工藤くん、恋のバグは直せますか? 〜一夜の過ちから、同期の溺愛が始まりました〜

有明波音

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案外、いつも通り?

6.

 頭の中で葛藤するも、結局私はベッドから起き上がり、ボストンバッグに入れっぱなしになっていたアレを抜き出した。

 工藤に指摘された時は、顔から火が出るくらい恥ずかしかったというのに、あの後も捨てることなくちゃんとバッグに入っている。


(まぁ、すぐ終わらせれば、バレないよね)


 都合の良いように考えて、おもちゃと共にベッドに戻った。
 工藤とは確かに偽装婚約という契約を結んだけれど、それ以外は至って普通で、何もかもがいつも通りだった。まるで、あのワンナイトなんて無かったかのように。
 
 ショーツの上から、振動するおもちゃを当てて思い出すのは、先ほどのTLコミックよりも工藤との一夜だった。


 「ワンナイトってことで良い?」なんて言ったのに、一番忘れられていないのは私の方だ。

 あの日からしっかり線引きしている工藤を見ていると、彼にとっては何てことはない一夜だったんだろうなと思う。

 偽装婚約も、工藤に多少メリットがあるとはいえ、伊吹にしつこくされて私が困っていたというのが大きい。


(……気持ちいい、けど、やっぱり物足りないかも……)


 今だけはもやもやとした気持ちを感じないよう、ぐっとおもちゃを押し込むも、この前の気持ち良さには及ばなかった。

 目の前に広がる工藤の胸板や弾む息遣い、触れ合うたびに感じる熱、優しく触れる手つきに愛おしむような視線。

 そんなことを思い出していると、だんだんと息が上がってきた。気持ち良さに合わせてぐぐっと押せば、軽くイってしまった。


(全然物足りないけど、やっぱりこれくらいにした方が……)


 そう思っておもちゃの電源を切った時、足元の方からここにいないはずの人の声が聞こえた。


「もう終わり?」


 その声にびくっと反応してしまい、それでも往生際悪く狸寝入りをしようかと回らない頭で考える。寝たふりをしたところで、掛け布団を引き剥がされるんだろうけど……。


「青山ー、聞いてる?」
「う、はい……」


 もう無理、恥ずかしすぎて死ぬ。
 比喩じゃなくて、本当に穴があったら入りたい。一人で気持ち良くなっていた所を、工藤に見られるなんて……。


(……こんなに恥ずかしい思いをすることって、ある??)

 
 寝たふりなんて通用しないと分かれば、大人しくベッドから起き上がる。視線の先の工藤はいつものパーカー姿だというのに、なぜか妖艶に見えて。口元では笑みを作りながら、真っ直ぐこちらを見据えていた。


「あ、えーっと、おかえり?」
「ん、ただいま。つーか、なんで一人で気持ち良くなってんの?」
「だ、だって……! 今日は寝付けなくて、だんだんそういう気分になっちゃって……それで」
「ふーん?」


 工藤がそのまま近づいてきて、ベッドに腰を下ろす。スプリングの軋む音が、静寂の中で一際大きく聞こえた。
 そして、彼は意地悪く言うのだ。


「この間のと、このおもちゃ、どっちが気持ち良かった?」
「……っ! それは……!」


 気付けば、さっきまで私の手にあったはずのおもちゃは、工藤の指に挟まれていた。

「で、どうなの?」

 そう言って、おもちゃを指先で弄ぶように、角度を変えながらじっくり眺めている。工藤は言葉を切り、私が答えるのを黙って待っていた。


 『工藤としたセックスの方が気持ち良かった』なんて、恥ずかし過ぎて、とてもじゃないけど言えない。

 でも、性格的に嘘をつけないし、工藤には絶対バレる。私の葛藤が手に取るように分かるのか、彼は含みのある笑みを溢して言った。


「青山はもうこの前の気持ち良さを忘れてるみたいだし、もっかい確認するか」
「え……? えぇっ!? わ、忘れてないよ!!」
「ほ~~。忘れてないけど、俺じゃなくておもちゃで発散してるってわけ? なんか妬けるな~」
「おもちゃに嫉妬しなくて良いからっ!」


 そんな抵抗も虚しく、覆い被さるような形で工藤に押し倒されていた――。



***
感想 4

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