【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
51 / 191
レティシア12歳 飛躍

第44話 誕生日のお祝い(デート?) 1

しおりを挟む

 レティシアの誕生日は春の陽気も麗らかな時節の5月5日である。
 彼女の前世では『こどもの日』に当たるが、この国の暦では特別な日ではない。


 彼女の誕生日は毎年家族で祝われ、それは今年も変わらないのだが……今日はいつもとは異なり、日中はリディーとお出かけすることになっていた。

 父アンリはデートなどと言っていたが、レティシアはただ単に美味しいものを食べに行く以上の意識は持っていなかった。
 母アデリーヌもその話を聞いた時、最初は目を輝かせていたものだったが……レティシアがあくまでも色気より食い気である事を見るにつけ、ため息をつくのだった。




 エリーシャに身支度を整えてもらい、待ち合わせ場所に向かうレティシア。
 最近は一人での街歩きも許可されていて、その足取りは慣れたものだ。
 待ち合わせ場所と言っても、いつも通りモーリス商会の研究開発室なのだが……それも、アデリーヌがため息をつく理由の一つであった。

 しかし、今日の彼女の格好は普段よりもかなりめかし込んでいるように見える。
 もともと彼女は幼いながらも非常に整った容姿であり、眩いばかりの黄金の髪と相まって人の目を惹きつけるのだが……本人は自分の容姿には全くの無頓着で、着るものもシンプルな物を好む。
 それどころか、研究開発室に籠もって作業をするときなどは、全く似合わない作業着を愛用しているような娘なのだ。
 アデリーヌがため息をつく理由の一つである。

 そんな彼女が、今日は年頃の少女らしい、彼女によく似合う服を着ているのである。
 幼くも稀なる美貌の少女に、街行く人々の目線が釘付けになるが当人は全く気が付かない。

 もちろんレティシアが意識してそのような格好をしてるわけではない。
 今日のデート(?)の話を聞きつけた、エリーシャを始めとするモーリス公爵家メイド隊が気合を入れた結果であった。















「こんにちは~!リディーは居る?」

「あ、会長、こんにちは!主任なら今席を外してますけど、直ぐに戻られるかと。……どうしたんですか?今日は随分とお洒落をしてますけど」

 研究開発室にやって来たレティシアは、入口近くに居る男性職員にリディーの所在を聞く。
 彼は普段は見られないレティシアの格好に目を丸くしながら答えてくれた。


 現在の研究開発室は、かなりメンバーも増えた事により、様々な開発案件ごとに担当を分けるようになっている。
 鉄道開発の本格化に伴って、モーリス商会地下の他にも幾つかの開発拠点が設けられたが、ここが中心である事に変わりは無い。


「今日はね、ちょっとリディーとお出かけする予定なんだ」

「あぁ、デートですね。行ってらっしゃいませ」

(ん~、やっぱそう見えるのか~。前世男としてはどうにもビミョーだなぁ……。でも、私ももう12歳か。普通だったら異性に興味が出る年頃だと思うけど……ん~、よく分かんない。少なくとも、女の子に興味があるわけじゃないと思うんだけどね)
 
 彼女が前世の記憶を取り戻したときから、感覚としては前世から意識がそのまま続いているように感じられたのだが……女性への興味という点では、その時点ですっかり途絶えてしまった。

(ま、まだ12歳の小娘だしね。そーいう悩みは、まだ私には早いかな?)

 そんなふうに、彼女はそれを先送りにするのだった。












 暫く研究開発室で何となく設計図を眺めながら待っていると、リディーが戻ってきたようだ。

「あぁ、レティ。もう来てたのか。すまないな待たせてしまったようで」

「ううん、さっき来たところだから、だいじょ~ぶだよ。じゃあ、行こっか」

「分かった。しかし、折角の誕生日に俺なんかと一緒で良かったのか?」

 リディーは気になってることを聞いてみた。
 歳の離れた自分なんかより、同年代の友人たちと過ごしたほうが楽しいのではないか?
 ……と思い、気になったのだ。

 もしかして、友達いないのか?
 と思ったのは秘密である。


 実際、レティシアの同年代の友人はあまり多くない。
 たまに父親に付いて公爵家に立ち寄ってくれるルシェーラは仲の良い友人と言えるが……
 あとは、両親の付き合いで他の貴族家の令嬢たちと交流があると言えばあるが……友人と呼べるほどの者はそれほどいないのが実情だ。
 精神年齢的に、どうしても年上の人の方が話が合うし、心境としては若い子の話にはついて行けない……なんて年寄り臭い事を思ってたりする。
 ルシェーラは年下だが年齢に見合わない聡明さがあるし、何となく波長は合う気がしている。


(……私、友達少ない?いやいや、リディーだって親方だって、マティス先生だって……研究開発室のメンバーにも親しい人はいるし、友人と言えなくもないし。……でも、リディー以外はおっさんばっかだわ)


 難しい顔をしてレティシアは悩み始める。
 そして、ひとしきり悩んだあと、徐ろにレティシアは顔を上げて言う。

「結論。私の身近で歳の近い友人はリディーしかいないわ!文句ある!?」

「い、いや……変なことを聞いてすまなかったな……」

 リディーは悪いことを聞いてしまった……と反省するのだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

夜の声

神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。 読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。 小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。 柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。 そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

エンプセル

うろこ道
SF
高校3年生の美月は、目覚めてすぐに異変に気づいた。 自分の部屋であるのに妙に違っていてーー ーーそこに現れたのは見知らぬ男だった。 男は容姿も雰囲気も不気味で恐ろしく、美月は震え上がる。 そんな美月に男は言った。 「ここで俺と暮らすんだ。二人きりでな」 そこは未来に起こった大戦後の日本だった。 原因不明の奇病、異常進化した生物に支配されーー日本人は地下に都市を作り、そこに潜ったのだという。 男は日本人が捨てた地上で、ひとりきりで孤独に暮らしていた。 美月は、男の孤独を癒すために「創られた」のだった。 人でないものとして生まれなおした少女は、やがて人間の欲望の渦に巻き込まれてゆく。 異形人外少女をめぐって愛憎渦巻く近未来ダークファンタジー。 ラストは大団円です! ※表紙絵•挿絵は全部自分で描いています。

処理中です...