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神隠し
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いつもと変わらない授業。
だけどもうすぐ夏休み前の期末試験ということもあって、いつもよりは集中して真面目に受ける。
まあ、普段も真面目に受けてるし試験はそれほど心配してない。
自慢じゃないけど、僕は成績は割と良い方だ。
理系が得意で、文系もそこまで悪くはない。
因みに、レンヤは全教科がトップクラス。
スミカは得意教科と苦手教科がハッキリと分かれていて、文系が得意なんだけど、生物……それも植物限定で得意なのは流石た。
彼女は要領がいいので、苦手教科であっても平均点前後はキープしてくる。
だから僕たち三人は、ちゃんとやってれば夏休みが補習に充てられるという事態にはならないだろう。
たぶん。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そんなわけで……本日の授業も最後までしっかり受けて、今は放課後。
朝の『神隠し』の噂話が、今になってもあちこちから聞こえてくる。
平和だけど退屈な町で起きた事件が大きな話題となるのは仕方のないことだろう。
もちろん、みんな純粋に行方不明となった生徒を心配する気持ちもあるのだろうけど、どこか浮ついたような空気は隠しきれるものではない。
昨日と同じように、テキパキと帰り支度をすませたスミカが僕に声をかけてくる。
「ユウキ、行きましょう」
「レンヤのところ?」
「そう。これだけ噂になってるんだもの。きっと、あいつも私達を待ってるわ」
「そうだね……」
確かに、レンヤがこの手の話を聞き逃すはずはない。
昨日の出来事と関連があるかも知れないとなれば、なおのこと。
「じゃあ行こうか。……ファナ、もう少しそこにいてね」
『ワカッタ!ダイジョーブ!ファナ、イイコ』
僕の鞄から顔を出したファナに言うと、彼女はそう答えてくれた。
どうも授業の様子とかも観察しながら、さらに言葉を覚えたみたい。
という事で。
僕たち昨日に引き続き、レンヤがいるであろうオカルト研究会に向かうことになった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「来たか、二人とも」
オカ研の部室ではレンヤが待っていた。
それは予想通りだったんだけど……
「あれ……?お客さん?」
そう。
部屋の中にはレンヤ以外に、もう一人の人物がいたのだ。
ここに僕たち三人以外の人物が来ることはまれ……と言うか、今までなかったことだ。
「ああ、こいつは……」
「神永センパイに森瀬センパイ……!?あ、あの……僕は一年の『藤生斗真』って言います!」
レンヤが言いかけたのを遮るようにして、彼は自己紹介した。
どう言うわけか僕たちを見て興奮気味の様子。
「「よ、よろしく……」」
彼の勢いに若干引きながらも僕たちは挨拶を返す。
そして、なぜ彼がここにいるのかを尋ねた。
「藤生くんは何でこんなところに?」
「あ、僕のことは気軽に『トウマ』って呼んでください!」
「……『こんなところ』とは失礼な。お前たちだって会員なんだぞ」
いや、だって……ここってウチの学校の中で一番怪しげな場所だと思うよ?
自覚はないだろうけどさ。
と、それはともかく。
レンヤがトウマ君がここに来た理由の説明を始める。
「……『神隠し』の話は聞いただろ?」
「うん。凄い噂になってるよね」
「いやでも耳に入ってくるわ」
「一年の誰かが行方不明になったって……あ、もしかして?」
そこで僕はトウマ君を見ると、彼は複雑そうな表情で言う。
「……はい。消えてしまったのは僕の幼馴染です」
「消えた……」
彼のその言い方は、本当に眼の前から忽然と姿を消してしまった……というようなニュアンスが感じられた。
「警察には?」
「彼女の親が捜索願を出してるはずです。でも……たぶん警察にはどうすることもできないと思います。僕と、もう一人の幼馴染の友人と一緒にいて……ほんの少しだけ目を離しただけなのに……いなくなって気が付かないはずは無かったのに……!」
『彼女』ということは、彼の幼馴染は女の子なんだね。
そしてもう一人の幼馴染……僕たちみたいな関係だろうか。
その口ぶりからすれば、本当に一瞬の出来事だったんだろう。
「とにかく、警察も捜索してくれてるとは思うんですけど期待はできない。だから……こういう不思議な話に詳しい先輩がいるって聞いて、それで……」
「レンヤのところに来たのね」
「……はい」
それは藁をもすがるような思いだったんだろう。
たぶん彼自身も半信半疑に違いないはず。
でも……
僕たちはその話を聞いて、顔を見合わせ頷きあう。
これは、間違いなく昨日の出来事が関係しているに違いない……と。
「俺たちのところに来たのは正解かも知れないぞ」
「えっ!?何か知ってるんですか!?」
やはりそれほど期待していたわけではなかったらしく、彼はとても驚いている。
不可思議な現象を目の当たりにしたけど、それは自分の勘違いだったのかも……と自分を疑ったり、あるいはヒント位は掴めるかも……程度だったんじゃないかな?
