【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
363 / 683
第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉

第十一幕 19 『DIVA』

しおりを挟む
 舞台上に役者が勢揃いする。
 カーテンコールに観客の拍手は鳴り止まず、演者たちはそれに笑顔で応えている。

 演劇が終われば、次はいよいよ私達の出番だ。
 ちらっ、と横目でアリシアさんを見ると、緊張がピークに達しているのか表情が硬い。
 だが、一つ深呼吸をしたと思ったら、その雰囲気は一転した。

 あぁ…やっぱり。
 この間もそうだったけど、彼女は天性の歌姫なんだ。
 私と同じで、舞台を前にすれば自然と気持ちが切り替わる。
 そうでなければ私だって半ば無理やりここに連れてきたりはしない。
 …多分。









「次はあなた達ね~。アリシアちゃん、がんばって~」

「お~~ほっほっほっ!!またワタクシに並び立つスタァが誕生するのね!!さぁ、お行きなさい!!見事敵を打ち倒すのです!」

 舞台から戻ってきた姉さんと、ロゼッタおば…お姉さまが激励してくれる。
 いつものテンションで。
 ……と言うか、敵って何さ。
 まだ役に成り切ってるっぽいね…



「お姉ちゃんたち、頑張って!応援してるよ!」

「お姉ちゃんとアリシアさんの歌、凄く楽しみ!」

 リィナとハンナちゃん。
 ハンナちゃんはもうすっかり舞台女優として板についてきたし、リィナも脇役とは言え中々の演技も見せてくれたと思う。
 将来のエーデルワイスを支える後進たちの成長を皆喜んでるだろう。



「おう、お前ら。頑張れよ。アリシア、細けえこたぁ考えずに舞台を楽しんでこい」

「ダードの言う通りだな。自分に出来ることを精一杯するだけだ。結果は自ずと付いてくる」

「頑張るッスよ。アリシアちゃんの歌ならバッチリ客を魅了するッス」

 父さん、ティダ兄、ロウエンさん。
 ベテランからの激励は、とても頼もしい。


「二人とも、頑張ってな。楽しみにしている」

「ママ!お姉ちゃん!がんばって!だいじょうぶなの。お客さんはカボチャプリンだと思えばいいの!」

 テオとミーティアだ。
 ミーティアなりにアリシアさんを気遣ってるんだけど……カボチャプリンとは斬新だね。
 どれだけお菓子が好きなの?


 他の団員も続々とやって来て、温かい励ましの言葉をかけてくれる。
 流石は私の自慢の家族たちだ。


「皆さん…ありがとうございます!頑張ります!!」

 みんなからの激励を受けて、アリシアさんはさっきまでの気弱な様子は鳴りを潜め、やる気に満ち溢れていた。

 すっかり歌姫モードだね。
 私も否が応でも気合が入るというものだ。
 


「幕が上がるよ。さぁ、行こう!」

「はい!」

















 再び舞台の幕が上がった。
 観客たちは演劇に並んでエーデルワイスが誇るもう一つの演目に、期待の眼差しを舞台上に送る。

  

 そして、舞台袖から姿を見せたのは…
 


 観客からどよめきの声が上がる。
 それも、直ぐに静かになるが、まだどこか戸惑いのような空気が感じられた。






 舞台上で観客の注目を浴びるのは、鮮やかな紅いドレスを纏ったアリシアさんだ。
 一言で『紅い』と言っても、微妙に色味や濃淡が異なる生地を幾重にも重ね、所々に銀糸で彩られたそれは、かなりゴージャスな装い。

 衣装係と私がアレコレ悩んで意見を交わしながら辿り着いた、渾身のチョイスだ。
 本人は『地味な私には似合わないですぅ…』なんて言ってたけど、そんな事はない。

 確かに髪や瞳の色は目立たない色合いだけど、顔立ちは凄く整っている。
 普段から美少女だと思っていたけど、舞台に映えるようバッチリ化粧を決めた彼女は、美少女から美しい大人の女性へと変貌していた。
 衣装も凄く似合っている。

 初めてのお披露目だし、控えめな彼女には寧ろ気分を上げてもらうためにも、多少派手目で行こうと考えた結果でもある。





 舞台の中央に立った彼女。
 歌姫モードになってるとは言え、やはり緊張はするのだろう。
 一度天井を見上げ深呼吸をしたように見えた。

 そして…




 透き通った美しい歌声が響き始めると、会場の空気が一変した。
 一瞬で観客たちの心を鷲掴みにしたのが分かった。

 あんなに緊張していたのが、まるで嘘のように堂々とした振る舞いで歌声を紡ぎ出す。

 その様は正に歌の女神ディーヴァ



 このあと私も舞台に立って、彼女と一緒に歌うのだけど……今はただ、お客さんと一緒に彼女の歌声に酔いしれる。







 なぜ私の歌はあなたに届かないの?

  恋の女神は教えてくれた

   あなたはまだ本当の恋をしていないから


 恋せよ乙女

  切なさは雪解けとともに

   いのちが紡ぐ想いが芽吹いて花となり

    春の風に舞って届くだろう

     ………

      …






 恋の女神に捧げる歌が会場中に響き渡り、それを聞いた者は暖かな気持ちで満たされた。



 私も歌いながら舞台袖から姿を見せた。

 そして、二人の歌姫が奏でるハーモニーが観客たちを更に魅了する。











 初めてエーデルワイスの二人の歌姫が舞台に立ったこの日…アリシアさんの鮮烈なデビューは、後に伝説のステージとして語り継がれるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...