92 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!
レジーナ
「……どうだ?」
神殿から帰城したアルドは、執務室にてフレイに問いかける。
「シロ……だと思います」
「そうか。お前がそう判断するなら間違いないだろう」
何の話をしているかと言えば、先程までアルドと面会していた神殿の者たちに怪しい点は無かったか……という事である。
実は、アルドは神殿に赴く際に魔道具を持ち込んでいた。
それはエステルと念話をするためのペンダントとは別のもので、会話を録音するというものだ。
そして、今しがたフレイにその内容を聞かせた上での先の質問である。
フレイはある特殊な能力を持っている。
それは、会話の中に嘘が含まれているかどうかを見抜くものだ。
意識して会話に集中する必要があるが、僅かな感情の揺れなどから生じる声音の違いを読み取っている……とはフレイの弁である。
そしてアルドは、それがほぼ百パーセントの精度である事を知っている。
フレイが若くして宰相の地位まで上りつめたのは、アルドからの信頼が厚いということもあるが、その能力も理由の一つだった。
「ですが」
「ん?」
「レジーナ嬢は何か隠しているかもしれません」
「なに?どういうことだ?」
続けてフレイが告げた言葉に、アルドは怪訝そうな表情で聞き返した。
彼らはエステルの報告を聞いて、かつて起きた事件との関連性を疑った事から、それを知るであろう神殿の関係者との接触を図った。
もし黒幕に神殿の関係者がいて、アルドとの面会に現れたのなら、揺さぶりをかけることで尻尾を表すかもしれない。
そうでなければ捜査のために神殿関係者の協力を得ることができる。
そのような目論見の中、レジーナがその場に登場してきたのは全くの予想外のことではあったのだが……
「何を隠しているのかまでは分かりません。少なくとも彼女の言葉には嘘は含まれていなかったとは思いますが……」
会話の端々に、何らかの『後ろめたさ』のようなものを感じたのだとフレイは言う。
「うむ……念のため、彼女にも監視の目を付けておくか。もう後宮に戻ってきているはずだ」
「御意」
アルドの言葉を受けて、フレイは早速それを手配するために執務室を出ていった。
「……レジーナ様、どうされました?何だかお加減が優れないようですけど……」
「え?……いえ、私は大丈夫よ。心配してくれてありがとう、ミレミレ」
「……もう、レジーナ様までその名で呼ぶなんて」
そう苦言を呈するものの、ミレミレことミレイユ・ミレーは、もうその名で呼ばれることを諦めている様子。
「ふふふ……でも、本当は気に入ってるんでしょう?エステルさんからそう呼ばれる時、何だかんだで嬉しそうだもの」
「そ、そんな事は!……でも、あの娘どこ行っちゃったのかしら。昨日から姿が見えないんですよね……」
エステルが潜入作戦のため後宮からいなくなったのは、まだ昨日のことなのだが……ミレミレは少し彼女が見当たらないだけでも心配になってるらしい。
全くもってツンデレの鑑である。
「大丈夫ですわよ、あの方は……たくましいですから」
「……女の子に『たくましい』というのはどうかと思いますが。でも、まあ、そうですよね」
仮にも後宮に住まう美姫に対して言う言葉ではないと思いつつも、あの能天気で適当で元気いっぱいな彼女の事を思い浮かべると、しっくりくるのも確かだった。
「陛下も何だかお忙しいみたいだし、私も外に出かけようかしら……」
「あら、良いじゃないですか?せっかく陛下も許可されてるのですから。私達が籠の中の鳥でいる必要はありませんわよ。……出来ることなら、私も自由に羽ばたきたいものです」
そのレジーナの言葉には、何か含みをもたせるような声音をしていたが……ミレミレがそれに気がつくことは無かった。
あなたにおすすめの小説
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?