でも、まさか『心当たりがある』と言われるとは思わなかったんだろう。
「ど、どこなんですっ!?あいつは……梨乃はいったいどこにっ!?」
「おわっ!?お、落ち着けって!!」
居ても立っても居られない様子でトウマ君が食らいついてくるのを、レンヤはどうにか落ち着かせようとする。
「……とにかく、その時の様子を詳しく聞かせてくれ」
「す、すみません……取り乱してしまって」
トウマ君は恐縮して謝るけど、その様子を見れば幼馴染がいかに大切なのかよく分かる。
僕もスミカやレンヤが目の前で消えてしまったら……彼と同じように取り乱すかもしれない。
「じゃあ話してくれ」
「はい。……と言っても、それほど話せる事もないのですけど。とにかく、昨日の放課後のことです。今は期末試験も近いから部活も休みで、久し振りに僕と梨乃……相原梨乃、それにもう一人の幼馴染の久賀武志の三人で帰ることになったんです」
それは何の変哲もない放課後の光景。
彼ら三人は学校を出て他愛のない話をしながら、普通に通学路を歩いていただけだった。
授業が終わってすぐという事だったので、たぶん僕たちがここで妖精の話をしている頃のことだと思う。
「せっかくだから少し寄り道してこうか……って、駅前に向かっていて。それで途中……ゲームの話題なんかでタケシと話が盛り上がって……ふと気付いたら、いつのまにかリノがいなくなっていたんです」
「途中で違う道に行ったとか……って事は?」
スミカが聞くと、トウマ君はその時のことを思い出すかのように目をつぶって考えるが……
「いえ。やっぱりそれはあり得ません。彼女は僕たちのすぐ隣を歩いてましたし、いくら話に夢中になってたとしても、いなくなれば直ぐに気が付いたはずです」
「……居なくなったのに気付いたのは、どの辺りだったんだ?」
今度はレンヤが質問する。
おそらく、ある予感を持って。
多分それは僕も同じ。
きっとトウマ君の答えは……
「あれは確か…………千現神社の近くだったと思います」
やっぱり!
予想通りの答えに、僕たちは思わず顔を見合わせた。
きっとトウマ君の幼馴染は、あの神社の周辺に現れた異界に入ってしまったんだ。
そして、今もなお行方が分からないということは……未だ異界に囚われたままなんだと思う。
朝から学校をにぎわせていた『神隠し』の噂話。
それは、僕たちがまだ不可思議な出来事の渦中にいる事を知らしめるものだったんだ。
だけどもうすぐ夏休み前の期末試験ということもあって、いつもよりは集中して真面目に受ける。
まあ、普段も真面目に受けてるし試験はそれほど心配してない。
自慢じゃないけど、僕は成績は割と良い方だ。
理系が得意で、文系もそこまで悪くはない。
因みに、レンヤは全教科がトップクラス。
スミカは得意教科と苦手教科がハッキリと分かれていて、文系が得意なんだけど、生物……それも植物限定で得意なのは流石た。
彼女は要領がいいので、苦手教科であっても平均点前後はキープしてくる。
だから僕たち三人は、ちゃんとやってれば夏休みが補習に充てられるという事態にはならないだろう。
たぶん。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そんなわけで……本日の授業も最後までしっかり受けて、今は放課後。
朝の『神隠し』の噂話が、今になってもあちこちから聞こえてくる。
平和だけど退屈な町で起きた事件が大きな話題となるのは仕方のないことだろう。
もちろん、みんな純粋に行方不明となった生徒を心配する気持ちもあるのだろうけど、どこか浮ついたような空気は隠しきれるものではない。
昨日と同じように、テキパキと帰り支度をすませたスミカが僕に声をかけてくる。
「ユウキ、行きましょう」
「レンヤのところ?」
「そう。これだけ噂になってるんだもの。きっと、あいつも私達を待ってるわ」
「そうだね……」
確かに、レンヤがこの手の話を聞き逃すはずはない。
昨日の出来事と関連があるかも知れないとなれば、なおのこと。
「じゃあ行こうか。……ファナ、もう少しそこにいてね」
『ワカッタ!ダイジョーブ!ファナ、イイコ』
僕の鞄から顔を出したファナに言うと、彼女はそう答えてくれた。
どうも授業の様子とかも観察しながら、さらに言葉を覚えたみたい。
という事で。
僕たち昨日に引き続き、レンヤがいるであろうオカルト研究会に向かうことになった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「来たか、二人とも」
オカ研の部室ではレンヤが待っていた。
それは予想通りだったんだけど……
「あれ……?お客さん?」
そう。
部屋の中にはレンヤ以外に、もう一人の人物がいたのだ。
ここに僕たち三人以外の人物が来ることはまれ……と言うか、今までなかったことだ。
「ああ、こいつは……」
「神永センパイに森瀬センパイ……!?あ、あの……僕は一年の『藤生斗真』って言います!」
レンヤが言いかけたのを遮るようにして、彼は自己紹介した。
どう言うわけか僕たちを見て興奮気味の様子。
「「よ、よろしく……」」
彼の勢いに若干引きながらも僕たちは挨拶を返す。
そして、なぜ彼がここにいるのかを尋ねた。
「藤生くんは何でこんなところに?」
「あ、僕のことは気軽に『トウマ』って呼んでください!」
「……『こんなところ』とは失礼な。お前たちだって会員なんだぞ」
いや、だって……ここってウチの学校の中で一番怪しげな場所だと思うよ?
