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レティシア5歳 はじまり
第24話 試作品
しおりを挟む「アンリ殿、お世話になりました」
「ああ、道中気をつけて。また何時でも寄ってくれ」
翌日、ブレーゼン侯爵一家は王都に向けて出発することに。
「ルシェーラちゃん、またね~」
「はい!レティシアさんもお元気で!……りゅ、リュシアンさまも…」
顔を赤らめてモジモジして言うルシェーラ。
その表情はまるで恋する乙女のよう。
…重ねて言うが、彼女はまだ3歳だ。
随分なおませさんである。
「え~と…元気でね、ルシェーラちゃん。まぁ、婚約云々は置いといて…また遊びに来てくれたら嬉しいよ」
「はい!…こんやくはおいときませんけど」
「あ、あはは…」
もう完全にターゲット・ロック・オン!であった。
侯爵一家を見送ったレティシアは、お付きのエリーシャを伴いその足で工房に向かった。
親方から『試作品』が出来たとの連絡を受けたからだ。
「親方こんにちは!!来ましたっ!!」
「お、お嬢様…はしたないですよ」
レティシアは工房の扉をバーン!と開けて、中に入るなり大きな声で挨拶する。
無作法なその様子に思わずエリーシャは苦言を呈するが、言われた当の本人はさして気にした風もなく、勝手知ったる…とばかりにズカズカと中に入っていく。
レティシアは、最初にここに来てから何度か打ち合わせでやってきてるので、もう既に遠慮なんてものは無くなっているのだった。
部屋の奥で作業していたらしい親方は、その声を聞きつけてのっそりと現れた。
「おう、よく来てくれたなお嬢さん」
「うん!!試作品が完成したって聞いたから、飛んできたよ!」
「ああ、俺も早く見せたくてウズウズしてたところだ。それなりに場所を取るからな、ブツは別の所に置いてあるんだ。案内するぜ」
そう言って親方は二人を先導して工房の外に出る。
レティシア達が連れて行かれたのは、工房に併設されている倉庫だ。
そして、その倉庫の前に…
「あ!もう敷設してるんだね!」
「ああ。ちゃんと出来てるか確認するためにな。バッチリだったぜ」
倉庫の中から壁に向い、さらに壁に沿ってその先まで続く線路が敷かれていたのだった。
「折角だからな。通用口からこの倉庫までの搬入路に使わせてもらおうかと思ってな」
「いいじゃない!!是非使ってもらいたいよ!…あ、でも、父様には…?」
「ああ、それなら…」
「私が親方に許可したんだよ、レティシア」
レティシア達が倉庫前で話していると、そこにやって来たのは丁度今しがた話に上がったアンリであった。
「あ、旦那様!」
「父さん!?」
「私も、レティが設計したと言うモノに興味があったからね。一緒に確認させてもらってもいいかな?」
「うん!もちろんだよ!」
いずれは国を巻き込むつもりだったのだ。
既に父が興味を持ってくれているというのは、彼女にとっては都合の良い事であった。
「それじゃあお見せしましょう。コイツです!」
倉庫の中から線路を転がり現れたのは、5両が繋がったトロッコ列車。
それは、レールの幅は50cm、車両の大きさも遊園地の遊具ほどだが、紛うことなくこの世界で初めて作られた鉄道であった。
「おお!完璧じゃない!」
「そうだろう。お嬢さんの図面は完璧だったけどよ、実際に作るには俺たちもかなり頑張ったんだぜ」
「うんうん、材質なんかはやっぱり専門家の意見が重要だったしね。親方たちには感謝してるよ!」
「私も見せてもらっていいかな?……ほう、かなりの重量があるように見えるが…確かに僅かな力で転がせるね…」
アンリの言う通り、車両にはかなりの部分に金属が使用されてるので重量は相当なもののはずである。
少なくとも大人数人がかりでどうにか一両持ち上げられるといったところか。
だが、それもレールの上に乗せて転がす分にはそれほどの力を必要としない。
それこそが正に鉄道の利点の一つということだ。
「手で直接押してもいいけどね。ほら父さん、この先頭車のところ。これを上下に動かすと加速させることが出来るんだよ」
そう言ってレティシアが示したのは先頭車両、車両の床面から支柱が突出し、そこにシーソーのようなモノが付いている。
これを上下させることで動力が伝わる…要するに人力トロッコという事だ。
彼女の最終目標は何らかの動力車を開発して本格的な鉄道輸送を実現することだが、まだ動力の目処は立っていないので、今回試作品を作るのに当たっては取りあえず人力としたのであった。
「よし!それじゃあ、試運転してみよっか!さぁ、みんな乗って乗って!」
レティシアは意気揚々と、試運転のためにその場の面々に乗車を促すのだった。
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