【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
105 / 191
レティシア15歳 時代の変革者たち

第91話 同胞(中編)

しおりを挟む



「ご、ごめんね……突然、迷惑だったよね」

「ううん……驚いたけど。泣いてスッキリしたかな?」

「うん」


 レティシアが、その心の内をすっかりさらけ出したからであろうか。
 彼女たちの口調はお互いに、すっかり砕けたものになっていた。

 多くの言葉を重ねなくても、長い時間をかけずとも……通じ合う事がある。
 いま、二人はそれを知った。


「ちょっと、自分でも制御ができなかった。もう一人の私のこと理解してくれる人がいると思ったら、嬉しさがこみ上げて……つい」

「やっぱり……転生したのは本意じゃなかったんだね」

「うん。カティアさんは……違うの?」

「カティアでいいよ。私もレティって呼ぶから。……私の場合は少し特殊なんだよね」

 そして彼女は、自身が転生した経緯を話し始める。

 それによれば、彼女はもともとこの世界で生まれたカティアに憑依する形で転生したとのこと。
 何らかの理由で損傷したカティアの魂を補う形で、それを願った女神エメリールの力によって。


「……私とは少し違うんだ。それはそれで大変そうだね」

「そうでもなかったよ。もとのカティアの記憶があったし、それに私は納得して転生したから……。レティの方が凄いと思う。私だったら立ち直れないかも……」

「ううん。私が凄いんじゃないよ。父さんも、母さんも、兄さんも……根気よく私のことを支えてくれた。見捨てないでくれた。だから、私は立ち直れたの。だから、今度は絶対に家族を悲しませる事はしないんだって誓ったんだ」

 彼女のその言葉にカティアは、やはり彼女は芯が強く優しい少女だと思った。



「……それでも、ふとした拍子に前世を思い出すと寂しさを感じることもあって……同じ日本からの転生者に会えたのは、本当に嬉しかったの」

「私もだよ。ある意味『同胞』はこの世界にはいないと思ってたからね」

 カティアは、ここまでの道中でレティシアの話をリュシアンたちから聞いていた。
 彼女がモーリス商会で開発してきた品物の数々や、これまでの功績など……『もしかしたら転生者なのでは……』という疑念を抱いていた。
 だから今日、実際に会って魔導力機関車を見せられたとき、その疑念は確信に変わったのだ。

 事前の予想があったからこそ、レティシアよりもその衝撃は小さかったが……同じ世界からの転生者に出会えて嬉しかったのはカティアも同じである。


 それから二人は、これまでの生い立ちをお互いに話し始める。
 そして、それはいつしか前世の話題へと移っていく。

 どこに住んでいたの?
 趣味は何だった?
 好きな音楽は?
 あのゲームやったことある?

 他愛のない話で大いに盛り上がった。


 そうすれば自然とお互いの前世の人物像も、朧気ながら見えてくる。

 それはつまり……

「……カティアの前世って、男の人?」

 ということだ。
 話の内容からすると、どうやら彼女の前世は自分と同じく男性だろう……と当たりをつけ、レティシアはやや躊躇いながらも聞いた。


「え、ええ……まぁ……。もう、そういう感覚はすっかりないけど」

「やっぱり。それで、その……あのカイトって人とお付き合いしてる……?」

 はっきりそう紹介はされなかったが、二人の雰囲気からそれは察せられた。
 ……それ以前に、晩餐の席で周りが引くほどに惚気話を披露していたが。


「つ、付き合ってるわけじゃないけど……いや、まあ、付き合ってるのかな?」

「まあ、どっちでもいいけど。その……悩んだりはしなかったの?」

「もちろん、悩んだよ。でも、結局自分の気持ちに素直になる事にしたんだ。……もう少しで後悔するところだったし」

「そう……なんだ。自分の気持ちに、素直に……か」

 その言葉は、ロアナからもらったアドバイスにもあった。
 自分の境遇に近い人物から再び同じ言葉を聞いたレティシアは、その言葉通り素直な気持ちで自分の悩みを告白しはじめる。


「その……私も、前世は男だったんだけど」

「あぁ、やっぱりそうなんだね」

「……そんなに私って男っぽい?」

「何となくね。あんな機関車を創り上げようなんて思うのは、どちらかと言うと男の人かな……って」

「まあ、それもそっか……」

「で、レティは前世男性で…今も男の思考なの?……はっ!?まさか、さっき抱きついたのは!?」

「へ!?いやいやいや、そういうんじゃないよ!私は別に女の人が好きってわけじゃないから!」

「あ、そうなの?」

「うん。転生前は女の子が好きだったけど、もう今はそういう感情は無いよ。……でも、じゃあ男が好きかというと……それもよく分からないんだよね……」

 以前はあまり考えなかった……いや、ずっと先送りにしていた自分自身の性自認の問題。
 フィリップから婚約の申し込みがあってから、少しずつ真剣に考えるようになった悩みだ。


 そしてその悩みは、カティアにもよく理解できた。
 身体に残っていた『女』のカティアとしての感情と、前世の『男』の記憶を持つ魂……転生の経緯は異なるものの、同じ悩みを持っていたから。

 そして彼女は、それを乗り越えてきた経験者としてレティシアにアドバイスする。

「少し違うかもしれないけど、私と似ているね。とにかく自分の気持ちに素直になるのが一番だと思う。これからレティに好きな人ができた時、きっと前世の記憶のことで悩むかもしれない。でも、やっぱり……その時の自分の素直な気持ちを大切にするべきなんじゃないかな?」

「自分の気持ちに、かぁ……。流石、経験者の言葉は含蓄があるね」

「でしょ?」


 三度、語られるその言葉。
 素直な気持ちで、ありのまの自分で。
 それは大切な言葉として、レティシアの心に深く刻み込まれた。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...