森の魔女の後継者

O.T.I

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11 王都へ

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SIDE:ADMIN


 宿で一泊したメリアとグレンたち特務隊の一行は、まだ日が昇ったばかりの早朝から馬を手配して王都へと向う事に。

 昨日話した通り、メリアはイェニーの馬に同乗させてもらっている。
 手綱を握るイェニーの前に小柄なメリアはすっぽり収った。
 メリアとイェニーの乗る馬の直ぐ側をレヴィが付いていく。
 馬はよく訓練されているらしく、レヴィがいても興奮して暴れるようなことはなかったので、メリアとしては一安心だった。


 そしてブルームの街を出た一行は進路を東に……茜色から次第にその輝きを増していた朝日に向かって街道を進んでいく。










SIDE:メリア


 うっぷ……

 街を出てから暫く経ったけど……私は早々に馬に酔っていた。
 乗馬をしたことがないのは勿論だが、こうして誰かに乗せてもらうのも初めてなんだけど……
 揺れるのは分かっていたけど、ここまでとは思わなかった。


「どうしました、メリアさん?」

 私の様子がおかしいことに気が付いたイェニーさんが気遣わしげに聞いてきた。
 こういうところは女性ならではの察しの良さなのだろう。

「だ、大丈夫……少し酔っただけですから。それよりも、私のことは呼び捨てで構いませんよ。敬語も不要です」

「……分かったわ。だったら、私のこともそうして。グレン様とは普通に話ししてるでしょう?」

「ええ、分かったわ」

 そう言えば……グレンとは最初に会った時から普通に話していたわ。
 今まであまり気にしてなかったけど。


「ところで本当に大丈夫?まだまだ先は長いと思うのだけど……」

 確かに、今からこんなでは私自身も心配になる。

 だけど解決策はある。
 なんと言っても私は薬師なのだから。

 私は鞄を漁っていくつかの瓶を取り出す。
 馬に揺られながらなので手元が覚束ないが、何とか瓶の中から丸薬を取り出す。
 そして、水筒の中にそれらを入れてよく降ってから呪文を唱える。
 暫くしてから蓋を開けると、湯気とともに爽やかな香りが漂ってきた。

「それは?」

「酔止めの薬……これを飲めば暫くは大丈夫」

 そして私は一口にそれをあおって飲み干した。

 香りと同じように清涼感のある味わいが口の中からお腹の中に広がると、込み上げるような気持ち悪さを洗い流してゆく。


「ふぅ……うん、大丈夫」

「へぇ……すごい効き目ね。『森の魔女の後継者』というのは確かみたい」

「あら、まだ疑ってたの?」

「ううん。改めて実感出来たってこと」

 取り繕ってるわけではなさそう。

 最初こそ警戒されたけど……サッパリした気性で話しやすいし、イェニーとは仲良くなれそうな気がした。










SIDE:グレン


 メリアとイェニーはどうやら打ち解けたようだ。
 やはり女性同士と言うこともあって話も合うのだろう。
 特務隊の面々とは最初こそ微妙な雰囲気になってしまったが、もう今は特に蟠りはなさそうなことにホッとする。




 さて、王都まではどんなに急いで馬を飛ばしても数日はかかってしまう。
 しかし……次のアグレイブの街に行けば王国騎士団が駐留している。
 そこで飛竜籠ドラゴンドラを手配してるはずなので、一気に空路で到達出来るはずだ。
 本当は往路にも使用したかったのだが……飛竜は数が少ないので手配に時間がかかる。
 その間出来るだけ時間を無駄にしないようにと馬でここまでやって来たのだ。


 馬は軽快に街道を走り抜ける。
 途中休憩も挟まなければならないが、順調に行けば日没前にはアグレイブに到着出来るか?
 そこで飛竜籠ドラゴンドラに乗り継いで……明日の早朝には王城に辿り着けるだろう。





 






SIDE:カール

 行程は順調だ。
 僕たちを乗せた馬はなかなかの駿馬らしく、それほど休憩しなくてもかなり速度を維持して走ってくれている。

 ふと、前を走るイェニーと……メリアを見る。
 気が付けば目で追ってしまうのだが……

 僕は後悔をしていた。
 任務が果たせないことへの焦りもあったのだろうが……あんな事を口走ってしまうとは。

 自分は自身が貴族であることに誇りを持っているが、そうでないものを見下したりはしない。
 ……そう思っていた。

 だから、あの言葉が自分の本心とは思いたくはないのだが……心の奥底で僕は平民を蔑んでいたのか?
 そう、思い悩んでいた。

 敬愛するグレン様の顔に泥を塗ってしまった事も悔やまれる。


 そして、あの『森の魔女』の後継者だというメリアと言う少女。
 歳は僕とそう変わらないだろうか?
 美しく着飾った貴族の女性を見慣れた僕の目から見ても、その美貌には惹き込まれそうになる程だ。

 彼女は自分たちの願いに対して「力を尽す」と言った。
 決して「必ず助ける」などとか、耳障りの良い言葉を言わなかった。
 それが却って彼女の誠実さを感じさせるのだった。

 そんな彼女に、ひどい言葉をぶつけてしまった。
 悔やんでも悔やみきれないが、彼女自身はあまり気にもしていないのが救いであり……しかし逆に自分の小ささを否が応でも突き付けられるものでもあった。



 だけど。

 僕の後悔の念など、与えられた任務からすれば些細なこと。
 今は無事に彼女を姫のもとまで送り届ける……その使命を全うすることに専念しなければ。
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