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No.02

〜学園祭⑨〜

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学園祭も残りは後夜祭だけ。
後夜祭では、皆好きな人と踊っている。



私も結城さんと踊りたかったな……。



「はぁ……」
「よぉー広瀬!」



私の前に、火山兄妹が現れる。



「何のご用ですか?」
「冷たい事言うなよ!俺らの仲じゃん?」
「どうせ、踊る相手いないじゃん?俺らが相手してやるよ」



火山兄妹がそう言ってくる。
火山兄妹と誰が踊るもんですか!
冗談じゃない。



「私、友達に用があるんで、失礼します」



私は逃げるように、火山兄妹の前から立ち去る。
彼らがいる限り結城さんとは、踊れない。
結城さんと踊れば、みんなが危険な目に合う。



「私は最低だね……」



結城さんの気持ちを知っているのに、それなのに結城さんを振ることもしないなんて……。



「結城さん……」



結城さんの名前を呟くと、涙が流れてきた。




「ごめん。悠奈ちゃん」


私に話しかけてくるのは、飯田義大いいだよしひろ



義兄は火山兄妹に付き従う私の従兄弟。



「謝らないで……」
「でもっ」
「わかってるから……」



お兄ちゃんは、私の為に火山兄妹に付き従っているのは知ってる。
だから、謝らないでよ。
お願い。



謝られたらどうしたらいいかわからなくなるから。
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