
『うむ、また来るが良い。出来れば昔のようにもっと人間たちが来てくれれば退屈しないのだがな。やろうと思えば思念体を飛ばすことも出来るが…』
「ああ…昔はここまでお参りに来てたんですね。もうすっかり入り口も草木で覆われて…忘れ去られて久しいみたいですけど」
『守護者の住まう場所は何れも人里から離れているからな。それも仕方のないことよ』
「ねえ、カティア…おじいちゃん寂しいの可愛そうだよ」
「…お、おじいちゃん?ま、まぁ、確かにずっと昔には信仰があったみたいだし、世界を護ってくれてるのだから、私達人間も感謝しないとだね。父様とか神殿の人達に相談してみるよ」
12神とも協力関係にあったと言う話だし、神殿関係として何とかしてもらうのが良いかも。
『ふむ。もし人間たちがここに来てくれるのなら…アレを持ってきてくれるかの?』
「アレ?」
『酒だ。人の食べ物は我の口には合わぬのだが、アレは良いものだ。久しく飲んでおらなんだが…こうしてお前たちと話していたら、急に恋しくなった』
「は、はぁ…分かりました。それも伝えておきますよ」
メリエルちゃんの言う通り、ただの酒飲み爺さんに思えてきたよ…
『ありがたい。…そうだ、少々待っておれ』
ウパルパ様はそう言うと、地底湖に潜っていった。
そして、然程かからずに再び上がってくると、手(?)にしたものを差し出してくる。
『酒の礼と言うわけではないが、これを持っていくと良い』
それは、拳大の大きさの宝石のようなもの。
[光明]の光に照らされたそれは美しい輝きを放っている。
深みのある透き通った青は、一見して碧玉のように見えるが…
「ふわぁ~…キレイだね~」
「何やらもの凄い魔力を感じるのですが…」
ケイトリンの言うとおり、その宝石には凄まじい魔力が封じられているように感じる。
ただの宝石ではないことは明らかだ。
「これは…?」
『お前たち人間が魔素結晶と呼ぶものだな』
「はぁっ!?マジか!?こんな馬鹿デカイのが!?」
それまで大人しく話を聞いていたフリードが驚きの声を上げるが、それも無理はない。
高濃度の魔素に長年晒された物資が結晶化したものなのだが…普通は大きくてもせいぜいがビー玉くらいだ。
それですら王都に邸が建つくらいの価値がある。
私も呆然となって、受け取ることも出来ずにそれをみつめる。
「こ、こんな貴重なものは…」
流石に酒の礼でそんなものは受け取れない、と返事をしようとしたのだけど。
『高濃度、高純度の【陽】の気を帯びたそれは、異界の者共には有効であるはず。そなたがそやつらと戦っておるのならば、大きな助けになるだろう』
「そんな力が……分かりました、有り難く頂くことにします。だけど個人で貰うのはやはり気が引けるので…イスパル王国が受領するということで。皆もそれで良いかな?」
「もちろんっすよ。そんなの個人で持つもんじゃ無いですって…」
「…同感だ」
「国宝…どころじゃないですね」
「でも、ちょっと触らせてほしいかも!」
と、一応皆の了承を得る。
あ、はいメリエルちゃん、やっぱり女の子としてはキレイな宝石は気になるよね~。
「それではウパルパ様、そろそろ私達は行きますね」
『ああ。久方ぶりに話ができて楽しかったぞ。息災でな』
「おじいちゃん、元気でね~!」
こうして、私達は守護者に別れを告げて地底湖をあとにするのだった。
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