102 / 191
レティシア15歳 時代の変革者たち
第88話 出迎え
しおりを挟む「……レティ、そんな格好で……お客様の前ですよ」
作業着姿のレティシアを目にして、そんな苦言を言うリュシアン。
しかしその目は穏やかに笑っていて、久しぶりに妹に会えたうれしさを隠しきれない様子だった。
「へっ?……ああ!?ご、ごめんなさい…久しぶりに兄さんに会えると思ったら嬉しくてつい…」
彼女は他の人々を認識してなかったわけではない。
実際、リュシアンに声をかけられるまで……来客の一人である美しい少女に目を奪われていたのだから。
そして少女もレティシアの方をじっと見ていた。
まるでお互いに惹きつけられてるかのように。
今も……レティシアは兄に向き合って一旦は応えたものの、横目でチラチラと少女を見ている。
それは、少女の並外れた美貌によるものだけでなく、内面からにじみ出る何かがそうさせていた。
他のものであれば、それは王族の『カリスマ』だと感じたことだろう。
しかし彼女は……それとは別のものを感じ取っていた。
魂が震えるような何かを……
来客は彼女だけでなく、彼女の傍らには他にも何人かいる。
小さな女の子、整った顔立ちの青年、厳つい風貌の中年男性、そしてレティシアの友人のルシェーラだ。
そして彼らを迎えているのは、アンリとアデリーヌの公爵夫妻と、公爵家の使用人一同だった。
「……全く、しょうがないですね。皆さん、お見苦しいところを見せて申し訳ありません。彼女が、私の妹のレティシアです」
と、リュシアンが彼女を来客たちに紹介した。
その言葉から察するに、既に道中でレティシアの話をしていた事がうかがえる。
「こ、こんな格好で申し訳ありません。私はリュシアンの妹で、レティシアと申します。いつも兄がお世話になっております」
そしてレティシアも居住まいを正して、丁寧に挨拶をした。
今更ながら、あちこち汚れが付いている作業着姿のままであることを思い出し、顔を赤らめながら。
そして、レティシアが目を離せずにいた少女が挨拶を返す。
「はじめましてレティシアさん。私はカティアと申します。ダードレイ一座で歌姫をやっています。よろしくお願いしますね。あ、こっちの子は……私の『養子』で、ミーティアって言います」
「ミーティアです!ママの娘です!」
レティシアの予想通り、彼女こそがイスパル王国の王女……カティアだった。
そして一緒に紹介されたミーティアは……カティアと良く似た女の子だった。
『養女』ということだが、どう見ても血の繋がりがあるようにしか見えない。
だが、何らかの事情があるのだろう……と、モーリス家の面々は特にそれには触れなかった。
「ふふ、ちゃんと挨拶できて良い子だね。……そうですか、あなたがカティアさんなんですね、こちらこそよろしくお願いします」
レティシアが頭を撫でると、ミーティアは嬉しそうに目を細めた。
(……かわいい)
そして、カティア、ミーティアと挨拶を交わしたあと、他の来客たちも紹介される。
青年の名はカイト。
どうやらカティアとは恋人同士のようだ。
落ち着いた物腰と所作から、思慮深い雰囲気が感じられた。
中年男性はダードレイ。
旅芸人一座の座長であり、カティアの育ての親らしい。
筋骨隆々で、芸人というよりは歴戦の戦士ように見える。
実際に彼は、Aランク冒険者でもあるということだった。
そして……
「レティシアさん、お久しぶりですわ」
「あ、ルシェーラちゃん!久しぶり!学園楽しみだね」
レティシアが5歳の頃からの友人であるルシェーラだ。
現在13歳となった彼女だが、かなり大人びた美少女へと成長していた。
レティシアと並ぶと、彼女の方が年上に見えるほどだ。
彼女たちは、時おりブレーゼン侯爵夫妻とともにルシェーラが公爵家に立ち寄った際に友人として交流していたし、これまで手紙のやり取りも頻繁に行っていた。
「リュシアン様から、レティシアさんも学園に入学すると聞いて嬉しかったですわ」
「うんうん!私も、ルシェーラちゃんが一緒だって聞いたから学園に行く気になったんだよ。本当はね……商会もあるし、大事な事業もあるし、あまり乗り気じゃなかったんだ。だけど、父さんが人脈を得るためにも学園は行ったほうがいって言うから……」
「ふふ……例えアクサレナの学園でも、レティシアさんくらいになると退屈かもしれませんものね」
彼女は、レティシアがモーリス商会の会長として手腕を発揮していることを知っている。
事業の詳しい内容までは知らなかったが、幼い頃から『神童』と言われるほど聡明だったことも知っていた。
だから、今さら学園で学ぶことはそれほど多くはないのでは……と思っている。
とは言っても、一緒に学園生活が送れるのは本当に嬉しいとも思っており、それはレティシアも同様だ。
「そう言えばその格好、何かの作業をされていたみたいですが……」
「あ、そうなんだよ、私の夢の第一歩。それがもう少しで実現しそうなんだ。……そうだ、皆さん少し見ていきません?きっと驚くと思いますよ」
ルシェーラに話題を振られ、良い機会だから……と、彼女はそんな提案をした。
「レティ、お客様たちは旅の疲れがあるんですよ。それはあとで……」
「あ!私、凄い気になりますっ!……ごめんなさい、リュシアンさん、少しだけお時間頂けませんか?」
「え?ま、まあ、カティアさんがそう仰るなら……」
リュシアンが来客たちの旅の疲れを慮り、レティシアを窘めようとする。
しかし、カティアはとても乗り気の様子。
当の彼女がそう言うのであれば……と、リュシアンも戸惑いながら了承した。
「カティア?何か気になるのか?」
不自然なくらいに興味を示したカティアに、カイトが問う。
「だって、『神童』って言われれる人が『夢』って言うほどのものだよ?カイトもそれが何なのか気にならない?」
「まあ、確かに……」
彼は、理由はそれだけではないように感じたが……カティアの言うことも尤もだと思い、取りあえずは納得した。
そして、彼らは公爵家の裏手にある車両基地へと向かうのだった。
12
あなたにおすすめの小説
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる