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レティシア12歳 鉄の公爵令嬢
第65話 メイド・バトル!
しおりを挟む技術開発品評会への出展のため、王都へとやって来たレティシア。
到着した同日は旅の疲れを癒やすために自室でゆっくりと過ごしたが、翌日からさっそく出展準備の状況確認や諸々の指示、王都支店の視察などに忙しく動き回っていた。
そして数日後……王都にやって来たもう一つの目的が今日行われる事になっている。
それはレティシアにとっては面倒事と言え、彼女は朝から憂鬱な気分になっていたのだが……避けて通れるものではないことも彼女はよく理解していた。
(はぁ~……めんどくさいなぁ……)
レティシアは内心で、もう何度目かになるため息をついた。
現在彼女は、モーリス家の王都邸の化粧部屋でドレッサーの立派な三面鏡の前に座り、じっとしている。
実は今日、品評会のプレイベントの一つである、国内外の来賓を招いての晩餐会が行われる。
以前に父母から聞かされた通り、レティシアは今日モーリス家公爵令嬢として社交界デビューを果たすことになっているのだ。
だが、彼女がいま頭を抱えているのはそれだけが理由ではない。
それは……
「何を言ってるの!!お嬢様の御髪はアップにまとめるべきよ!可憐さの中にある未成熟ながらも健康的な色気を演出するの!」
「駄目よ!お嬢様のこの美しいゆるふわ蜂蜜ブロンドは大きなアピールポイントなのよ!!あなた、お嬢様が普段しない髪型を見たいだけでしょ!?」
「まあまあ、その気持ちはあなたにも分かるでしょ?でも、それを言うならポニーテールこそ至高ね!」
「だったらツインテールでしょ!!大人になったらイタイだけだし、今しかできない髪型よ!!」
「なんですってぇっ!?それじゃ私もイタイ大人ってことじゃない!!似合ってればいいでしょっ!!」
………………
…………
……
「……はぁ~。えらいこっちゃだわ……」
キャーキャーワーワー……と、当の本人を置き去りにして激しい論争を繰り広げているメイドたちの声を背に、内心だけでは留められなくなったため息が漏れる。
横目に見ると、パーシャが目を白黒させて呆然と佇んでいた。
レティシア専属の彼女と言えど、荒ぶる先輩メイドたちを諌める役割は期待できそうにない。
というか。
「ちょっと。エリーシャは商会の方に専念するんじゃなかったの……?」
と、論争を超えて掴み合いの喧嘩になりそうなメイドたちの中に混じっていたエリーシャに声をかける。
話に夢中で聞こえないと思っていたら、ぐるんっ!と彼女は勢いよくレティシアの方を振り向いた!
(ひぃーっ!?こわっ!?)
「何をおっしゃいますか!!レティシア様の晴れの舞台の日に私を仲間外れにするなんて……私に死ねとおっしゃいますか!?」
「えぇ~…………」
あまりのエリーシャの剣幕に、レティシアはドン引きする。
パーシャも尊敬する従姉のあまりの壊れっぷりに顔を引きつらせていた。
どうやら彼女はかなりまともらしいと思ったレティシアは、(染まらないでね……)と内心で呟くのだった。
さて。
こんな修羅場とも言える状況になっている理由は言うまでもない。
ただでさえ、普段からレティシアを着飾らせる機会を虎視眈々と狙っている荒ぶる魂のモーリス家メイド一同に、一生に一度の晴れの舞台などという燃料を投下すればこうなる事は必然である。
商会の仕事が忙しいエリーシャも、長年仕えてきたお嬢様の晴れの舞台ともあれば、駆け付けずにはいられなかったのだろう。
自分では髪型やらドレスやら、どうすればよいのかさっぱり分からないので、彼女たちに任せるしかないレティシアなのだが……
髪型ひとつ決めるのにこの大騒ぎ。
まだこれからドレスやアクセサリーも決める必要があるのに、その度にこうなるのか……と思うと、またもやため息が出てしまう。
(……まだやってるよ。いつ終わるのかな?これ……あ、こらこら!手は出しちゃダメでしょ。……はぁ、やっぱり私には、まだまだ女の子の心は分かりませんねぇ)
取っ組み合いの喧嘩になりそうなところで、流石にパーシャが止めに入ったのを横目に見ながら、レティシアはそんなふうに思うのだった……
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