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第一章 吸血鬼の王
刀
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「ぐはっ!」
「動きが単調で分かりやすすぎる。その程度では俺に触れることすらできないぞ」
「くそ、いつかぜってぇ泣かす」
今日も適合率アップ兼、戦闘訓練だ。俺自身が何か成長している気がしないが、フリードに対するヘイトは着々と稼がれてきている。
「避けんじゃねぇ、よっ!」
カウンター覚悟に懐に入り込み、無理に1発入れようとする。すると、俺のパンチが見事炸裂したのだが、よくよく見ると相手の手に受け止められている。
防がれたので瞬時に左脚で蹴りを入れる。しかし、その脚を捕まれ、そのまま後ろへ投げ飛ばされた。
「がっ、ぐぁっ」
到底敵わないのは重々承知しているが、こうも簡単にあしらわれると自信が無くなってくる。
体の怪我を即座に治して、次の攻撃のために構えるこの動作ももはや慣れてきた。非常に不本意なのだが。
「今日の手合わせはここまでにして、次は魔法の訓練にしよう」
「はぁ、、はぁ、、今やってもまた昨日みたいになりそうだけどな」
全く制御できず、挙句の果てに倒れてしまったことを思い出す。あの時の脱力感というか倦怠感はそう何度も経験したくない程だった。
「そう思って今日は補助出来るものを持ってきた」
そう言うとフリードは剣を渡してきた。いや、剣というよりは刀だろうか、刀身から柄まで真っ黒で鍔が無い。持った感触は意外と軽く、片手で難なく振れそうだ。
「魔法で、、、刀?」
「それはそのままだと何も切れないナマクラだが、魔力を流せば切れるようになる。要はそれを使って魔力の出し入れに慣れろ、ということだ」
「なるほどな……って、あるなら最初から出せよ!!」
「昨日は元々、魔法を教えるつもりでは無かったからな。これからはそれで魔法の訓練をする。護身にもなるから常に持っておくといい」
毎日帯刀してるとか物騒だな。この屋敷にいて、そんなピンチに陥るのだろうか。
……あの白黒コンビに会ったら速攻で出番がありそうだな。
「さっそく昨日のように魔法を行使してみろ」
「ったく、今度は大丈夫だろうな?」
渋々だがいつものように意識を落とし込み、例のプラズマボールを思い浮かべる。するとまた、お腹の奥あたりが熱くなってきた。
「……お、くる。この感覚は―――」
確かに昨日と同じく雷が出ている感覚だ。しかし、辺りには撒き散らしておらず、代わりに刀が帯電している。
「おぉー!昨日みたいに暴走してねぇ!」
今のところ、蛇口が馬鹿になった様子はない。前回よりもきちんと発動出来ているようだ。
「次はそれを引っ込めてみろ。」
「抑え込む……イメージ……」
発動はプラズマボールを意識すればできた。ならば、今度は電化製品の電源が落ちる感じを想像すれば―――
「……おっ、これって」
思惑通り、刀に付与されていた電気が綺麗になくなっている。擬似的だが引っ込めることに成功したのだ。
「後はそれを何度も繰り返すだけだ。毎日最低でも20回はやるんだな。」
「20回って……魔力枯渇起こさないか?あんな思い二度とごめんなんだけど。」
毎日のように枯渇なんか起こしてたら、疲労で精神に異常をきたしそうだ。
「使い続ければ自然と上限があがる。それに、適合率もあげられて魔法の感覚も掴める。これ以上ない練習法だ」
「はいはい、やればいいんだろ、やれば。魔法を使うためだ、そのくらい乗り越えてやるよ」
魔法に対する恐怖心は多少なりともあるが、今は魔法を使ったという感動の方がでかい。
もっと自由に使えるようになりたい、そんな気持ちが生まれてくる。
「よし、もう1回だ!」
こうして、この日から本格的な魔法特訓が始まったのだった。
――――――――――――――――――――
あれから3日
毎日20回以上きちんと、魔法を、魔力を刀に流している。結構スムーズにオンオフできるようになったと、自分でも思う。
模擬戦の方だが、相も変わらず一撃も与えられていないのだが、動きは良くなったと褒められた。
おそらくだが、魔法によって因子の適合率が上がりやすくなったからだと思う。もうすぐ9%に到達するらしく、そのおかげで痛みに対する耐性も少しだが付いてきた。
割と好調なので今日こそは、と思ったのだが休みを与えられたので訓練は無くなった。
そして今、何をしているかというと―――
「あそこだ。あそこでアタシはいつも食材を買ってるんだぜ」
「もぉ、今日は食材の買い出しじゃないんですから、わざわざそんなところ行かなくていいですよぉ」
そう、今は絶賛デート中だ!
