62 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!
友達
しおりを挟む作戦会議を終えたエステルは後宮に帰るため、クレハを伴って王城の廊下を進む。
昨日の今日ではあるが、もうすっかり勝手知ったる場所と言う感じで、彼女の足取りは軽い。
そして後宮までやってきたのだが……
エステルは庭園に誰かいるのを見つけた。
その女性はエステルを見つけると真っ直ぐに近づいて来る。
エステルは彼女の姿には見覚えが無かった。
しかし……
(あれ……?この人、どこかで会ったような……)
豊かに波打つ白銀の髪に、青い瞳を持つ美しい少女。
歳はエステルと変わらないくらいか。
何故かとても嬉しそうな笑みを浮かべている。
「エステルちゃん!」
「え?……え~と」
自分の名前を呼ぶ少女に戸惑うが、近くで見てもエステルは彼女に見覚えが無い……のだが、やはりどこかで会ったような気がする。
どうも最近はそんなことが多い。
「エステル様、この方はアルド陛下の妹君でいらっしゃいます」
「アルド陛下の妹さん……?」
「ええ、王妹のマリアベルよ。はじめまして……ではないわよ?」
その名前、その喋り方、その声……そして、アルドの妹であると言う事から、エステルの記憶にある人物が思い浮かんだ。
「もしかして……マリアちゃん?」
「せいか~い!また会えて嬉しいわ!」
そう言って彼女はエステルの手を取って、本当に嬉しそうに言うのだった。
「えっと……マリアベルさま、って呼んだほうが良い……ですよね?」
「ううん、ぜひマリアって呼んでちょうだい。敬語もいらないわ。だって、エステルちゃんはお兄様の……」
「アルド陛下の?」
「……ううん、何でもないわ!」
マリアベルは、兄アルドがエステルに好意を持っている事を知っている。
直接本人から聞いたわけではないが、初対面の時の彼の態度や、エステルがここにいると言う事実から、それは間違いないと思っていた。
(あのお兄様が、女の子に好意を持つなんて事……これまででは考えられなかった事だもの。そんな貴重な人は絶対に逃しちゃだめ。でも、エステルちゃんはまだどう言う気持ちなのか分からないから、ここは慎重にいかないと。とにかく、お兄様との仲は私が取り持つわ!……それに、私ももっと同年代のお友達が欲しかったのよね)
などと、マリアベルは内心で慌ただしく考える。
「と言うことで、これからよろしくね!」
「うん!」
エステルとしても同年代の女の子の友達が出来るのはとても嬉しい事だ。
と、そんな話をしていると、そこに別の令嬢が現れた。
「ミレミレ~!」
「あ、エステル!それに……マリアベル様!?」
やって来たのはミレミレこと、ミレイユ・ミレーだ。
彼女は後宮にマリアベルがいることに驚く。
どうやら二人は面識があるようだ。
高位の貴族令嬢と王妹ならば、当然社交界で会う機会もあっただろう。
……そして『ミレミレ』にはもはや突っ込まない。
「ミレー侯爵令嬢、ごきげんよう」
「マリアベル様、ご無沙汰しております……どうしてこちらへ?」
「堅いことは言わないでね。ちょっとお友達に会いに来ただけだから」
マリアベルはエステルを横目に見ながらミレイユの問に答える。
「友達……って、エステルがですか?」
「そうよ」
「ともだち~」
数日前に会ったばかりで、友達になったのもたった今なのだが……ミレイユにはそんな事情は分からない。
なので……
(王妹殿下とも友達!?しかも凄く親しげだし!やっぱりエステルって只者じゃない……。わ、わたし、あんな口をきいてたけど大丈夫だったかしら?……ううん!私だってエステルと友達なんだから問題ないよね!?)
と、内心で慌てるが、何とか平静を取り繕うミレイユ。
「あなたもエステルちゃんと仲が良いみたいね」
「ミレミレは友達だよ!」
「え……あ、はい……と、友達……です」
しどろもどろになりながらもミレイユはそう答える。
……ちょっとデレるのが早すぎはしないだろうか?
「それじゃ、私ともお友達になってくれるかしら、ミレミレ?」
「え!?そ、そんな、畏れ多い……ってミレミレは……」
「いいじゃない、王妹なんて言ったって、そんな大層なものじゃないわ。せっかく歳も近いのだし、ぜひあなたとも仲良くしたいの。それに、もしかしたら将来のお義姉様になるかも……でしょ?」
マリアベルはミレイユの手を取りながら、気さくに言う。
そして、そこまで言われれば断ることなど出来ようはずもない。
「は、はい……私で良ければ……と、友達に……」
「敬語もいらないのだけど……それは追々ね」
「みんな友達だね~」
それから彼女たちは、仲良く後宮の庭園で暫く他愛のないお喋りに興じる。
そんな彼女たちの様子を、木立の陰から遠く眺めていた者がいた。
「ここは後宮……一見して綺羅びやかな、しかしその実ドロドロとした愛憎渦巻く女の園。……のはずなのだけど」
口元を扇で隠しながら呟く女性。
ここに居るということは、彼女も後宮入り候補の一人という事だろう。
「やっぱりあの娘……大したものだわ。でも……厄介でもある。さて、私はどう動くべきなのかしらね……?」
その声には感情は籠もっておらず……いや、どちらかというと、僅かに哀しい色が含まれているようにも聞こえた。
36
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~
黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。
待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金!
チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。
「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない!
輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる!
元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる