【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
335 / 683
第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 55 『帰還』

しおりを挟む
 夜明けとともに始まった戦いだったが、終結する頃にはすっかり日が高くなっていた。


 帰路につく兵たちは疲弊しているものの、その足取りは往路よりも軽く表情も明るかった。
 少なからず犠牲は出たが、これ程の規模の戦闘としては快勝と言っても差し支えはない。
 犠牲者を思えば手放しに喜ぶことは出来ないが…戦場に散った仲間への手向けとともに、手に掴んだ勝利には祝杯が捧げられることであろう。





「父上」

「……おお、アルフォンス。前線の指揮、ご苦労だったな」

 ちょっと間があったのは、また存在を忘れていたからだろう。
 今回の戦いの功労者の一人なのに不憫過ぎる。
 ちょっと目には涙が滲んで…


「こ、国境付近に残していた部隊より早鳥が来ました」

「!…何か動きがあったか?」

「ええ。国境に展開していたグラナ軍は……撤退を始めたようです」

 !!
 すると、今回は侵攻は諦めた……という事か?


「そうか……やはり魔軍と連携を考えていたという事なのだろうな」

 その可能性は当然ながら最初から考えられてはいた。
 裏で魔族が暗躍しているのは明白だし、ゲームの流れもそういうものだった。

 だが、侵攻は回避された。
 これはつまり、ゲームのイベントが起こらなかった…ということなのか?

 ゲームとの違いは、『奇術師』の襲撃だ。
 ……もしかして、本来のイベントのボスが『奇術師』だったのか?
 そう考えれば辻褄は合いそうだが…

 いや、何でもゲーム基準で考えるのは危険だ。
 この世界はあくまでも現実なのだから。
 類似性はあるものの、全く同じではないのは分かっている。
 今回の魔軍襲来の予想には役立ったが、ゲームの事は参考程度に考えておくのが良いだろう。

 だが、今後の予想がしにくくなったのは事実だ。



「考え事か?」

「…ちょっとね。侵攻が起こらないのは良いことなんだけど…このあとどうなるのかが予想しにくくなったな…って」

「ゲーム…と言うやつか?」

「うん。もともと完全に同じだとは思ってなかったけど。それでも参考にはなると思ってたから…」

「……取りあえずは、地道に情報収集する他は無いだろうな」

「そうだね…」

 結局の所はそれしかないだろう。



















 そしてレーヴェラント軍は王都へと凱旋する。
 先触れで報せが届いていたらしく、真夜中にも関わらず多くの住民が出迎えて兵達を称えてくれる。

「「レーヴェラント万歳!!」」

「「ハンネス様、万歳!!」」

「「星光の歌姫ディーヴァ・アストライア!!ありがとう!!」」

 あう……


 そんな、熱狂的な声援を受けながら私達は王城へと戻る。

 いろいろと不安は残るけど、一先ずはレーヴェンハイムの住民を守ることができて良かったと思うのだった。
















 翌日。
 まだ戦いの疲れは癒えてなかったのだけど、私は会議に出席していた。
 今回の戦いの総括と今後の方針についてだ。

 昨日の報告にあった通り、国境付近に展開されていたグラナ軍は完全に撤退。
 怪しげな動きもなく、侵攻を断念したのは間違いないようだ。
 もちろん何らかの動きがまたあるかも知れないので、当面は警戒態勢は維持するが、一先ず危機は回避されたと言っても良いだろう…とのこと。

 今後についてはレーヴェラント、ウィラーなどのグラナ帝国と国境を接する国々、及びその同盟国との軍事的な連携強化を行う方向で協議を進めることとなった。
 あわせて黒神教…魔族の動きには最大限の警戒を持って情報収集・共有をさらに強化していくことも確認した。


 そして…

「此度の戦についてはイスパル、カカロニア両国の多大な助力により、被害を最小限に抑えることができた。この場を借りてお礼申し上げる。…特に、カティア姫の力がなければ、果たしてどれだけの犠牲が出たものか…グラナの侵攻もあったかも知れん」

「私は自身の力を尽くしただけで…それに、他人事ではありませんでしたから。でも、皆様のお役に立てて良かったです」

「そう言ってくれるのは嬉しい。だが、感謝の言葉だけで済ますわけにはいかん。論功行賞の検討はこれから行うが…本来であれば勲一等に値する」

「私はイスパルの王族で、テオの婚約者ですから…」

 今回私達はレーヴェラントの指揮下で戦ったけど、イスパルを代表しているからね。
 論功行賞というのは配下の将兵に対して行うもので、対等な立場の者に行うものじゃないし、同盟国として助力するのは当然のことではある。
 更に言えば、私はテオの婚約者…レーヴェラント王族の身内でもあり、報奨を出す側の人間とも言える。

「まあ、個人的に義理の娘に感謝の気持ちを表すのは問題あるまい」

「…ありがとうございます」

 そこまで言われて断るのは失礼なので、素直にお礼を言う。





 そうして会議は終了。
 今後、論功行賞や殉職者への補償など、国としてやることはまだ山積みではあるが……先ずは一区切りとなるのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...