自覚はないだろうけどさ。
と、それはともかく。
レンヤがトウマ君がここに来た理由の説明を始める。
「……『神隠し』の話は聞いただろ?」
「うん。凄い噂になってるよね」
「いやでも耳に入ってくるわ」
「一年の誰かが行方不明になったって……あ、もしかして?」
そこで僕はトウマ君を見ると、彼は複雑そうな表情で言う。
「……はい。消えてしまったのは僕の幼馴染です」
「消えた……」
彼のその言い方は、本当に眼の前から忽然と姿を消してしまった……というようなニュアンスが感じられた。
「警察には?」
「彼女の親が捜索願を出してるはずです。でも……たぶん警察にはどうすることもできないと思います。僕と、もう一人の幼馴染の友人と一緒にいて……ほんの少しだけ目を離しただけなのに……いなくなって気が付かないはずは無かったのに……!」
『彼女』ということは、彼の幼馴染は女の子なんだね。
そしてもう一人の幼馴染……僕たちみたいな関係だろうか。
その口ぶりからすれば、本当に一瞬の出来事だったんだろう。
「とにかく、警察も捜索してくれてるとは思うんですけど期待はできない。だから……こういう不思議な話に詳しい先輩がいるって聞いて、それで……」
「レンヤのところに来たのね」
「……はい」
それは藁をもすがるような思いだったんだろう。
たぶん彼自身も半信半疑に違いないはず。
でも……
僕たちはその話を聞いて、顔を見合わせ頷きあう。
これは、間違いなく昨日の出来事が関係しているに違いない……と。
「俺たちのところに来たのは正解かも知れないぞ」
「えっ!?何か知ってるんですか!?」
やはりそれほど期待していたわけではなかったらしく、彼はとても驚いている。
不可思議な現象を目の当たりにしたけど、それは自分の勘違いだったのかも……と自分を疑ったり、あるいはヒント位は掴めるかも……程度だったんじゃないかな?
でも、まさか『心当たりがある』と言われるとは思わなかったんだろう。
「ど、どこなんですっ!?あいつは……梨乃はいったいどこにっ!?」
「おわっ!?お、落ち着けって!!」
居ても立っても居られない様子でトウマ君が食らいついてくるのを、レンヤはどうにか落ち着かせようとする。
「……とにかく、その時の様子を詳しく聞かせてくれ」
「す、すみません……取り乱してしまって」
トウマ君は恐縮して謝るけど、その様子を見れば幼馴染がいかに大切なのかよく分かる。
僕もスミカやレンヤが目の前で消えてしまったら……彼と同じように取り乱すかもしれない。
「じゃあ話してくれ」
「はい。……と言っても、それほど話せる事もないのですけど。とにかく、昨日の放課後のことです。今は期末試験も近いから部活も休みで、久し振りに僕と梨乃……相原梨乃、それにもう一人の幼馴染の久賀武志の三人で帰ることになったんです」
それは何の変哲もない放課後の光景。
彼ら三人は学校を出て他愛のない話をしながら、普通に通学路を歩いていただけだった。
授業が終わってすぐという事だったので、たぶん僕たちがここで妖精の話をしている頃のことだと思う。
「せっかくだから少し寄り道してこうか……って、駅前に向かっていて。それで途中……ゲームの話題なんかでタケシと話が盛り上がって……ふと気付いたら、いつのまにかリノがいなくなっていたんです」
「途中で違う道に行ったとか……って事は?」
スミカが聞くと、トウマ君はその時のことを思い出すかのように目をつぶって考えるが……
「いえ。やっぱりそれはあり得ません。彼女は僕たちのすぐ隣を歩いてましたし、いくら話に夢中になってたとしても、いなくなれば直ぐに気が付いたはずです」
「……居なくなったのに気付いたのは、どの辺りだったんだ?」
今度はレンヤが質問する。
おそらく、ある予感を持って。
多分それは僕も同じ。
きっとトウマ君の答えは……
「あれは確か…………千現神社の近くだったと思います」
やっぱり!
予想通りの答えに、僕たちは思わず顔を見合わせた。
きっとトウマ君の幼馴染は、あの神社の周辺に現れた異界に入ってしまったんだ。
そして、今もなお行方が分からないということは……未だ異界に囚われたままなんだと思う。
朝から学校をにぎわせていた『神隠し』の噂話。
それは、僕たちがまだ不可思議な出来事の渦中にいる事を知らしめるものだったんだ。
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