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13. ノスタルジーにひたひた
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「すみません!アナスタシアさんはいらっしゃいますか」
アナスタシアは声がした方にのんびりと向かった。どうやらダニエルがよく来る場所としてそこそこ認知されているらしく、たまにダニエルはここにいないかと職場の方々が尋ねにくることがあるのだ。今回もそれだろうと当たりをつけて外に出た。
「えっと、どちら様?」
そこには騎士風のいかつい人間ではなく、制服姿の男の子がいた。短めの黒髪ではっきりとした眉毛が特徴的で全体的に大人っぽい顔立ちではあるが、成長に体重が追いついていない状態で、すらっと背は高いが、線が細い。しなやかな竹のようだ。ラーマーヤ魔法学校の制服を身に付け、腕には五年生を示す青のリボンをつけている。アナスタシアはその学校の出身であるため、一目で分かった。
「ダニエルの弟のジョージです。兄がお世話になっています」
「いいえ、私の方こそいつもお世話になっています」
たしかにこの子は目元のあたりなどどことなくダニエルに似ているとアナスタシアは感じた。
「本当ですか?いつも兄がここにお邪魔しているようで……、迷惑だと思うのですが」
「そんなことはないよ。ダニエルさんは昼食やら何やら作ってくださるし、掃除もやってもらってて……、迷惑をかけているのは私の方だね」
「……そうなんですか」
ダニエルの弟、ジョージは申し訳なさそうに頭をかいた。ジョージは兄が気に入った相手にはとことん尽くすタイプで、相手が嫌がっても気にせずスルスル身の回りのことをやる人間だと知っていた。パーソナルスペースをぬるぬる掻い潜り、気がついたらそばに置いてしまっているという状況に持ち込むことが大得意であった。
断っておくが、今までダニエルに特別な恋人はいたことはなかった。しかし、これまで、気に入った友人達や家族には世話をガンガン焼いている。
「今は夏期休暇?」
「はい」
「私もラーマーヤ魔法学校の出身なんだ」
「えっ?そうなんですか」
「うん、……三年前に卒業したから、ちょっと被ってるんじゃないかな」
アナスタシアはジョージの腕の青いリボンを指差した。
「じゃあ……、俺が二年の時に最上級生だったんですね」
「そうなるかな。さすがに三年じゃあまり変わらないと思うけれど……。学校はどんな感じ?まだ、魔法禁止の山登りはしてるの?」
「ええ、してますよ。この前、後輩達と行きました」
アナスタシアは懐かしそうに学生時代を思い起こした。
「四年の時だっけ?生物の時間でショウジョウバエ育ててる?」
「ええ、独特のひっどい臭いでしたが、最終的にはなんか愛着湧きますよね」
「わかる。代々見守ってるからね……」
ショウジョウバエは飼育が比較的安易で、ライフサイクルが短いため、突然変異の生物実験によく使用される。ラーマーヤ魔法学校では、この実験を必修授業で行っていた。
「そういえば、実験室みたいなところにある穴っていつからあるんですか?」
「あれは、その、いつだっけ、ニ年か三年の時に変換魔法やろうとしたら、ちょっと失敗して……。私が爆発させてあけました」
「あなたがあけてたんですか……」
ジョージはぱっと見アナスタシアに対して、大人しそうな印象を受けていたが、結構ファンキーなのかなと思った。
「学生時代から魔術に興味があったんですか?」
「うん、おもしろいし、性に合ってたからね。それに、ここで働きたいなぁって思ってたし」
「夢が叶ったんですね」
ジョージはうらやましそうにアナスタシアを見た。
「ジョージくんの夢は?」
「兄や父のように立派な騎士になりたいんです」
「そう、素敵な夢だね」
「ですが、二人のような武芸の才はないので……。魔術方面を極めたいと考えています」
余談だが、ダニエルはラーマーヤ魔法学校の出身ではない。この学校は魔法学校と銘打っている通り、魔術ごりごり極めたい人を募集している。実際には、魔術極めたい勢二割と言った悩ましい状態だ。残りの生徒は、魔術の才能あるから入学しなさい勢三割、公爵家などいいとこの生徒と繋がりたい四割、魔術で遊びたいパッパラパー勢一割という意識感覚だ。ダニエルは武芸の才能あるから入学しなさい勢のため、騎士養成に関する学校の出身である。
「卒業生のよしみで困ったことがあれば相談してね。できることなら力になるよ」
「ありがとうございます」
ジョージはアナスタシアに好感を持ち、この人が義理の姉になったら……と想像を膨らませた。
「その、兄は結婚しても俺のために尽くせとか、仕事辞めろとか言わないと思いますよ」
「……えっと、そうなんだ」
アナスタシアは突然なんだろうと思った。
「あの、兄は結婚していませんし、見合いなども受けていません。両親に憧れて好きな人と結婚したいと考えているみたいです」
「あー、うん。そうなんだ……?」
「はい、そうなんです」
