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第2話:ここから始まる第二の人生!
1.
しおりを挟む公爵家に戻ってからは、いつでも出ていけるよう急いで支度を整えた。
その後、情報を聞きつけたお父様はカンカンに怒っていた。それも私に対してではなく、クリス王太子に対して。
前日、お父様は「王太子から『婚約破棄』などされたら公爵家の恥だからな」なんて言っていたものの、本当は娘が可愛くて仕方がないのだ。
「全く、殿下は……こんなに可愛いうちの娘を傷ものにしてくれて。絶対許さん!」
「お父様、公爵家のお役に立てず申し訳ございません。着の身着の儘、出ていけと言われないだけ有難いですわ」
「そんなこと、私が言うはずないだろう! 悪いのはあのポンコツ王太子だ。ったく、何も聖女と結婚しなくてもいいだろうに。
そうでもしないと威厳が保てないくらいには、今の王家に対する支持率が下がっているのだろうな」
「フフ、ポンコツ王太子だなんていけませんよ。でも、王家に対する支持率はお父様の仰る通りだと思います」
王家の事情も鑑みると、これが最善なのだろう。私のような貴族の娘一人の体裁など、とても小さなことなのだ。
それでも、まだお父様は怒りが治らない様子だった。昔からとにかく溺愛されていたので、なんとなくこの展開は予想出来ていたのだが……。
しかしこのままでは公爵家の体裁が悪い。事態が落ち着くまで、私は王都の外れの小さな街に住む場所をあてがわれた。
私一人ではなく、侍女のケイティも連れていって良いと言われホッとする。「何かあった時のために」と公爵家で保有している魔石や魔道具も、一部持たせてくれた。
次の日の朝。お父様、お母様、レオンを始め、エンフィールド家の使用人達が見送りのために並んでいた。
「お父様、お母様、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。暫くの間、行って参ります。レオン、エンフィールド家のことは任せましたよ」
「エリアナ……何もこんなに急いで行かなくても」
「いえ、何ごとも早い方が良いですわ」
「そうだエリアナ、調理器具まで沢山持っていくと聞いたが、お前は料理をするのか?」
「はい! 以前からずっと料理がしたいと思っていたんです。当分はケイティと私の二人だけですし、私も出来ることは全てやりますわ」
(本当は、前世の食事を再現して、美味しいものを食べたいだけなのだけど……)
私の発言が『健気なお嬢様』とでも見えたのか、涙ぐんでいる使用人までいる。本来は使用人がやるようなことを、令嬢の私がやると言うのが可哀想なのかもしれない。
でも、前世では炊事・洗濯といった家事全般が好きだった私にとっては何ら苦ではなかった。
「それでは、行って参ります!」
私とケイティは馬車に乗り、目的地に移動し始めた。馬車の中で、私はケイティに話しかける。
「ケイティ、あなたまで巻き込んでしまってごめんなさいね。きっとこれまで以上に苦労をかけると思うの……」
「いえ、とんでもないです! むしろお嬢様とご一緒できて、私はとても嬉しいんですよ! それに、殿下がまさかお嬢様に婚約破棄をなさるなんて、もうずっと腹が立って仕方がないです!」
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