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第三章 王立学校
実技試験
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あれから体に異変は起きず、いつも通りの気持ちのいい朝を迎えた。朝食を食べ、一人で学校に向かう。というのも、シャロとティアには街の治安警察に情報を提供してきてと頼んだのだ。
こうして再び学校へと来たのだが、緊張で今にも吐きそうだ。足取りは水の中を進んでいるかのように重く、呼吸がままならない。逃げ出したい、帰りたい、そんな考えでいっぱいになる。
俯いたまま歩いていたらいつの間にか辿り着いたようだ。昨日渡された紙に書かれていたこの場所。漫画でよくあるような闘技場そのものだ。こんなものが学校の敷地内にあるのだから、どれだけ国に支援されているのかがよく分かる。
矢印の指示に従って右へ左へと進んでいくと、闘技場のど真ん中に出た。上の方には観覧席があって、陸上部時代のことを思い出す。
周囲を見渡していると、この前の白髪の男が現れた。長い髪を後ろで縛り、眼鏡をかけ、くたびれた白衣を着ている。個性が強い理科の先生のような恰好だ。
「あれ、僕ひょっとして時間間違えた?」
「いえ、自分が早く来すぎただけだと思います」
「そっかそっかぁ。危うく減給されちゃうとこだったよ」
「そ、そうですか……」
ふざけた様子に苦笑いを浮かべる。
「僕は編入試験を担当してるミツヤ・フォルトだ。フォルト先生でもミツヤ先生でも、どっちで呼んでくれてもいいよ」
「よろしくお願いします、フォルト先生」
「うんうん、よろしくね。ところで……どうせ君しかいないし、もう始めちゃっていいかな?」
「え? あ、別に……大丈夫です」
まだ全然心の準備ができていないのだが、咄嗟にそう答えてしまった。
「よし、じゃあまずはドキドキの試験内容について話そうか」
いよいよ試験内容が明かされる。去年は対人戦だったので、今年は魔物との闘いだと踏んでいるのだが、
「なんと! 今年も対人戦でーす」
「ま、まじか」
「ちなみに、相手はぼーく」
ニコニコしながら言っているが、正直この人がそこまで強そうには見えない。だが、油断はできない。
「僕が終了って言うまで戦い続けるっていうのがルールね」
「それって、寸止めとかはしなくていいんですか?」
「あー、へーきへーき。どうせ傷なんかつけられないだろうし、ね」
瞬間、垣間見えた不気味な笑みに背筋がゾワッとする。この一瞬で理解した。この人は相当できる。ロイドやフリードとはまた別の、クラリスやレイズのような狂気を感じた。
「まぁ、仮にケガしても、それを言い訳に授業休めるから気にしないでいいよ」
「わかりました」
「そっちの方に立って。大体十五メートルくらい離れればいいかな」
言われたとおりに距離を保ち、この男と向かい合う。相手は武器を持っていない。まず間違いなく魔法で攻撃してくるだろう。
「んじゃ、開始の合図とかは無しで好きなタイミングでかかってきていいよ」
「……お言葉に甘えて、いきます」
完全に舐められているが、そちらの方が好都合だ。因子を最大まで働かせて戦闘モードに入る。
現在の俺の適合率は推定33.5%だ。目標には届かなかったが、それぐらいあれば十分だと言われている。なんせあのフリードのお墨付きだ。信頼度はかなりある。
ルーティーンと共に全身を脱力する。腹の底に力を集中させ、
「—————————纏雷」
閃光を身に纏い、準備は万端だ。
逆手で持った刀と共に走り出す。
「———はっや!」
閃光の一振りはギリギリのところで躱される。すかさず体をねじり回し蹴りを食らわせた。腕でガードされたが、俺の攻撃には雷が乗っている。普通に受ければ痺れるはずだ。
「くぅぅ、ヒリヒリするねぇ。今度はこっちから———ってうわぁっ!」
相手が態勢を立て直す前に無詠唱の雷槍を放つ。対人戦の場合、出し惜しみはせずに食らいついていった方が良いとアドバイスをもらったのだ。
再び生まれた綻びを狙い、また一閃。これも避けられたが、確かにその頬に鮮血が滴るのが見える。
そのまま攻撃を……というところで、突如何もないところから水が、水の壁が現れた。
「ひゅ~、あぶないあぶない。危うく首が飛ぶとこだった」
「まじかよ……水のないところでこのレベルの水遁を……って、一回言ってみたかったんだよな、これ」
「こんなの全然だよ。それよりも———」
フォルト先生の周囲に、無数の水の弾丸が浮かぶ。
「そろそろ、いいかな?」
合図なしで、その水の弾が向かってくる。横に走って躱すが、無くなった傍から装填され、再度飛んでくる。水は当たったらすぐに爆発する使用になっていて、一撃でも食らったらかなりのダメージを受けるだろう。
「くっ、埒が明かねぇ」
終わりのない攻撃に対抗するため、敢えて真っすぐその弾幕の中を突っ切る。
「おお、勇敢だね。でも、悪手かな」
先生がパンッ、と手を叩くと水が一斉に爆発する。水飛沫を体に浴びるが、問題はない。そのまま直線状で先生を捉えた……のだが、
「ね? 悪手だって言ったでしょ」
「く、そ……」
水が破裂した後、氷魔法で瞬時に濡れたところを凍らされた。あと数歩といったところで完全に身動きが封じられる。刀が届かなかった。足も凍って、手も空中で止まったままだ。……それでもまだ、
「これで僕の勝ちかな。じゃあ、しゅうりょ———」
「———雷砲―――雷槍―――」
「ん?」
まだ、終わってなどいない。俺は詠唱を続け、その言葉を叫ぶ。
「——————疾雷照破!!」
「まっ―——」
轟音と共に眩しい光が辺りを包む。数か月かけ編み出した俺の、俺だけの魔法。ベースの魔法は雷槍なのだが、詠唱のプロセスを三段階に分けることで、その威力が段違いになる。俺が増やした魔力量を馬鹿みたいに食うから諸刃の剣なのだが、一瞬の隙を上手く突くことができた。
「いてて……し、死ぬかと思った……」
先生は咄嗟に氷で盾を作り防いだようだ。正確には防ぎながら、攻撃をいなしたといったところだ。ぱっと見だが、ケガらしいケガは見つからない。
「うん……これは認めざるを得ないね」
「ということは……!?」
「ああ、イスルギ・ケンイチくん。君の編入を認めよう!」
「よしっ!」
危ない場面はあったが、結果良ければ全て良しだ。とにかく、俺は編入試験に受かったんだ。
「って、こんなあっさり決めちゃっていいんですか?」
「問題ないよ。この試験は完全に一任されてるからね」
試験を見ている人なんていないし、もし不正があったら分からなそうだが、それだけこの人が信頼されているということなのだろうか。
「ところで……この後暇?」
「え、まぁ、はい」
「時間も余ってるし、召喚の儀式をしちゃってもいいかな?」
「召喚の儀式?」
「そうそう。この学校では生徒に使い魔を持たせることを推奨してるんだ。必要がない人は持っていないんだけど、君の場合は魔力の効率が悪そうだからね」
「使い魔がいると変わるんですか?」
「うん。魔法の発動を手助けしてくれたり、一緒に戦ってくれたりするから、おすすめするよ」
つまり、闘いのお供を呼び出すということか、口寄せ的な。猫とかが出たら可愛くて癒されるだろうし、スライムみたいなやつが出たら面白いかもしれない。なんなら竜が出たら俺は興奮して死ぬかもしれない。夢が途端に広がる。
「ぜひやらせてください!」
▷▶▷
こうして闘技場の地下に連れて来られたのだが、なんとも怪しい雰囲気が漂っている。オカルティックで、ここが異世界出なかったら間違いなく危ない考えの人たちがいるところだ。
それにしてもどこか見覚えがある空間だ。なんかの漫画で見たのだろうか……
「それじゃ、そこの真ん中に立って」
指示された場所には魔法陣が描かれている。
「そうそこ。そこに自分の血を垂らして、目を瞑って、心の中で呼びかけてみて」
刀で指を切り、魔法陣の中心に血を落とす。そして目を閉じ、心の中で強く念じる。
ええと、呼びかければいいんだっけか……こいっ! 違うな……口寄せの術とかか? それとも、我が求めに応じ……とかの方がいいのか?
呼びかけ方に悩んでいると、何かに強く引っ張られる感覚を覚える。
「いいね。成功したから、もう目を開けていいよ」
ゆっくりと目を開けると、さっきの魔法陣から青白い光が発生している。魔法陣からあとずさり、少し離れた場所でその様子を眺めていると、直視できない程に光り始める。
「こ、これは……」
「……くるよ」
徐々にその光が薄れていき、召喚されたその姿が露わになる。
「やぁ。君がボクを呼んだのかい?」
そこにいたのは、白髪で黒い着物を着た、角の生えた女の子だった。
こうして再び学校へと来たのだが、緊張で今にも吐きそうだ。足取りは水の中を進んでいるかのように重く、呼吸がままならない。逃げ出したい、帰りたい、そんな考えでいっぱいになる。
俯いたまま歩いていたらいつの間にか辿り着いたようだ。昨日渡された紙に書かれていたこの場所。漫画でよくあるような闘技場そのものだ。こんなものが学校の敷地内にあるのだから、どれだけ国に支援されているのかがよく分かる。
矢印の指示に従って右へ左へと進んでいくと、闘技場のど真ん中に出た。上の方には観覧席があって、陸上部時代のことを思い出す。
周囲を見渡していると、この前の白髪の男が現れた。長い髪を後ろで縛り、眼鏡をかけ、くたびれた白衣を着ている。個性が強い理科の先生のような恰好だ。
「あれ、僕ひょっとして時間間違えた?」
「いえ、自分が早く来すぎただけだと思います」
「そっかそっかぁ。危うく減給されちゃうとこだったよ」
「そ、そうですか……」
ふざけた様子に苦笑いを浮かべる。
「僕は編入試験を担当してるミツヤ・フォルトだ。フォルト先生でもミツヤ先生でも、どっちで呼んでくれてもいいよ」
「よろしくお願いします、フォルト先生」
「うんうん、よろしくね。ところで……どうせ君しかいないし、もう始めちゃっていいかな?」
「え? あ、別に……大丈夫です」
まだ全然心の準備ができていないのだが、咄嗟にそう答えてしまった。
「よし、じゃあまずはドキドキの試験内容について話そうか」
いよいよ試験内容が明かされる。去年は対人戦だったので、今年は魔物との闘いだと踏んでいるのだが、
「なんと! 今年も対人戦でーす」
「ま、まじか」
「ちなみに、相手はぼーく」
ニコニコしながら言っているが、正直この人がそこまで強そうには見えない。だが、油断はできない。
「僕が終了って言うまで戦い続けるっていうのがルールね」
「それって、寸止めとかはしなくていいんですか?」
「あー、へーきへーき。どうせ傷なんかつけられないだろうし、ね」
瞬間、垣間見えた不気味な笑みに背筋がゾワッとする。この一瞬で理解した。この人は相当できる。ロイドやフリードとはまた別の、クラリスやレイズのような狂気を感じた。
「まぁ、仮にケガしても、それを言い訳に授業休めるから気にしないでいいよ」
「わかりました」
「そっちの方に立って。大体十五メートルくらい離れればいいかな」
言われたとおりに距離を保ち、この男と向かい合う。相手は武器を持っていない。まず間違いなく魔法で攻撃してくるだろう。
「んじゃ、開始の合図とかは無しで好きなタイミングでかかってきていいよ」
「……お言葉に甘えて、いきます」
完全に舐められているが、そちらの方が好都合だ。因子を最大まで働かせて戦闘モードに入る。
現在の俺の適合率は推定33.5%だ。目標には届かなかったが、それぐらいあれば十分だと言われている。なんせあのフリードのお墨付きだ。信頼度はかなりある。
ルーティーンと共に全身を脱力する。腹の底に力を集中させ、
「—————————纏雷」
閃光を身に纏い、準備は万端だ。
逆手で持った刀と共に走り出す。
「———はっや!」
閃光の一振りはギリギリのところで躱される。すかさず体をねじり回し蹴りを食らわせた。腕でガードされたが、俺の攻撃には雷が乗っている。普通に受ければ痺れるはずだ。
「くぅぅ、ヒリヒリするねぇ。今度はこっちから———ってうわぁっ!」
相手が態勢を立て直す前に無詠唱の雷槍を放つ。対人戦の場合、出し惜しみはせずに食らいついていった方が良いとアドバイスをもらったのだ。
再び生まれた綻びを狙い、また一閃。これも避けられたが、確かにその頬に鮮血が滴るのが見える。
そのまま攻撃を……というところで、突如何もないところから水が、水の壁が現れた。
「ひゅ~、あぶないあぶない。危うく首が飛ぶとこだった」
「まじかよ……水のないところでこのレベルの水遁を……って、一回言ってみたかったんだよな、これ」
「こんなの全然だよ。それよりも———」
フォルト先生の周囲に、無数の水の弾丸が浮かぶ。
「そろそろ、いいかな?」
合図なしで、その水の弾が向かってくる。横に走って躱すが、無くなった傍から装填され、再度飛んでくる。水は当たったらすぐに爆発する使用になっていて、一撃でも食らったらかなりのダメージを受けるだろう。
「くっ、埒が明かねぇ」
終わりのない攻撃に対抗するため、敢えて真っすぐその弾幕の中を突っ切る。
「おお、勇敢だね。でも、悪手かな」
先生がパンッ、と手を叩くと水が一斉に爆発する。水飛沫を体に浴びるが、問題はない。そのまま直線状で先生を捉えた……のだが、
「ね? 悪手だって言ったでしょ」
「く、そ……」
水が破裂した後、氷魔法で瞬時に濡れたところを凍らされた。あと数歩といったところで完全に身動きが封じられる。刀が届かなかった。足も凍って、手も空中で止まったままだ。……それでもまだ、
「これで僕の勝ちかな。じゃあ、しゅうりょ———」
「———雷砲―――雷槍―――」
「ん?」
まだ、終わってなどいない。俺は詠唱を続け、その言葉を叫ぶ。
「——————疾雷照破!!」
「まっ―——」
轟音と共に眩しい光が辺りを包む。数か月かけ編み出した俺の、俺だけの魔法。ベースの魔法は雷槍なのだが、詠唱のプロセスを三段階に分けることで、その威力が段違いになる。俺が増やした魔力量を馬鹿みたいに食うから諸刃の剣なのだが、一瞬の隙を上手く突くことができた。
「いてて……し、死ぬかと思った……」
先生は咄嗟に氷で盾を作り防いだようだ。正確には防ぎながら、攻撃をいなしたといったところだ。ぱっと見だが、ケガらしいケガは見つからない。
「うん……これは認めざるを得ないね」
「ということは……!?」
「ああ、イスルギ・ケンイチくん。君の編入を認めよう!」
「よしっ!」
危ない場面はあったが、結果良ければ全て良しだ。とにかく、俺は編入試験に受かったんだ。
「って、こんなあっさり決めちゃっていいんですか?」
「問題ないよ。この試験は完全に一任されてるからね」
試験を見ている人なんていないし、もし不正があったら分からなそうだが、それだけこの人が信頼されているということなのだろうか。
「ところで……この後暇?」
「え、まぁ、はい」
「時間も余ってるし、召喚の儀式をしちゃってもいいかな?」
「召喚の儀式?」
「そうそう。この学校では生徒に使い魔を持たせることを推奨してるんだ。必要がない人は持っていないんだけど、君の場合は魔力の効率が悪そうだからね」
「使い魔がいると変わるんですか?」
「うん。魔法の発動を手助けしてくれたり、一緒に戦ってくれたりするから、おすすめするよ」
つまり、闘いのお供を呼び出すということか、口寄せ的な。猫とかが出たら可愛くて癒されるだろうし、スライムみたいなやつが出たら面白いかもしれない。なんなら竜が出たら俺は興奮して死ぬかもしれない。夢が途端に広がる。
「ぜひやらせてください!」
▷▶▷
こうして闘技場の地下に連れて来られたのだが、なんとも怪しい雰囲気が漂っている。オカルティックで、ここが異世界出なかったら間違いなく危ない考えの人たちがいるところだ。
それにしてもどこか見覚えがある空間だ。なんかの漫画で見たのだろうか……
「それじゃ、そこの真ん中に立って」
指示された場所には魔法陣が描かれている。
「そうそこ。そこに自分の血を垂らして、目を瞑って、心の中で呼びかけてみて」
刀で指を切り、魔法陣の中心に血を落とす。そして目を閉じ、心の中で強く念じる。
ええと、呼びかければいいんだっけか……こいっ! 違うな……口寄せの術とかか? それとも、我が求めに応じ……とかの方がいいのか?
呼びかけ方に悩んでいると、何かに強く引っ張られる感覚を覚える。
「いいね。成功したから、もう目を開けていいよ」
ゆっくりと目を開けると、さっきの魔法陣から青白い光が発生している。魔法陣からあとずさり、少し離れた場所でその様子を眺めていると、直視できない程に光り始める。
「こ、これは……」
「……くるよ」
徐々にその光が薄れていき、召喚されたその姿が露わになる。
「やぁ。君がボクを呼んだのかい?」
そこにいたのは、白髪で黒い着物を着た、角の生えた女の子だった。
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