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幕間
幕間21 『尾行』
しおりを挟むカティア達がダンジョン攻略から戻った翌日……いや、戻ってきたときには日付は既に変わっていたので当日の日中なのだが、シフィル、ステラ、メリエルの3人が集まってオープンカフェでお喋りに興じていた。
本来であれば、今日はカティアとともにダンジョン攻略に向かう予定のはずだったのだが……
「何か、カティア達……昨日ダンジョン攻略しちゃったらしいわね」
「そうみたいだね~。イレギュラーだったらしいけど」
今朝早く、カティアの依頼を受けた使者が、学園の寮を訪問して伝言と謝罪を伝えたのだ。
使者もそこまで事情を把握していたわけではないので細かい話は聞けなかったが、どうやら昨日のうちにダンジョン最深部に到達してクリアしてしまったらしい……と言うのは分かった。
「いったい何がどうなったら、世界最大規模とも言われている王都ダンジョンを攻略できるのやら……」
「それはそうなんだけど……もう、『カティアだから』としか言えないわね」
「あはは~、確かに!」
「それね」
ステラの結論に二人とも頷いて同意する。
カティアが聞けば微妙な表情になるだろう。
「まぁ、詳しい話は明日本人たちに聞くとして……今日は暇になっちゃったわね」
「いいじゃない、こうしてゆっくり過ごせば」
「それはそうなんだけど、もうすっかりダンジョン探索行くつもりだったからねぇ……」
少々エネルギーを持て余してる様子のシフィルに、ステラは苦笑する。
とは言え、確かにこのまま無為に一日を過ごすのも勿体無いと思っているのは彼女も同じだろう。
「さて、どうしたものか………ん?どうしたのメリエル?」
シフィルは、先程からメリエルが随分と大人しいのが気になったようだ。
「ん~……ほら、あそこに居る人……あれ、ガエルくんに似てない?」
そう言うメリエルの視線を辿れば、街行く人の流れに埋もれて見えにくいが……それでも2メートル近い巨体と、年齢に見合わぬ落ち着いた独特な雰囲気で、確かにガエルであることが遠目でも分かった。
「ホントだ。……こんな繁華街にアイツが来るなんて意外ね」
「ね~。休日なんか一日中訓練場で鍛錬してそうだもんね」
「……それは偏見だと思うけど、確かに意外な感じはするわね」
あくまでもイメージであるので、ガエルが繁華街を歩いていようと別に不思議なことではないのだが……この辺りはお洒落な雑貨やカフェが立ち並び、いかにも若い女性が好みそうな雰囲気なので、彼が一人で歩いているのは違和感があるのも確かだ。
3人は顔を見合わせる。
「……ムフフ。もしかして、デートとか?」
「ここからだとお連れさんが居るかどうかまでは分からなかったわ」
「……よし!尾行しよう!」
「だね!」
メリエルの提案に、シフィルは即座に乗っかる。
「ちょっとそれは……でも、気になる……」
真面目なステラは難色を示すが、それでも気にはなる様子。
やはり彼女も年頃の娘なので、色恋沙汰には興味が尽きないのである。
「ほら!見失っちゃうよ!行こう!」
「あ!?ちょっと!!……もう、仕方ないわね……」
そうして3人は慌ててカフェを後にするのであった。
「……どこまで行くんだろ?」
「こんな裏路地に入ってくなんて……」
「ねぇ、そろそろ止めない?人通りも少なくなってきたから、そのうち気付かれるわよ?」
ガエルを尾行する3人だったが、徐々に人通りの無い路地裏へと入り込んでいくのを不安に思ったステラがそう言う。
「でも、気になるじゃない。デートじゃないのは早々に分かったけど、今度はこんなところまで来て……」
「しっ!気付かれちゃうよ」
彼我の距離は数十メートルほども離れてはいるが、彼は優秀な戦士だ。
気配には敏感だろうから慎重に行かなければ気取られてしまう。
そうして暫くは尾行を続けるのだが、どんどん人気がなくなっていく。
そして……
「……見失っちゃった?」
「みたい」
「普通に声をかければよかったんじゃあ……」
とうとう見失ってしまうのだった。
「でも、多分この辺りに用事があったんだよねぇ?」
ふと、辺りを見回せば……人気のない寂しい路地裏。
王都は治安も良く、あからさまなスラム街など無いのだが、それでも女性の独り歩きは勧められない雰囲気だ。
彼女たちは自衛手段があるから、あまり気にしてないようだが……
「こんなところに、一体何の用事があったのかしら?」
「明日聴いてみれば良いんじゃない?」
「メリエル、あまりプライバシーに突っ込むものじゃないわ」
「……ここまで尾行してきて言うセリフではないわね。でも、その通りだから、もう帰りましょう?」
結局、彼女たちは尾行を諦めて戻って行くのだった……
「行ったか?」
「ああ」
とある家の一室。
尾行されていた当のガエルと、もう一人の男が外の様子を伺っていたが、どうやら3人が諦めたらしいと知って、抑えていた声を出す。
「何なんだ?あいつら。お前も尾行には気がついていたんだろう?」
「ああ」
「……口封じしなくて大丈夫かよ?」
「唯の好奇心だろう。問題ない。それに、ああ見えて相当な強者達だ。あまり余計なことはしない方が良い」
「あんな小娘達が?本当かよ……でも、お前がそう言うのなら、そうなんだろうな」
「……」
「まあいい。あいつらが気が変わらないうちに行こうぜ。あの方がお待ちかねだ」
「ああ」
そうして二人は隠れていた家から外に出て、再び路地裏に消えるのであった……
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