【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖と聖女の帰還

剣聖と聖女の帰還



 前王の屋敷を後にしたレジーナは、木立の間を抜ける道を王都に向かって歩いていた。
 だが……ふと足を止め、徐ろに後ろを振りむく。
 そして。

「そこの方、出てらっしゃいな」

 何者かに向かって声を掛ける。

 彼女の視線の先には、一見して誰の姿も確認できないが……
 しばらくレジーナが黙ったまま待っていると、観念したのか一人の男が木の陰から姿を現した。


「気付いておられたのですか……」

「いいえ、気配を読むなんて真似は私には出来ませんから。ですが、おそらく居るはず……と思いまして」

「……カマをかけられたって訳ですか。参ったな……ディセフさんに怒られちまう」

 彼の言う通り、レジーナは『そこにいるのは気付いているぞ』と、カマをかけたのだ。

 アルドは後宮の女たちに自由にして良いと言ったが、その動向を追わないとは言ってない。
 その立場を考えれば密かに護衛……あるいは監視が付いているはずと彼女は考え、そしてそれは正しかったわけだ。
 彼はディセフ配下の騎士であり、レジーナが予想した通り彼女を護衛・監視するために後を付けてきたのだ。


「それで……アルド陛下は私を怪しんでいるのですか?」

 神殿にアルドが訪れた際に、自分が会合に同席したのは彼にとって予想外のこと。
 そして、かつての事件の首謀者の娘であること。
 それらのことから、アルドは自分を……正確には父親を疑っていると、レジーナは考えた。
 だが……

「いえ、陛下は貴女あなた様を疑ってなどおりません。ただ……なにか後ろめたさのようなものを感じたとか。貴女を心配されてるのですよ」

 レジーナの言葉からそれを感じたのは、会話記録を聞かされた宰相フレイなのだが……ディセフの部下は、それは敢えて言わなかった。
 そればかりかアルドの心象を良くするようなフォローすらして見せる。


「陛下が私を……そうですか……。それで、貴方は私が父に会って何を話したのかは聞かないのですか?」

「それは私の役目ではありませんので」

 あくまでも自分は護衛兼監視である……と、彼は言う。


「……分かりました。では、ここでの話は私が直接、陛下にお話しましょう」

「では王城までは私めがお護り致しましょう、レディ」

 彼女が父親から聞いた話から予想した、事件の根幹。
 それは、かつての時も今回も、国外の勢力が『聖女』を欲している事にある。
 元大神官ミゲルは国外に追放されたが、何らかのパイプがまだ活きているのだとすれば……


 もしかしたらアルドたちは既に情報を押さえているかもしれないが、自分もなにか役に立たなければ……彼女はそう思う。
 それは、少しでも父親の汚名を雪ぎたいという気持ちによるものだったのかもしれない。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 一方その頃。
 ジスタルとエドナは、ついに王都エルネにたどり着いた。

 猛スピードで疾走していた二人だったが、流石にそのまま門を潜ったのでは悪目立ちしてしまうことは分かっていた。
 なので、街のかなり手前で減速し、普通に歩いて市街に入っている。



「ようやく着いたわ。……久し振りだけど、雰囲気は変わってないわね」

「そうだな。細々とはいろいろ変わってるんだろうが……」

 二人はかつて住んでいた街を懐かしそうに眺めながらメインストリートを歩いていく。



「さて……取り敢えず王都には着いたが、これからどうする?」

「え?もちろん王城に突貫するんでしょう?なんでエステルが後宮なんかにいるのか……王に聞かないと」

 何を当たり前のことを……という風にエドナは言うが、それを聞いたジスタルは額に手を当ててため息をつきながら返す。

「お前な……いきなり城に行ったって、王に会えるはずがないだろう。門前払いがオチだぞ」

「そう?でも、あなたの顔が効くんじゃないのかしら?」

「俺が王城務めだったのは、もう十五年以上も前の話だし、クレイでは王に取り次ぐなんて事は出来ないだろうし……」

 と、そこまで言いかけて、彼は何かを思い出した様子で続けた。

「……いや、確か今の騎士団長はディラックのヤツだったな。俺の名を出せば取り次いでくれる……かな?」

「あなたのお弟子さんだったかしら?」

「そんな大層なもんじゃないさ。少しだけ剣の手ほどきをしてやっただけだ。まあ、なかなか才能のあるやつだったから、それだけでもかなり伸びたがな」

 ジスタルは与り知らぬ事だが、現騎士団長ディラックが剣聖の弟子であることは広く王都民に知れ渡っている。
 ギデオンがクレイに話した通りに。

 彼らは記憶を頼りに街路を進み、王城を目指す。




 そして、かつての事件の重要人物たちが王都に集結したことは、まだ誰も知る由もなかった。

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