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第17話:いざ、魔窟の最深部へ
3.
しおりを挟む笑いながらアンジェロ様が通訳をしている。騎士団長のレオナルド様がおにぎりを持って、たまたま私の近くに腰を下ろした。
「エリアナ様、食事の準備までありがとうございます。こちらの食べ物は何と言うのですか? ライスを固めたように見えるのですが」
「はい、そちらはおにぎりですよ。中に何かしら具材を入れています」
「ほう、私のは何が入っているか楽しみですね。エリアナ様の作るものを食べると、なぜか魔力が回復するような気がするのですが……不思議ですよね」
レオナルド様が、にこりと爽やかな笑顔を向ける。さすが攻略対象キャラ、笑顔が眩しい……。
しかもこの服の下には鍛え上げられた筋肉と分厚い胸板があるのか……と前世のスチルを思い出していると、カイ様が割って入ってきた。
「エリアナ、私という恋人がいながら浮気しているのかい?」
「カイ様! そういう訳では……カイ様は嫉妬深いのですか?」
「あぁ、カイ殿とエリアナ嬢は恋仲にあったのか、これは失礼した」
「レオナルド様。今はご飯の感想を聞いていただけですし、謝る必要は……」
「カイ様、あまり嫉妬深いとエリアナ様に嫌われますよ?」
サッとアンディが割って入って、主人であるカイ様を諌める。カイ様は子供のようにムスッと拗ねた顔をした。
「エリアナに嫌われたら、私は生きていけないな」
「もう、カイ様ったら。レオナルド様、先ほど戦ったばかりですし、いっぱい食べてくださいね?」
「えぇ、有り難く頂きますね」
「エリアナ、私にもくれる?」
「はい、カイ様。もちろんですよ。この唐揚げはいかがですか?」
そう言ってフォークに刺した唐揚げを差し出す。カイ様は『そうじゃない』とでも言うように、受け取ろうとしない。口をぱかっと開けて、唐揚げがやってくるのを待っている。もしかして……
「もしかして、食べさせてほしいのですか? もう、カイ様は甘えん坊ですね」
仕方ないなぁ、と思いつつ、ついつい私も甘やかしてしまう。
皆平静に見えて、実際は濃い瘴気と連続の退治で、体力だけでなく精神的にもすり減っているはずだ。もうすぐ魔窟の最深部にも到達するし、その前に少しでも休むことは大事だと思っていた。
「カイ様、そろそろ最深部ですね。魔獣の王はどのような姿なのでしょうか……確か、全ての基本属性の魔法が使えるのはもちろん、闇魔法も使えるのですよね?
私、闇魔法を実際に見るのは初めてかもしれません」
「そうだな……魔獣の王が現れるのは数百年に一度で、ましてやマリン帝国は常に聖女がいるから、もはや伝説の存在に近いな」
「そうなのですね。魔獣の王が伝説に近しくなっても、やはり聖女の存在が重視されているのですね」
「あぁ、それはどこの国でも共通していると思う。今回キアラ王国では聖女を異世界から召喚したが、我々の国では国民から生まれることも多いんだ。昔は異世界から召喚したこともあったようだけど」
「まぁ、そうなのですね。国民から、光魔法が扱える聖女が生まれることもあるのですね」
「あぁ、しかもそれは貴族に限らない。孤児院出身の女性が聖女になったこともあるんだ」
「もしかしたら……」
私はマリア様の手前、声を顰めて会話を続けた。
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