では、兄をよろしくお願いしますとジョージは帰って行った。
アナスタシアはジョージは何しに来たんだろうと少しの間考えた。
アナスタシアは声がした方にのんびりと向かった。どうやらダニエルがよく来る場所としてそこそこ認知されているらしく、たまにダニエルはここにいないかと職場の方々が尋ねにくることがあるのだ。今回もそれだろうと当たりをつけて外に出た。
「えっと、どちら様?」
そこには騎士風のいかつい人間ではなく、制服姿の男の子がいた。短めの黒髪ではっきりとした眉毛が特徴的で全体的に大人っぽい顔立ちではあるが、成長に体重が追いついていない状態で、すらっと背は高いが、線が細い。しなやかな竹のようだ。ラーマーヤ魔法学校の制服を身に付け、腕には五年生を示す青のリボンをつけている。アナスタシアはその学校の出身であるため、一目で分かった。
「ダニエルの弟のジョージです。兄がお世話になっています」
「いいえ、私の方こそいつもお世話になっています」
たしかにこの子は目元のあたりなどどことなくダニエルに似ているとアナスタシアは感じた。
「本当ですか?いつも兄がここにお邪魔しているようで……、迷惑だと思うのですが」
「そんなことはないよ。ダニエルさんは昼食やら何やら作ってくださるし、掃除もやってもらってて……、迷惑をかけているのは私の方だね」
「……そうなんですか」
ダニエルの弟、ジョージは申し訳なさそうに頭をかいた。ジョージは兄が気に入った相手にはとことん尽くすタイプで、相手が嫌がっても気にせずスルスル身の回りのことをやる人間だと知っていた。パーソナルスペースをぬるぬる掻い潜り、気がついたらそばに置いてしまっているという状況に持ち込むことが大得意であった。
断っておくが、今までダニエルに特別な恋人はいたことはなかった。しかし、これまで、気に入った友人達や家族には世話をガンガン焼いている。
「今は夏期休暇?」
「はい」
「私もラーマーヤ魔法学校の出身なんだ」
「えっ?そうなんですか」
「うん、……三年前に卒業したから、ちょっと被ってるんじゃないかな」
アナスタシアはジョージの腕の青いリボンを指差した。
「じゃあ……、俺が二年の時に最上級生だったんですね」
「そうなるかな。さすがに三年じゃあまり変わらないと思うけれど……。学校はどんな感じ?まだ、魔法禁止の山登りはしてるの?」
「ええ、してますよ。この前、後輩達と行きました」
アナスタシアは懐かしそうに学生時代を思い起こした。
「四年の時だっけ?生物の時間でショウジョウバエ育ててる?」
「ええ、独特のひっどい臭いでしたが、最終的にはなんか愛着湧きますよね」
「わかる。代々見守ってるからね……」
ショウジョウバエは飼育が比較的安易で、ライフサイクルが短いため、突然変異の生物実験によく使用される。ラーマーヤ魔法学校では、この実験を必修授業で行っていた。
「そういえば、実験室みたいなところにある穴っていつからあるんですか?」
「あれは、その、いつだっけ、ニ年か三年の時に変換魔法やろうとしたら、ちょっと失敗して……。私が爆発させてあけました」
「あなたがあけてたんですか……」
ジョージはぱっと見アナスタシアに対して、大人しそうな印象を受けていたが、結構ファンキーなのかなと思った。
「学生時代から魔術に興味があったんですか?」
「うん、おもしろいし、性に合ってたからね。それに、ここで働きたいなぁって思ってたし」
「夢が叶ったんですね」
ジョージはうらやましそうにアナスタシアを見た。
「ジョージくんの夢は?」
「兄や父のように立派な騎士になりたいんです」
「そう、素敵な夢だね」
「ですが、二人のような武芸の才はないので……。魔術方面を極めたいと考えています」
余談だが、ダニエルはラーマーヤ魔法学校の出身ではない。この学校は魔法学校と銘打っている通り、魔術ごりごり極めたい人を募集している。実際には、魔術極めたい勢二割と言った悩ましい状態だ。残りの生徒は、魔術の才能あるから入学しなさい勢三割、公爵家などいいとこの生徒と繋がりたい四割、魔術で遊びたいパッパラパー勢一割という意識感覚だ。ダニエルは武芸の才能あるから入学しなさい勢のため、騎士養成に関する学校の出身である。
「卒業生のよしみで困ったことがあれば相談してね。できることなら力になるよ」
「ありがとうございます」
ジョージはアナスタシアに好感を持ち、この人が義理の姉になったら……と想像を膨らませた。
「その、兄は結婚しても俺のために尽くせとか、仕事辞めろとか言わないと思いますよ」
「……えっと、そうなんだ」
アナスタシアは突然なんだろうと思った。
「あの、兄は結婚していませんし、見合いなども受けていません。両親に憧れて好きな人と結婚したいと考えているみたいです」
「あー、うん。そうなんだ……?」
「はい、そうなんです」
では、兄をよろしくお願いしますとジョージは帰って行った。
アナスタシアはジョージは何しに来たんだろうと少しの間考えた。
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