とは言っても街の案内のようなもので、デートだと思っているのは俺の勝手なのだが。
今朝急に休みを言い渡されたので、正直何をしていいか悩んでいたところ、この2人の提案で近くの街に来ることになったのだ。
屋敷から少々歩くのだが、それなりに栄えており、人も店も溢れかえっている。ここに居る全員が吸血鬼というわけでなく、獣人なんかもいる。なんなら、獣人の方が多いまである。
さっきから周りの人たちがチラチラと見てくるが、2人のことを見ているのだろうか。
確かに、2人とも容姿は整っており、体も出るとこは出て、引っ込むところはちゃんと引っ込んでいる、モデル顔負けのスタイルをしているので目で追ってしまうのも分かる。
俺だって男なのだ。聖人でなければ紳士でもない、ごく普通の一般男性だ。逆にそんな目を1度も向けない、という方が無理であろう。そう、仕方がないのだ。うん。
「……何変な顔してんだ?」
「あ、いやちょっと言い訳をね……なんかごめん……」
俺の心の声は漏れてはいないのだが、一応謝っておく。絶対に口外しないでおこう。
「あー、それで昼飯どこで食べようか」
街に来て、ちょうどお昼なのでまずは昼食をとることになったのだが、どこで食べるかはまだ未定だ。個人的には何か珍しいものが食べてみたい。せっかくの異世界なのだ。斬新な味を経験してみたい気持ちが生まれる。
とか何とか思っているとシャロが、
「もし良ければなんですが―――」
そう言ってレストランのような店に連れて来られた。
「あぁ!シャロじゃない!来るなら言ってよ!」
店に入るなり、銀髪で猫耳が生えている女の人が出迎えてくる。
この顔、それにこの猫耳、もしかしてだけど、いやもしかしなくとも―――
「こちらわたくしの母です」
やはりだ。というか、そうでなかった方が受け入れられない。それほどに似ている。無論、お母さんの方が大人びているのだが、それにしてもだ。
「あっ、初めまして。石動健一って言います。娘さんにはいつも世話になっています。」
「あなたが例の……。なぁんだ!思ったよりも全然普通ね!吸血鬼に受け入れられた人間に仕えるって聞いたから、どんなにヤバい奴なんだろうって思っていたのだけれど、心配いらなそうね!」
これは、、、褒められているのだろうか?
後半がプラス評価なのは分かるが、前半部分をうまく飲み込めない。
「ティアちゃんも、またお仕事終わったら良ければウチ手伝ってね!」
「はい、また今度いろいろ教えてください。」
おぉ、ティアがちゃんと敬語を使っている。色々状況から察するに、料理の師弟関係といったところだろうか。それならばこの感じも頷ける。
「それで、お母さん。ちょうど今お昼ご飯をどこで食べるか悩んでまして、ここで食べても良いですか?開店まであと数十分ありますけど。」
「もちろん!今持ってくるからいっぱい食べていって!」
そう言ってテーブル席へと案内された。
一体何が出るのだろうか。このレストラン的な内装から考えるに、無難にハンバーグとかだろうか。ティアが前まで手伝っていたことを考えると、洋食あたりだろう。
数分後、予想は外れも外れ、大ハズレ
「なん……だと……?」
俺の目の前には米の上に生の魚が乗った料理が運ばれてきた。そう、これはまさに――
「うちの名物のお寿司です。お父さんの家が漁港で魚を獲る仕事をしてて、そのツテで仕入れているんです」
「す、寿司だ。俺の目の前に、寿司が!」
この世界にも寿司がある、なんて野暮なツッコミはしない。目の前にある物がすべてだ。
「あら、お寿司好きなんですかぁ?」
「ああ、、ああ!もちろんだ!これを嫌いな日本人なんて滅多にいないだろ!大好きだ!」
久しぶりのThe日本食。ワクワクしない訳がない。
「じゃあさっそく……」
まずは赤い見た目の寿司を掴む。見た目はマグロの大トロだ。結構な厚さがあるが、それを一気に口へ運ぶ。
「うんうん!……うん?これって、マグロって言うよりサーモン?」
俺の視覚はこれがマグロだと判断している。だがしかし、味覚はサーモンだと叫んでいる。
「これはローズというお魚です。脂が乗っていて美味しいですよね」
「ああ。ちょっと俺の想像のナナメ上の味だったけど、めっちゃうまい!前の世界ではこんなの頻繁に食べれなかったからなぁ」
回る寿司よりも断然おいしい。なんなら、回らない寿司ともいい勝負しそうだ。
「それならこっちは……」
こちらは見た目がサーモンだ。鮮やかなオレンジ色が輝いて見える。しかし、さっきのことから考えるに、こちらがマグロなのではないのだろうか?
