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第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り
第十三幕 2 『王城訪問』
しおりを挟む放課後になって、私は皆を連れて王城に向かう。
校門で私を待っていた護衛二人にも説明しておく。
「ケイトリン、オズマ、今日は皆を私の部屋に連れてくから」
「あ、そうなんですか?皆さんお呼びするのは初めてですね」
「では、私が先に戻って使用人達に伝えておきましょう」
「そうだね。お願いね、オズマ。でも、そこまで気を使わなくても良いよ、って伝えておいてね」
「はい、そのように。それではお先に失礼します」
そう言ってオズマは足早に立ち去っていった。
いくら私の友人たちとは言え、来客は一応伝えておいた方が良いだろう。
「あ~……何だか気を使わせちゃったみたいで、ゴメンね?」
最初にお見舞いを提案したメリエルちゃんが、申し訳なさそうに言う。
「ううん、気にしないで。私も友達に来てもらうのは嬉しいし」
エーデルワイスの邸の方なら、もっと気軽に呼べるんだけどね。
「そう言えば……エフィは護衛の人は付いてないの?」
ちょっと気になって聞いてみる。
初めて会ったときのお付きの人の様子からすれば、護衛も付けないというのは不自然な気がした。
「いるわよ?ほら、後ろに……」
そう言って彼女が振り向いた先を見ると……
「あ、ガエル君か」
「そういう事。学園内と行き帰りは彼に護衛してもらう事になってるの。他にも隠れて護衛してくれる人が何人かいるわ」
「じゃあ、彼も呼んだほうが良いのかな……?流石に自分の部屋には、ちょっと……」
まだテオだって入った事ないし。
「大丈夫、城門までだから。帰りは時間を決めておけば迎えに来てもらえる」
それも何だか申し訳ないけど……まぁ、私が気にすることじゃないか。
そう言えば、まだガエル君の素性を聞いてなかったね。
「ガエル君は……何者なの?」
「彼は、私と一緒にグラナを脱出した騎士の息子よ。あなたが『学園』の試験を受けると言う情報を得た時に……接触を図るために学園に入学してもらったの」
なるほど、そういう事だったのか。
でも一つ引っかかる。
「でも、エフィがイスパルに来たのは3年前って言ってたよね。アグレアス侯爵の伝手があれば、父様と面会するのは出来たんじゃ……?」
「……その頃はまだ黒神教の暗躍云々を言っても信じてもらえるか分からなかったし、逆に人質にされかねない…ということで慎重になってたのよ。色々事件が起きて黒神教の影が見え始めた昨今の状況なら……と思ったのと、カティアの人となりも分かったから、このタイミングで行動に出ることになったの」
「そっか……まぁ父様にいきなり接触図るよりは、私の方がハードルも低そうだものね」
割と自由にプラプラしてるしね……
それに……私達は大戦の記憶が無いから、グラナの皇女であるエフィともこうやって仲良くしてるけど、父様たちみたいに大戦の当事者たちは複雑な気持ちかも知れない。
たとえ黒神教が黒幕だとしても、皇族にも責任が無いわけじゃない……と思う者もいるだろう。
そう考えれば、このタイミングが妥当だったのだろう。
と、そんな話をしているうちに王城に帰ってきた。
学園の制服姿の女子たちがぞろぞろやって来るのを見て、門兵が一瞬驚きの表情を浮かべるが……もちろん私が一緒なのでフリーパスである。
「え~と……ステラとシフィルは来たことあると思うけど、他の皆は……」
「私はお父様に連れられて、何度か来たことがありますわ」
「私は結構出入りしてるよ。鉄道建設は国家事業だからね」
ルシェーラとレティは来たことがある、と。
と言うか、レティに至っては私よりよっぽど慣れてそうだ。
「私は初めてだよ!本当はカティアのお披露目パーティの時に来る予定だったけど、諸事情で……」
迷子……かな?
「もちろん私も初めて。会談の前に来ることになったわね」
エフィは、まぁそうだ。
今回の訪問は突発的だったけど、今日はあくまでも私の友人のエフィとしての訪問ということで。
そして、城の中を案内しながら私の部屋に向かうのだった。
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