【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
415 / 683
幕間

幕間21 『尾行』

しおりを挟む

 カティア達がダンジョン攻略から戻った翌日……いや、戻ってきたときには日付は既に変わっていたので当日の日中なのだが、シフィル、ステラ、メリエルの3人が集まってオープンカフェでお喋りに興じていた。

 本来であれば、今日はカティアとともにダンジョン攻略に向かう予定のはずだったのだが……


「何か、カティア達……昨日ダンジョン攻略しちゃったらしいわね」

「そうみたいだね~。イレギュラーだったらしいけど」


 今朝早く、カティアの依頼を受けた使者が、学園の寮を訪問して伝言と謝罪を伝えたのだ。
 使者もそこまで事情を把握していたわけではないので細かい話は聞けなかったが、どうやら昨日のうちにダンジョン最深部に到達してクリアしてしまったらしい……と言うのは分かった。


「いったい何がどうなったら、世界最大規模とも言われている王都ダンジョンを攻略できるのやら……」

「それはそうなんだけど……もう、『カティアだから』としか言えないわね」

「あはは~、確かに!」

「それね」

 ステラの結論に二人とも頷いて同意する。
 カティアが聞けば微妙な表情になるだろう。



「まぁ、詳しい話は明日本人たちに聞くとして……今日は暇になっちゃったわね」

「いいじゃない、こうしてゆっくり過ごせば」

「それはそうなんだけど、もうすっかりダンジョン探索行くつもりだったからねぇ……」


 少々エネルギーを持て余してる様子のシフィルに、ステラは苦笑する。
 とは言え、確かにこのまま無為に一日を過ごすのも勿体無いと思っているのは彼女も同じだろう。




「さて、どうしたものか………ん?どうしたのメリエル?」

 シフィルは、先程からメリエルが随分と大人しいのが気になったようだ。


「ん~……ほら、あそこに居る人……あれ、ガエルくんに似てない?」

 そう言うメリエルの視線を辿れば、街行く人の流れに埋もれて見えにくいが……それでも2メートル近い巨体と、年齢に見合わぬ落ち着いた独特な雰囲気で、確かにガエルであることが遠目でも分かった。


「ホントだ。……こんな繁華街にアイツが来るなんて意外ね」

「ね~。休日なんか一日中訓練場で鍛錬してそうだもんね」

「……それは偏見だと思うけど、確かに意外な感じはするわね」


 あくまでもイメージであるので、ガエルが繁華街を歩いていようと別に不思議なことではないのだが……この辺りはお洒落な雑貨やカフェが立ち並び、いかにも若い女性が好みそうな雰囲気なので、彼が一人で歩いているのは違和感があるのも確かだ。

 3人は顔を見合わせる。


「……ムフフ。もしかして、デートとか?」

「ここからだとお連れさんが居るかどうかまでは分からなかったわ」

「……よし!尾行しよう!」

「だね!」

 メリエルの提案に、シフィルは即座に乗っかる。

「ちょっとそれは……でも、気になる……」

 真面目なステラは難色を示すが、それでも気にはなる様子。
 やはり彼女も年頃の娘なので、色恋沙汰には興味が尽きないのである。



「ほら!見失っちゃうよ!行こう!」

「あ!?ちょっと!!……もう、仕方ないわね……」


 そうして3人は慌ててカフェを後にするのであった。























「……どこまで行くんだろ?」

「こんな裏路地に入ってくなんて……」

「ねぇ、そろそろ止めない?人通りも少なくなってきたから、そのうち気付かれるわよ?」

 ガエルを尾行する3人だったが、徐々に人通りの無い路地裏へと入り込んでいくのを不安に思ったステラがそう言う。


「でも、気になるじゃない。デートじゃないのは早々に分かったけど、今度はこんなところまで来て……」

「しっ!気付かれちゃうよ」


 彼我の距離は数十メートルほども離れてはいるが、彼は優秀な戦士だ。
 気配には敏感だろうから慎重に行かなければ気取られてしまう。



 そうして暫くは尾行を続けるのだが、どんどん人気がなくなっていく。



 そして……



「……見失っちゃった?」

「みたい」

「普通に声をかければよかったんじゃあ……」


 とうとう見失ってしまうのだった。



「でも、多分この辺りに用事があったんだよねぇ?」

 ふと、辺りを見回せば……人気のない寂しい路地裏。
 王都は治安も良く、あからさまなスラム街など無いのだが、それでも女性の独り歩きは勧められない雰囲気だ。
 彼女たちは自衛手段があるから、あまり気にしてないようだが……


「こんなところに、一体何の用事があったのかしら?」

「明日聴いてみれば良いんじゃない?」

「メリエル、あまりプライバシーに突っ込むものじゃないわ」

「……ここまで尾行してきて言うセリフではないわね。でも、その通りだから、もう帰りましょう?」


 結局、彼女たちは尾行を諦めて戻って行くのだった……






















「行ったか?」

「ああ」

 とある家の一室。
 尾行されていた当のガエルと、もう一人の男が外の様子を伺っていたが、どうやら3人が諦めたらしいと知って、抑えていた声を出す。


「何なんだ?あいつら。お前も尾行には気がついていたんだろう?」

「ああ」

「……口封じしなくて大丈夫かよ?」

「唯の好奇心だろう。問題ない。それに、ああ見えて相当な強者達だ。あまり余計なことはしない方が良い」

「あんな小娘達が?本当かよ……でも、お前がそう言うのなら、そうなんだろうな」

「……」

「まあいい。あいつらが気が変わらないうちに行こうぜ。あの方がお待ちかねだ」

「ああ」


 そうして二人は隠れていた家から外に出て、再び路地裏に消えるのであった……


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...