【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

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第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り

第十三幕 64 『生命神の祈り』

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「う、ぬぅ……!!」

「あとはお前だけだ……!」


 リナ姉さんのお陰でブレイグ将軍は元に戻り……生き残っているグラナ兵も戦意喪失。

 残りは薬師のみ。
 この戦いも大詰めだ。



「……流石に多勢に無勢じゃな。ここらが潮時か」

「逃げるつもりか!?」

「そう簡単に逃げられると思うなよ!!」

 散々好き勝手しておいて……絶対に逃がすものか!!

 奴をここで倒しておけば、あの厄介な薬の数々を開発する者がいなくなる。
 黒神教にとっては大きな痛手となるだろう。


「もう逃げられないわよ」

 あくまでも冷静にメリアさんが言う。

 彼女の言う通り、既に私達は薬師の周囲を取り囲んでいる。
 この包囲網を突破するのは容易ではない。


「ひょひょひょ……なぁに、こんな囲みを突破するくらい造作もないわ」

「無理ね。まだ気がついてないのかしら?」

「何がじゃ?…………!?身体が……動かぬ!?」

 薬師の目が驚愕に見開かれる。
 身体が動かない……?
 もしかして、メリアさんが何かしたのか?


「言ったでしょう?私も薬や毒には詳しいって……ね」

「馬鹿な!?このワシに毒を盛ったのか!?いったいいつの間に!!?」

 タイミングがあるとすれば、先程の近接戦闘の時だろう。
 いつの間に、と言うのは私もそう思ったけど。


「ちゃんと魔族にも効いたみたいで安心したわ。文字通り……毒を以て毒を制す、よ」

「馬鹿な!!馬鹿なぁっ!!」


 ついに、薬師の最期のときだ。
 身動きの取れない相手を倒すのは、少し躊躇いがあるけど……
 これまで散々生命を弄んできた償いは取ってもらわなければならない。


「カイト君、今の解放状態の聖剣なら魔族を倒すこともできるわよ」

「ええ。任せてください」

 テオの聖剣グラルヴァルは、彼のシギルの力によって秘めた力を解放され、鮮烈な青い光を激しく噴き出している。
 ディザール様のシギルを発動したときの私のように。


「やめろ……やめるのじゃ!!!!」

「ハァーーッッ!!!」


 ザンッ!!!


「ぐぁーーーーっっっ!!!」


 テオの聖剣が気合とともに振り下ろされ、薬師を袈裟懸けに斬り裂いた。
 そして、薬師から断末魔の叫びが上がる。


「馬鹿な……馬鹿な……ワシの……永遠の生命が……こんな………………」


 斬られたところからボロボロと崩れ去って……やがて黒い灰となって消滅する。


 ウィラー王国を苦しめた薬師ヤォウーの最期は、そんなあっけないものであった。



















「終わった……な」

「ふぅ……レーヴェラントの時も、今回も……中々キツかったぞ」

 ジークリンデ王女とイスファハン王子が、ようやくと言った風に緊張を解いて言う。
 本当にお疲れ様……だったね。


「これから事後処理もあるだろうが……取り敢えずはこれで落ち着けるか」

 テオも流石に疲労を隠せない様子。

 ……多分、最期の止めを買って出てくれたのは、私に気を遣ってくれたのだろう。
 きっと、リナ姉さんに言われなくても……

 魔族に致命ダメージを与えられるのは、彼の聖剣以外だと、私の滅魔の刃になる。
 身動き出来ない敵に止めを刺すのは確かに抵抗があったし……そんな私の心情を察してくれたのだろう。

 私、そんなにヤワじゃないけど……でも、その気持ちが嬉しい。




『みんな、ウィラーを守るために力を貸してくれてありがとう!』

「でも……たくさん犠牲者が出てしまったね……」


 今私たちがいる辺りだけでも、敵味方双方に死傷者が倒れている。
 せめて、生き残っている人の治療はしていかないと。

 そう思っていると。



「大丈夫よ。ね?リナちゃん?」

「ええ。せっかく地上に降りたんだからね。存分に力を振るわせてもらうから」


 そう言ってリナ姉さんは……祈りのポーズをとって、空に浮かび上がる。
 ちょうど地上に降臨したときを逆回しにするように……


「まだそれほど時間が経ってない今なら……魂がまだ現世に留まっているなら。傷付き倒れ伏したる者たちよ……生命神たるエメリナの名にかけて、今ひとたび生きる力を授けん」


 空高く舞い上がったリナ姉さんが祈りの言葉を紡ぐと、暖かな光が地上へと降り注ぐ。

 キラキラと雫のように煌めくそれは、倒れた者たちに吸い込まれると、たちまちのうちに傷が癒えていく……




「おぉ……神よ……」

 人々は天を仰ぎ、神の慈悲に涙する。



 そして、悠久の時を超えて神が降臨したこの日。
 奇跡が生まれるのだった。
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