好きって言ってみなよ?

葉月カイト

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日常生活編

18

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『由貴、久しぶり。
晶くんだけど、とりあえず体調がよくなったし声も出るようになったから』



由貴は心配してメールをしてきてくれていた。

だから。
知らせておこうと思ってメールした。




次の日曜日。




コンコン




「はい?」
『俺、由貴だけど』



さっきまで穏やかにしていた、晶くんが凄い剣幕でドアを開ける。





「何しに来やがった?」
「晶が心配だから見にきた」
「俺は猪熊家の人間お前らに心配されるほど落ちぶれちゃいない!」
「晶くん」
「あ"?」
「ね。由貴がそういうつもりで来たんじゃないってわかるでしょ?」
「けどっ」
「確かに由貴は猪熊家の人間だよ?でも由貴はなんの関わりないよ?まだ大学生なんだから」
「俺はただ晶が入院してるって聞いたから見にきたんだ」



大声で話してたのがいけなかったのか




『おい!ここにあの猪熊家の三男が来てるらしいぞ?』



まずいな。





「由貴くん!」
「颯太!?」


この男は橘コーポレーションの4男。




「陸から聞いて急いで来たんだよ?」
「じゃなくて!まだ研修中じゃ」
「大丈夫だから、ねっ?」



この男はまっすぐ晶くんを捉えて言い放った。




「ね、今由貴くんを責めてたよね?何で?」
「それはっだって猪熊家が手切らなきゃ父さんたちは!」



彼は晶くんの胸ぐらをつかんだ。



「由貴くんとこのお父さんたちがキミのとこと手を切らなかったら本当に経営難にならなかったの?」
「え……」
「そんなことないのに、そんな保証ないのに何でそんなこと言うの?」
「だって!」
「由貴くんはさ、キミより年上なのに何その口の聞き方」
「別にいいだろう!?だいたい由貴の母親はどこの馬の骨かからないんじゃないか!由貴の父親の不倫相手だったみたいだし?」



晶くん。
それは言っちゃダメなことだよ。



「晶くん!」
「なんだよ!?」
「子どもは親を選べないんだよ?」
「だからなんだよ!」
「……い!」
「え?」
「母さんはどこの馬の骨かわからない人じゃない!母さんのこと悪く言うなよ!」
「由貴くん。いいから、大丈夫だから」
「晶くん!」



晶くんの由貴に対する言い方が許せなくて俺は晶くんを叩いていた。



「キミは少し頭冷やしなさい!」
「ゴホッ」
「由貴くん!?」
「はぁ、はぁ」
「由貴。どうし……」



すると由貴の隣にいた彼に手を振り払われた。



「触るな!」
「待って。病室1つ空けてもらうから」



由貴を抱えたまま彼は病室へ向かう。



多分。
あの子は由貴の彼氏だと思う。
いいなぁ。
うらやましい………。
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