箸で掴み、一思いに口へ入れる。
「こ、れは?」
アナゴだ。アナゴの味がする。もう訳が分からない。見た目と味の不一致に脳が混乱を起こす。
「それはミルって魚です。捕れる量が少なくて貴重なんですよ?」
なるほど、ならば味わって食べねば。
そういえばティアが静かだな。そう思って横を見ると、俺の目の前にある皿と同じ物を3倍は食べた跡があった。
「……何見てんだ?」
「い、いやぁ。ははは……」
俺は理解のある人間だ。こんな短時間でこの量を食べきったとしても、そんな事実で引く人間ではない。
自分のペースで食べつつ、何度かおかわりもして昼食を食べ終えた。食べている途中で店が開店したのだが、あっという間に満席になった。よっぽど人気なのだろう、外にも列が出来ている。個人的には内装と料理のミスマッチ感が否めないが、それを上回る質で何度も来たいと思わせてくる。
一息ついた後、長居してもよくないので店を出ることにした。
「会計は……」
そう言って財布を取り出すが、
「いいのいいの!娘もお世話になっているんだし、また来て今度その分いっぱい食べてくれればいいから!」
と、止められてしまった。こういった厚意は素直に受け入れた方がいいだろう。それに是非また来たい。
「それにしても、シャロが元気そうで良かった!急にメイドとして働きたいなんて言うから……」
「大丈夫ですよ、とても良くしてもらってますので。……では、わたくし達はそろそろ行きますね。」
そう言って店を出た時のシャロの顔が、何故か俺にはいつもより元気がないように見えた。
「動きが単調で分かりやすすぎる。その程度では俺に触れることすらできないぞ」
「くそ、いつかぜってぇ泣かす」
今日も適合率アップ兼、戦闘訓練だ。俺自身が何か成長している気がしないが、フリードに対するヘイトは着々と稼がれてきている。
「避けんじゃねぇ、よっ!」
カウンター覚悟に懐に入り込み、無理に1発入れようとする。すると、俺のパンチが見事炸裂したのだが、よくよく見ると相手の手に受け止められている。
防がれたので瞬時に左脚で蹴りを入れる。しかし、その脚を捕まれ、そのまま後ろへ投げ飛ばされた。
「がっ、ぐぁっ」
到底敵わないのは重々承知しているが、こうも簡単にあしらわれると自信が無くなってくる。
体の怪我を即座に治して、次の攻撃のために構えるこの動作ももはや慣れてきた。非常に不本意なのだが。
「今日の手合わせはここまでにして、次は魔法の訓練にしよう」
「はぁ、、はぁ、、今やってもまた昨日みたいになりそうだけどな」
全く制御できず、挙句の果てに倒れてしまったことを思い出す。あの時の脱力感というか倦怠感はそう何度も経験したくない程だった。
「そう思って今日は補助出来るものを持ってきた」
そう言うとフリードは剣を渡してきた。いや、剣というよりは刀だろうか、刀身から柄まで真っ黒で鍔が無い。持った感触は意外と軽く、片手で難なく振れそうだ。
「魔法で、、、刀?」
「それはそのままだと何も切れないナマクラだが、魔力を流せば切れるようになる。要はそれを使って魔力の出し入れに慣れろ、ということだ」
「なるほどな……って、あるなら最初から出せよ!!」
「昨日は元々、魔法を教えるつもりでは無かったからな。これからはそれで魔法の訓練をする。護身にもなるから常に持っておくといい」
毎日帯刀してるとか物騒だな。この屋敷にいて、そんなピンチに陥るのだろうか。
……あの白黒コンビに会ったら速攻で出番がありそうだな。
「さっそく昨日のように魔法を行使してみろ」
「ったく、今度は大丈夫だろうな?」
渋々だがいつものように意識を落とし込み、例のプラズマボールを思い浮かべる。するとまた、お腹の奥あたりが熱くなってきた。
「……お、くる。この感覚は―――」
確かに昨日と同じく雷が出ている感覚だ。しかし、辺りには撒き散らしておらず、代わりに刀が帯電している。
「おぉー!昨日みたいに暴走してねぇ!」
今のところ、蛇口が馬鹿になった様子はない。前回よりもきちんと発動出来ているようだ。
「次はそれを引っ込めてみろ。」
「抑え込む……イメージ……」
