異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

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第二章 再来の悪夢

例の約束

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 時刻は変わって夜

 俺は自室でティア、シャロと食卓を囲んでいた。

 前まで俺が食事に使っていた机は1人用だったので、フリードに相談して大きめのを貰ってきたのだ。ついでに椅子も3つ追加だ。

 ここにいつかリーメアも来たらいいな、とは思っているのだがそう上手くはいかなそうだ。

「はい。ちゃんとアタシ含めて3人分用意したぞ」

「それにしても一緒に食べたいだなんて、ご主人様本当に寂しがり屋さんなんですねぇ」

 そう言いながら、シャロは上目遣いで見てくる。

「ぐ、、別にいいだろ……」

 他の人と食事を一緒に食事を取らないことが、これほど自分に効くとは思ってもいなかった。
 ああ認めよう、俺は生粋の寂しがり屋なのだ。浪人生時代の時も夕飯だけは母親と食べていたのだが、この世界に来てからは大体1人だ。

「それにティアとしたからな…………ん、どした?」

 俺が話していると急にティアがビクッと反応した。

「い、いや。別に……」

「……そうか?じゃあさっそく食おうぜ!」

 ティアの様子を見つつ、俺は机の上に広がる料理に目を向けた。

 今日はグラタンだ。海老(に似た何か)や野菜が沢山入っている。ちなみにこのメニューは俺がお願いしたのだ。
 前の世界では、母親の作るグラタンが大好きでよくお願いをしていた。しばらく食べていなかったので、恋しくなったのだ。

「ん!めっちゃ美味い!」

 チーズがとろけていて、それでもって焦げ目もいい感じだ。語彙力が無さすぎて食レポがうまく出来ないが、とにかく美味い。

「そ、そうだろ!ちゃんと要望通りに出来てるだろ?」

「ああ、満足も満足。大満足だ!」

「へへ、そっか」

 ティアは弾けるような笑顔をして、喜ぶ。やっぱり誰でも、得意なことを褒められるのは嬉しいものなのだろう。

「ティアったら喜んじゃって……まぁ、ですものねぇ?」

「なっ!?」

 シャロがそう言った途端、ティアの顔が急に真っ赤になる。

「……なんか顔赤くね?病気か?」

「ち、ちがっ、、これは、その……」

 ティアは何やら慌てながら口ごもる。一体何なのだろうか。

「……そうか?ま、それにしてもこうやって食べれるってだけで生きた甲斐があるってもんよ。死ぬ気で頑張れたのも、戦いの前にティアと約束したおかげかもな」

「そうですねぇ。ご主人様とっても頑張っていましたし。ねぇ、ティア?」

 またシャロがティアへ謎の会話パスを行う。それを受け取ったティアはだんだんと顔が引き攣り、結局それを無視して夕食にがっついた。

「ごっ、ごちそうさま!アタシは先に片付けてるから、食べ終わったら食器持ってこいよ!」

   あまりにも食べきるのが早すぎる……
   
   まだ食べ始めて10分も経っていないのにティアは足早に部屋を出ていってしまった。

 何やら慌てていたが、本当に何なんだ?

「正直、譲りたくはない気持ちはありますが、ご主人様がそう望むのならシャロは許しますよぉ?」

「どゆこと?」

「まぁまぁ、直に分かりますって。ティアはしっかり者なので」

 頭の中でハテナがいっぱいになるが、そんな疑問を横目に俺は再び食事へと戻った。



「はぁ、食べた食べた。最近は食欲がとまんねぇから前より食っちまった」

 おそらくだが、これは因子のせいだろう。昨日の戦いで相当無茶をしたが、その分適合率は上がっているはずだ。
 それに伴ってなのか、俺の三大欲求が以前より遥かに爆発している気がする。少しづつだが、着実に変化している。

 そんな事を考えつつ、俺は食器を片付け始めた。

「すみません、ちょっとやらなければいけない用事を思い出したので、シャロの分も一緒に持って行ってくれませんか?」

「ああ、別にいいよ。用って?」

「大した事じゃありませんが、この後に必要な事なので」

「よく分からんけど、分かった。じゃあ持っていくな」

 シャロと自分の2人分の食器を持って、俺は料理部屋へと向かった。

 部屋に着くと、ティアが使った食器を洗いながら何かをブツブツ呟いていた。

   なんだあれ、魔法の詠唱か何かか?

