婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

有明波音

文字の大きさ
36 / 73
第11話:魔獣退治と混浴事件

2.

しおりを挟む

 そう言われて後方に下がると、カイ様が魔力を集めるような姿勢を取り始めた。そして、高速の風魔法をビュンビュンと何度も魔獣に叩きつける。

 しかし、相手の体があまりにも大きいからか、なかなか微動だにしない。


「やはりダメか。エリアナ! 申し訳ないが、君にも協力してもらいたい!!」

「えぇ! もちろんです! カイ様、どのような作戦でしょうか!?」

「君と私の水魔法であいつの体をドロドロにして、溶けた所を君の火魔法で砂状にする! その後は固まる前に、一気に私の風魔法で飛ばすんだ!
 あとケイティ、君の土魔法で、瞬時に土が固まるのを阻害できるか?」

「はい! お任せください!!」


 ここからはカイ様の作戦で、三人の連携プレーで戦うことになった。

 アンディは雷魔法の使い手なので、土属性の魔獣とは相性が悪い。必要となれば接近戦で戦えるよう、剣を構えていた。


「よしっ!ではいくぞ、まずは水魔法!!」
「はい!!」


 私は集中して水魔法を放出するイメージをする、カイ様と息を合わせるように、魔獣に向けて一気に放出した。

「グァァァァァァァッッ!!」

 土の塊だった魔獣が一気にドロドロに溶けていく。それだけでは敵の体を飛ばせないので、次は私の火魔法の出番だ。


 後天的に身につけたのでまだコントロールに自信はないが、自分の中の別の引き出しを開けるようなイメージをする。

 燃え盛る炎をイメージ出来たら、次は火魔法を一気に放出した。


 ドロドロになった泥が、サラサラの砂状に変化していく。まだ体を繋ぎ合わせようともがく魔獣に対し、ケイティの土魔法でなんとか押さえつけた。
 ここからは、カイ様の風魔法で一気に畳み掛けていく……!


「カイ様!!」
「あぁ、任せてくれ!」


 再度、高速の風魔法を魔獣に叩きつける。私達も立っているのがやっとで、周りの木々の葉がどんどん飛ばされていった。

 そして、魔獣は断末魔の叫びを上げながら、辺りに消えていった。先ほどまで魔獣がいた場所には、額に載っていた魔石がポトンと落ちている。


「カイ様! 凄い威力でした!!」

「あぁ、でも事前に調査していた魔獣より、一回り小さいような気がするな……」

「えっ!?! あれでもですか? かなり大きかったと思うのですが」

「今倒した魔獣もかなり大きかったが……アンディはどう思う?」

「確かに、事前に聞いていた目撃情報とは少し異なる気がしています」

「そんな……」


 せっかく倒したと思っていたのに、まだ気が抜けないなんて……。次こそは魔法使いのニール様が倒してくれないだろうか、なんて思ってしまった。


「ひとまず、一旦温泉宿に戻ろうか。あ、特に二人は王太子達がくる前に戻って、隠れた方が良い。鉢合わせてしまったら気まずいだろう? 先ほどの魔獣退治の件は、私とアンディから説明しておくから」

「ありがとうございます! 確かに、“エリアナ”としてここで再会するのは色々とまずいですね。急ぎましょう!」


 そうして、私たちは急いで元いた温泉宿に戻った。その後すぐ、王太子一団がやってきても問題ないよう、『侍女・オフィーリア』に変装しておいた。

 ケイティも前日と同じような変装をして、突然誰かと出くわしても問題ないようにしておいたが、私たちは運良く、王太子と鉢合わせることがなかった。



***

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されましたが、辺境で最強の旦那様に溺愛されています

鷹 綾
恋愛
婚約者である王太子ユリウスに、 「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄を告げられた 公爵令嬢アイシス・フローレス。 ――しかし本人は、内心大喜びしていた。 「これで、自由な生活ができますわ!」 ところが王都を離れた彼女を待っていたのは、 “冷酷”と噂される辺境伯ライナルトとの 契約結婚 だった。 ところがこの旦那様、噂とは真逆で—— 誰より不器用で、誰よりまっすぐ、そして圧倒的に強い男で……? 静かな辺境で始まったふたりの共同生活は、 やがて互いの心を少しずつ近づけていく。 そんな中、王太子が突然辺境へ乱入。 「君こそ私の真実の愛だ!」と勝手な宣言をし、 平民少女エミーラまで巻き込み、事態は大混乱に。 しかしアイシスは毅然と言い放つ。 「殿下、わたくしはもう“あなたの舞台装置”ではございません」 ――婚約破棄のざまぁはここからが本番。 王都から逃げる王太子、 彼を裁く新王、 そして辺境で絆を深めるアイシスとライナルト。 契約から始まった関係は、 やがて“本物の夫婦”へと変わっていく――。 婚約破棄から始まる、 辺境スローライフ×最強旦那様の溺愛ラブストーリー!

寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~

紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。 「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。 だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。 誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。 愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

誰からも食べられずに捨てられたおからクッキーは異世界転生して肥満令嬢を幸福へ導く!

ariya
ファンタジー
誰にも食べられずゴミ箱に捨てられた「おからクッキー」は、異世界で150kgの絶望令嬢・ロザリンドと出会う。 転生チートを武器に、88kgの減量を導く! 婚約破棄され「豚令嬢」と罵られたロザリンドは、 クッキーの叱咤と分裂で空腹を乗り越え、 薔薇のように美しく咲き変わる。 舞踏会での王太子へのスカッとする一撃、 父との涙の再会、 そして最後の別れ―― 「僕を食べてくれて、ありがとう」 捨てられた一枚が紡いだ、奇跡のダイエット革命! ※カクヨム・小説家になろうでも同時掲載中 ※表紙イラストはAIに作成していただきました。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

処理中です...