【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
13 / 191
レティシア5歳 はじまり

第11話 魔物

しおりを挟む

 ピクニックへ…とやってきたのは、イスパルナの街を出て馬車で30分くらいの距離、街を見下ろすことのできる小高い丘の上だった。

「どうだい、レティ。こうしてイスパルナの街を眺めるのは初めてだろう?」

「うん!父さん、凄くいい眺めだね!」

 爽やかな優しい風が駆け抜け、柔らかな春の日差しが注ぐ丘は、色とりどりの草花に覆われて絶好のロケーションであった。

(そっか~、今は春だったんだ。……こんなにも綺麗な世界なのに、図書室に籠もりきりなんて勿体なかったね)

 もともと、『彼』は乗り鉄…こうして四季折々の景色を車窓から眺めるのが好きだったのだ。

(ちょっと生き急いでたかも。私はまだ5歳なんだからね……目標に向かって頑張るのは変わらないけど、もっと余裕を持たないと。じゃないと、いつか辛くなってしまうかもしれないからね)

 好きで始めたはずのことでも、原点を見失ってしまえば…いつしか手段が目的になってしまい、苦痛に変わってしまう事は往々にしてあることだ。
 レティシアは、自分が何故この世界で鉄道を作ろうとしているのか…その原点をいつまでも忘れずにいようと思うのだった。









「この辺でいいかしら?」

「そうだね、風も日差しも気持ちがいい。…ああ、公務も忘れてのんびりするのは良いものだなぁ…」

 馬車を降りた一行は暫くは丘の上を散策し、休憩するのに良さそうな場所を見つける。
 同行したエリーシャも含めた使用人たちがテキパキとシートを敷いたり、お弁当を広げて準備をしてくれる。


「ありがとう。あなた達も座って、一緒に食べましょう」

「「「はい。ありがとうございます、奥様」」」

 モーリス公爵家の人々は皆温和で使用人との距離が近く、かなり良好な関係を築いている。

 そうして、皆で一緒にシートに座って昼食をとることに。



(…いいね、こう言うの。無駄に威張り散らすような人たちじゃなくて良かったよ。私は幸運だった…って思うべきだろうね)

 レティシアは、前世の家族のことを思い出して少ししんみりする。
 きっと、これから先も幾度となく折に触れて思い出すことだろう。
 でも、もう蹲ることは無い。
 新たな家族とともに生きていくと、彼女は決めたのだから。











「う~ん、おいしかった~」

「料理長、かなり気合入れて作ってくれたみたいだね」


(そうそう、公爵家うちの料理って美味しんだよね~。死んで転生してメシマズだったら、きっと立ち直れなかったね!)

 先程しんみりとしていたレティシアも、笑顔を見せている。
 美味しい食事は人を幸せにするのだろう。


「さて、お腹も膨れたところで…」

 アンリがそう言いかけたとき…何かを察知したリュシアンが警告を発した。

「父様、何か来ます」

「…魔物かい?ラスティン、どうかな?」

 そうアンリに問われたのは護衛の隊長である

「…申し訳ありません、私にはまだ察知できません。…リュシアン様、種類は分かりますか?」

「ごめん、そこまでは分からないな…でも、それ程強いやつじゃないと思うよ」


(まもの……魔物っ!?………ゲームみたいって思ってたけど、益々それっぽいね。本当にそうだったりして。それにしても……みんな落ち着き払ってるし、特に脅威じゃないのかな?)


「そろそろ来るかな?」

「はい、私にももう分かります。仰る通り大した魔物ではなさそうですね。護衛隊!皆様をお護りするぞ!!」

「「「はっ!!」」」

「僕も戦うよ」

 そう言って、護衛のメンバーとリュシアンは迎え撃つべく飛び出していく。


「リュシアンっ!!」

「まあ、良いじゃないかアデリーヌ。それほどの相手では無いようだし」

「でも…」

「本気で騎士を志すなら、経験を積む機会はあったほうが良いだろう」

「……はぁ。分かったわ」

 夫婦がそんなやり取りをしているうちに、彼らは魔物と接敵したようだった。


(ちょっと遠くて見辛いな……あれは何だ?何匹か、ぴょんぴょん飛び跳ねて…兎かな?)

「レティ、あまり見るものではないわよ」

 魔物とは言え、まだ幼い娘に命を奪う場面を見せるのは憚られるのであろう、アデリーヌはそう言ってレティシアの視界を遮る。

「あ……母さん、あれが魔物なの?何だか兎みたいに見えたけど」

「あれは『プレデター・ラビット』だな。兎に酷似しているが、全くの別種だ。ああ見えて獰猛で肉食だからな」

 母の代わりに父が答えてくれる。

「まあ心配しなくても大丈夫だよ。肉食と言っても魔物の中では最弱の部類だからね。彼らに任せておけば大丈夫だよ」

「兄さんは、強いの?」

「ああ、なかなかのものだよ。あの子は騎士を目指してるからね。うちの護衛連中より強いと思うよ」

「へえ~…カッコいいね!!」

(母さんの様子を見ると、あまり良くは思ってないみたいだけど…)


 そうこうしているうちに片が付いたようだ。
 レティシアにとっては正しくあっという間の出来事である。


「父様、母様、お待たせしました」

「ああ、お疲れ」

「…怪我はない?」

「ええ、大丈夫ですよ。あの程度の魔物に後れを取ることはありませんよ。もちろん、慢心は禁物ですけどね」

「兄さん、カッコいい!」

 近くで見ていた訳ではないけど、レティシアの素直な感想だ。

「ありがとう。レティにそう言ってもらえるのは、凄く嬉しいよ」

 可愛い妹から褒められて、満面の笑みで喜びを顕にするリュシアンである。









(魔物か……何か対策を考えておかないと、運行上の支障になりかねないかな?)

 そしてレティシアは、あくまでも鉄道の事で頭がいっぱいなのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...