   こちらには気づいていなさそうなので、ひとまず声をかける。

「ティア」

「なぁっ!?い、イスルギか、驚かせるなよ」

「いや、なんか呪詛みたいなの唱えてたから怖くてな……」

「呪詛って……あれ、シャロのやつは?」

「あー、なんか用事があるからってどっか行っちまった。代わりに俺が持ってきたぞ」

「しゃ、シャロのやつめ……」

 見た感じ、結構洗い物がある。この量を1人でやるのは大変だろう。

「それ、ちょっと手伝おうか?」

 村にいた頃は洗い物をしたりして貢献していた。所詮その程度だが、やらないよりはマシだろう。

「い、いいって!アタシがやるから」

「そう言うなって。俺は感謝の気持ちは行動で表すタイプなんだぜ?料理美味かったよ」

 俺のわがままに付き合ってくれたティアには感謝している。これからもお世話になるんだし、このくらいのことはしておきたい。

「感謝を……行動で……」

   再びボソボソと何かを呟き始めて、そのまま自分の世界へ入ってしまった。

「ティア?」

「なっ、なんだよ!」

「いや、そっちの皿とってくれ」

「あっ、は、はい」

「サンキュー」

「…………」

「…………」

    

 いや気まずっ!

 なんでだ!?いつもはもっとこう、ガツガツしてるじゃねぇか!なんで今日はこんなに小さく見えるんだ?様子が違いすぎるだろ!?

 ティアにいつものような覇気がなく、静寂の中、洗い物の音だけが部屋に響く。

 会話は途切れ、黙々と作業をしていたので、いつの間にか全て洗い終えていた。

「ふぅ、こんなもんか。この量をいつもって大変だな」

「へっ!?あっ、そ、そうだな?」

 やはり様子がおかしい。スルーするつもりでいたが思い切って聞くか。

「なぁ、なんかさっきから様子変じゃねぇか?食事の時からってゆーか」

「へ、変?そう、かな……」

「いや、なんかいつもと様子が違うってぐらいだけど、なんか悩み事か?俺でよければ相談のるぜ?」

「別に悩みってほどの事じゃ……」

「平気そうなら別にいいんだけど……じゃ、じゃあ俺風呂行ってくるわ。夕飯ありがとな」

そう言って俺は風呂に直行しようとするが、服を掴まれ止められた。

「ま、待って…!」

「な、なんでしょうか?」

返答はなく、深呼吸の音だけが聞こえてくる。

「……よし、決めた」

「え?」

「ちょっと横向いてくれ」

「あ、ああ」

 急に言われて何が何だかわからないが、その通りする。

「これは別に……そういうのじゃないからな」

 ティアがそう言うと、横から女の子の甘い匂いが漂ってきて、俺の頬に柔らかい感触が伝わってきた。

「へ?」

「ほ、ほら!ちゃんと約束通りにしたぞ!これで満足か!?」

「や、約束って?」

「い、言ったじゃん!『狂人』に襲われたときに、もし生き残ったらって……」

 そう言われ、だんだんと思い出してくる。

――もし、生き残ったら俺のほっぺに――

 うん、確かに言ったな。

 あの時はノリと言うかカッコつけたさが出て思わず言ってしまったのだが、まさか本当にされるとは思ってもいなかった。

「そ、それだけだ!じゃあアタシはもう行くからな!」

 ティアは耳まで赤くしながら、その勢いのまま出ていってしまった。

「は、破壊力やべぇ……」

 異世界に来て2回、しかもどちらもディープだったが、それとはまた違うモノ。

 その感触が俺に刻まれて、記憶から離れない。

 俺はしばらくの間、部屋から動くことが出来なかった。
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