発動はプラズマボールを意識すればできた。ならば、今度は電化製品の電源が落ちる感じを想像すれば―――
「……おっ、これって」
思惑通り、刀に付与されていた電気が綺麗になくなっている。擬似的だが引っ込めることに成功したのだ。
「後はそれを何度も繰り返すだけだ。毎日最低でも20回はやるんだな。」
「20回って……魔力枯渇起こさないか?あんな思い二度とごめんなんだけど。」
毎日のように枯渇なんか起こしてたら、疲労で精神に異常をきたしそうだ。
「使い続ければ自然と上限があがる。それに、適合率もあげられて魔法の感覚も掴める。これ以上ない練習法だ」
「はいはい、やればいいんだろ、やれば。魔法を使うためだ、そのくらい乗り越えてやるよ」
魔法に対する恐怖心は多少なりともあるが、今は魔法を使ったという感動の方がでかい。
もっと自由に使えるようになりたい、そんな気持ちが生まれてくる。
「よし、もう1回だ!」
こうして、この日から本格的な魔法特訓が始まったのだった。
――――――――――――――――――――
あれから3日
毎日20回以上きちんと、魔法を、魔力を刀に流している。結構スムーズにオンオフできるようになったと、自分でも思う。
模擬戦の方だが、相も変わらず一撃も与えられていないのだが、動きは良くなったと褒められた。
おそらくだが、魔法によって因子の適合率が上がりやすくなったからだと思う。もうすぐ9%に到達するらしく、そのおかげで痛みに対する耐性も少しだが付いてきた。
割と好調なので今日こそは、と思ったのだが休みを与えられたので訓練は無くなった。
そして今、何をしているかというと―――
「あそこだ。あそこでアタシはいつも食材を買ってるんだぜ」
「もぉ、今日は食材の買い出しじゃないんですから、わざわざそんなところ行かなくていいですよぉ」
そう、今は絶賛デート中だ!
とは言っても街の案内のようなもので、デートだと思っているのは俺の勝手なのだが。
今朝急に休みを言い渡されたので、正直何をしていいか悩んでいたところ、この2人の提案で近くの街に来ることになったのだ。
屋敷から少々歩くのだが、それなりに栄えており、人も店も溢れかえっている。ここに居る全員が吸血鬼というわけでなく、獣人なんかもいる。なんなら、獣人の方が多いまである。
さっきから周りの人たちがチラチラと見てくるが、2人のことを見ているのだろうか。
確かに、2人とも容姿は整っており、体も出るとこは出て、引っ込むところはちゃんと引っ込んでいる、モデル顔負けのスタイルをしているので目で追ってしまうのも分かる。
俺だって男なのだ。聖人でなければ紳士でもない、ごく普通の一般男性だ。逆にそんな目を1度も向けない、という方が無理であろう。そう、仕方がないのだ。うん。
「……何変な顔してんだ?」
「あ、いやちょっと言い訳をね……なんかごめん……」
俺の心の声は漏れてはいないのだが、一応謝っておく。絶対に口外しないでおこう。
「あー、それで昼飯どこで食べようか」
街に来て、ちょうどお昼なのでまずは昼食をとることになったのだが、どこで食べるかはまだ未定だ。個人的には何か珍しいものが食べてみたい。せっかくの異世界なのだ。斬新な味を経験してみたい気持ちが生まれる。
とか何とか思っているとシャロが、
「もし良ければなんですが―――」
そう言ってレストランのような店に連れて来られた。
「あぁ!シャロじゃない!来るなら言ってよ!」
店に入るなり、銀髪で猫耳が生えている女の人が出迎えてくる。
この顔、それにこの猫耳、もしかしてだけど、いやもしかしなくとも―――
「こちらわたくしの母です」
やはりだ。というか、そうでなかった方が受け入れられない。それほどに似ている。無論、お母さんの方が大人びているのだが、それにしてもだ。
「あっ、初めまして。石動健一って言います。娘さんにはいつも世話になっています。」
「あなたが例の……。なぁんだ!思ったよりも全然普通ね!吸血鬼に受け入れられた人間に仕えるって聞いたから、どんなにヤバい奴なんだろうって思っていたのだけれど、心配いらなそうね!」
これは、、、褒められているのだろうか?
後半がプラス評価なのは分かるが、前半部分をうまく飲み込めない。
「ティアちゃんも、またお仕事終わったら良ければウチ手伝ってね!」
「はい、また今度いろいろ教えてください。」
おぉ、ティアがちゃんと敬語を使っている。色々状況から察するに、料理の師弟関係といったところだろうか。それならばこの感じも頷ける。
「それで、お母さん。ちょうど今お昼ご飯をどこで食べるか悩んでまして、ここで食べても良いですか?開店まであと数十分ありますけど。」
「もちろん!今持ってくるからいっぱい食べていって!」
そう言ってテーブル席へと案内された。
一体何が出るのだろうか。このレストラン的な内装から考えるに、無難にハンバーグとかだろうか。ティアが前まで手伝っていたことを考えると、洋食あたりだろう。
数分後、予想は外れも外れ、大ハズレ
「なん……だと……?」
俺の目の前には米の上に生の魚が乗った料理が運ばれてきた。そう、これはまさに――
「うちの名物のお寿司です。お父さんの家が漁港で魚を獲る仕事をしてて、そのツテで仕入れているんです」
「す、寿司だ。俺の目の前に、寿司が!」
この世界にも寿司がある、なんて野暮なツッコミはしない。目の前にある物がすべてだ。
「あら、お寿司好きなんですかぁ?」
「ああ、、ああ!もちろんだ!これを嫌いな日本人なんて滅多にいないだろ!大好きだ!」
久しぶりのThe日本食。ワクワクしない訳がない。
「じゃあさっそく……」
まずは赤い見た目の寿司を掴む。見た目はマグロの大トロだ。結構な厚さがあるが、それを一気に口へ運ぶ。
「うんうん!……うん?これって、マグロって言うよりサーモン?」
俺の視覚はこれがマグロだと判断している。だがしかし、味覚はサーモンだと叫んでいる。
「これはローズというお魚です。脂が乗っていて美味しいですよね」
「ああ。ちょっと俺の想像のナナメ上の味だったけど、めっちゃうまい!前の世界ではこんなの頻繁に食べれなかったからなぁ」
回る寿司よりも断然おいしい。なんなら、回らない寿司ともいい勝負しそうだ。
「それならこっちは……」
こちらは見た目がサーモンだ。鮮やかなオレンジ色が輝いて見える。しかし、さっきのことから考えるに、こちらがマグロなのではないのだろうか?
箸で掴み、一思いに口へ入れる。
「こ、れは?」
アナゴだ。アナゴの味がする。もう訳が分からない。見た目と味の不一致に脳が混乱を起こす。
「それはミルって魚です。捕れる量が少なくて貴重なんですよ?」
なるほど、ならば味わって食べねば。
そういえばティアが静かだな。そう思って横を見ると、俺の目の前にある皿と同じ物を3倍は食べた跡があった。
「……何見てんだ?」
「い、いやぁ。ははは……」
俺は理解のある人間だ。こんな短時間でこの量を食べきったとしても、そんな事実で引く人間ではない。
自分のペースで食べつつ、何度かおかわりもして昼食を食べ終えた。食べている途中で店が開店したのだが、あっという間に満席になった。よっぽど人気なのだろう、外にも列が出来ている。個人的には内装と料理のミスマッチ感が否めないが、それを上回る質で何度も来たいと思わせてくる。
一息ついた後、長居してもよくないので店を出ることにした。
「会計は……」
そう言って財布を取り出すが、
「いいのいいの!娘もお世話になっているんだし、また来て今度その分いっぱい食べてくれればいいから!」
と、止められてしまった。こういった厚意は素直に受け入れた方がいいだろう。それに是非また来たい。
「それにしても、シャロが元気そうで良かった!急にメイドとして働きたいなんて言うから……」
「大丈夫ですよ、とても良くしてもらってますので。……では、わたくし達はそろそろ行きますね。」
そう言って店を出た時のシャロの顔が、何故か俺にはいつもより元気がないように見えた。
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