18 / 191
レティシア5歳 はじまり
第15話 工房
しおりを挟む「出来た!」
ああでもない、こうでもない…と、試行錯誤して頭を悩ませながらも、レティシアは何とか図面を完成させる。
レールと、ごくシンプルな車両なのだが、実際に設計してみると思いの外色々なことを考慮する必要があった。
「何が出来たのですか?お嬢様」
「あ、エリーシャ!ちょうど良かった…ねえねえ、私を工房に連れて行ってくれない?」
「工房ですか?それはもちろん構いませんが…お嬢様がどのような御用で…?」
「これ…ほら、これを作ってもらおうかと思って!」
と、レティシアはエリーシャに図面を見せる。
「まあ……これは、お嬢様が書かれたのですか?」
「そうだよ!」
「お嬢様がこれを……(何の図面なのかは分からないけど…この精密な書き込み…とても5歳の女の子が書けるようなものじゃないわ…)」
エリーシャは内心で驚愕するが、それは表に出さずにレティシアの要望に応えて彼女を工房へと案内する。
そうして、レティシアがやって来たのは…
「ここが工房?」
「はい、街の工房から持ち回りで週に何回か職人さんたちに来てもらってるのです。今日は丁度いらっしゃる日ですね」
(ああ、専属って訳じゃないんだ…まあ、いくら公爵家と言ったってそんなに頻繁に用があるわけじゃないか)
レティシア達がやって来たのは、邸の本屋を出て中庭を通り、裏手にある建物。
「すみませ~ん!親方さんいらっしゃいますか~?」
エリーシャが入口から中に声をかける。
「おうっ!何か用かい?……何だ、エリーシャじゃねぇか。また何か借りてくのか?」
ぬっ、と奥から現れたのは、作業服を着た中年男性…如何にも「親方!」と言う雰囲気を纏った強面の職人だった。
「こんにちは親方さん」
「おう。今日はどうした……って、そっちのお嬢ちゃんは…?」
「あ、はじめまして!私、レティシアって言います!」
「お?ちっこいのにちゃんと元気に挨拶が出来て偉いな?俺はここの工房を預かってるマルクってもんだ。よろしくな。………うん?レティシア?そりゃあ、確か…」
「そうです。アンリ様のお嬢様ですよ」
「…だよな。そんで、そのレティシアお嬢様が、何だってこんなむさ苦しいトコに?」
と、レティシアに向き直って不思議そうに尋ねる。
口調は荒々しいが、一応小さい女の子が相手なので怖がらないように彼なりに気を遣っている。
だが、いかんせん彼は強面なので、泣き出してしまわないかと内心でヒヤヒヤしていた。
しかしレティシアは、そんな彼の心配をよそにニコニコ笑いながら、ここまでやって来た要件を伝える。
「えっと…親方さんに作ってもらいたいものがあります!」
「うん?俺にですかい?」
「これです!」
そう言って彼女は自らが設計した図面を差し出す。
それを受け取った彼は、さっと表情を変えて真剣な様子で確認し始めた。
「こりゃあ……随分と精密な図面だな。ふむふむ……なるほど……ほう、ここがこうなってるのか。よく分からねぇが、完成図から察するに……馬車みてぇなもんですかい?」
一通り図面を確認して、そのような結論に至ったようだが…
「えっと、馬車ではないんだけど、乗り物ではあります。ただ、これは試作品と言うか…実験と言うか…」
(これを見てそう言う結論って事は……トロッコみたいなものも無いんだね。つまり、レールと車輪と言う概念自体がない。いや、引き戸とかには使われてるから、運搬・輸送に応用されていないと言うのが正しいか……やっぱりチグハグな感じだね)
「この図面、誰が書いたんだ?弟子たちに見せてやりてぇんだが…」
と、親方がエリーシャに問いかけるが、それには書いた当人が答えた。
「あ、別に構いませんよ~」
「……まさか、お嬢様が書いたんですかい?」
「うん、そうだよ?」
もはや、隠すとか自重するとか言うのは忘却の彼方…と言うよりも、いちいち隠すのが面倒になったらしい。
レティシアは好きな事なら根気強い面を発揮するが、基本的に面倒臭がりなのである。
11
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
夜の声
神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。
読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。
小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。
柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。
そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
エンプセル
うろこ道
SF
高校3年生の美月は、目覚めてすぐに異変に気づいた。
自分の部屋であるのに妙に違っていてーー
ーーそこに現れたのは見知らぬ男だった。
男は容姿も雰囲気も不気味で恐ろしく、美月は震え上がる。
そんな美月に男は言った。
「ここで俺と暮らすんだ。二人きりでな」
そこは未来に起こった大戦後の日本だった。
原因不明の奇病、異常進化した生物に支配されーー日本人は地下に都市を作り、そこに潜ったのだという。
男は日本人が捨てた地上で、ひとりきりで孤独に暮らしていた。
美月は、男の孤独を癒すために「創られた」のだった。
人でないものとして生まれなおした少女は、やがて人間の欲望の渦に巻き込まれてゆく。
異形人外少女をめぐって愛憎渦巻く近未来ダークファンタジー。
ラストは大団円です!
※表紙絵•挿絵は全部自分で描いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる