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第三章 王立学校
俺の出来る恩返し
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「ありがとな。めっちゃ助かった!」
メアのおかげで酔った二人をなんとか別室へと運ぶことが出来た。最初はめちゃくちゃ抵抗してきたのだが、しばらくすると気持ちよさそうな顔して寝始めたので、そのままにしておいた。
「イスルギがちゃんと抑えなきゃ駄目じゃん!」
「お、俺のせい……なのか?」
「うん。絶対そう」
「メアがそう言うなら、そうなのか……」
完全には納得できないが、きっとそうなのだろう。だってメアが言っているんだ。間違っているはずがない。
「私だってイスルギと飲みたかったのに……」
「ま、それはあと二年経ってからだな。楽しみにしてるぜ?」
この世界の飲酒は18歳からだ。吸血鬼界のルールはしらないが、メアの半分は人間なのだ。一応飲まない方が良いだろう。
「じゃあさ、誕生日になった瞬間に二人きりで乾杯したい……な?」
「ああ。もちろんだ。その時は盛大に祝おう」
その時はまだ学校だと思うが、里帰りという制度があるらしいのでそれを使えばいいだろう。
「二人きり……だからね?」
あくまで二人、という事を強調するその様子が俺にはとても突き刺さる。咄嗟に抱きしめたい衝動に駆られるが、近くにあった肉を食べて誤魔化した。
「それで……やっぱり学校は行くの?」
「うん、行くよ。メアの体質を治してやりたいしな」
「で、でもさ……これからはずっと一緒なんだし、無理に行かなくても……」
言葉を濁してそう口にする。メアはきっと心配なのだろう。人間の世界では、俺という存在は恐らく悪だ。気づかれることはないとは思うが、ゼロではない。危険も大いにある。俺自身、フリードに止められると思ってたくらいだ。
「メアの言いたいことは分かってるつもりだ」
「じゃ、じゃあ!」
パッと明るくなった顔を見て、一瞬言うのを躊躇うが、
「それでも……それでも俺は行くよ」
「どう……して……?」
俺は人間の国に行く。これはもう決めたことだ。
「……正直な話、フリードのためだ」
「お父さんの?」
「アイツにはさ、すげー感謝してんだ。俺が生きれるように色々与えてくれて、なんだかんだしっかり俺を見て、考えてくれてて」
フリードがいなければ俺はきっと死んでいた。人間が異世界人をどうしてるだとか、そこら辺はまだ分からないけど、あいつはきっと嘘を言っていない。これだけ長い期間一緒にいれば分かる。
「だから恩返しがしたい。今度こそ、ちゃんと」
俺の中でのあいつの存在はそれほどまでに大きくなっているのだ。そう、―――と呼びたいくらいに。
「フリードが俺に頼んだのはメアのためってのが第一だと思うけど、きっとメアのお母さんの残した物が気になるんだと思う。俺はそれを見つけたい。俺はそれを、フリードに渡したい。そう、思ったんだ」
俺しかできない。だからこそ意味がある。これは俺がフリードにできる、最高の恩返しだ。
「……そっか。それなら納得」
「メア……」
「またすぐ離れちゃうのは寂しいけど、その代わり行くまでは、うんと甘えちゃうんだから!」
気持ちを抑えて、俺がしたいことを優先させてくれる。メアには本当に頭が上がらないな。
「分かったよ。その間は俺も覚悟しとく」
▷▶▷
腹をいい感じに満たしつつ、使用人の人達とも一通り話して、今度はロイドのところに向かった。
「おー、お前らも食べてるかー?」
「肯定。ここまで盛大な夕食会は久しぶりです。」
「…………」
レイズも小さく頷き、反応を示す。
「そうだ。お前に付き合ってもらったアレ、実技で役に立ったぜ」
「重畳。それは良かったです。ですが、先程の戦いを見てもやはり練度が足りない。隙がありすぎるのがネックですね」
「そうなんだよなぁ……」
雷鳴鬼と戦う前から分かっていたことだが、あれは強敵相手には通用しない。その理由は詠唱が長いだとか消費魔力量が多いだとかなのだが、それらは一朝一夕で解決できるようなことではない。模擬戦闘でも、ロイド相手には発動する暇すらなかった。
「…………」
会話を聞いていたレイズが、指をくいっとジェスチャーしてロイドに何かを伝える。
「同意。確かにその手がありますね」
「なんでお前は話さなくても分かるんだよ……」
「疑問。逆になんで分からないのかが、分からないです」
二人してキョトンとした顔をしている。この感じ、マジだ。
「そんで、レイズはなんて言ってるんだ?」
「提案。あの鬼の少女の力を借りればいいと言っています」
「雷鳴鬼の?」
「肯定。要するに、詠唱、そして消費する魔力を半分請け負ってもらえばいい、ということです」
「そんなことできんの?」
「連携。呼吸を合わせる必要はありますが、可能です。見たところ相性も良さそうですし、練習次第ではかなり有用かと」
「呼吸を合わせる……かぁ……」
あのマイペースな鬼と呼吸を合わせることなど果たして可能なのだろうか。うまくいけば某忍者漫画みたいに、雷鳴鬼モードみたいなのとかできるのかな。
「詠唱の肩代わりなんかはすぐにできると思いますよ」
いつの間にかシルバーも傍に来ていて、そうアドバイスをしてくる。
「詠唱の肩代わりってあんまりイメージ湧かないんですけど、実際どんな感じなんですか?」
「そうですね……例えば、片方が詠唱しているのをもう一人が受け継ぐ、といった感じですね」
「詠唱を受け継ぐ……」
要は俺が「雷砲」と唱えたら、雷鳴鬼に「雷槍」と唱えてもらうといったところだろう。この場合だとあまり意味がなさそうだが、前半部分を雷鳴鬼に唱えてもらって、最後のみを唱える形なら瞬時に発動できるし、結構使えそうだ。
「そしたら何発も雷鳴鬼に見せなきゃな」
魔法はイメージの世界だ。その威力は魔力量に依存するが、それを引き出し、形にするのは想像の力だ。故に、何度も魔法を使ったことのある魔導士はその形が強固なものとなり、強力な魔法が撃てる。
一方俺の場合は、地球にいた頃に見ていたアニメやら漫画やらのおかげで、それを補う事ができている。アニメーションの絵を想像するだけでお手軽に魔法の行使ができるのだ。これが唯一、この世界で役に立った力だろう。それでもチート能力とは全く言えないのだが。
その以前の知識を利用した魔法は俺にしか描けないわけで、つまり雷鳴鬼にもそれを覚えてもらう必要がある。
「学校に通う前にやっておくか……」
向こうではいつ戦闘になるか分からない。準備は十分にしていこう。俺はそう決意した。
メアのおかげで酔った二人をなんとか別室へと運ぶことが出来た。最初はめちゃくちゃ抵抗してきたのだが、しばらくすると気持ちよさそうな顔して寝始めたので、そのままにしておいた。
「イスルギがちゃんと抑えなきゃ駄目じゃん!」
「お、俺のせい……なのか?」
「うん。絶対そう」
「メアがそう言うなら、そうなのか……」
完全には納得できないが、きっとそうなのだろう。だってメアが言っているんだ。間違っているはずがない。
「私だってイスルギと飲みたかったのに……」
「ま、それはあと二年経ってからだな。楽しみにしてるぜ?」
この世界の飲酒は18歳からだ。吸血鬼界のルールはしらないが、メアの半分は人間なのだ。一応飲まない方が良いだろう。
「じゃあさ、誕生日になった瞬間に二人きりで乾杯したい……な?」
「ああ。もちろんだ。その時は盛大に祝おう」
その時はまだ学校だと思うが、里帰りという制度があるらしいのでそれを使えばいいだろう。
「二人きり……だからね?」
あくまで二人、という事を強調するその様子が俺にはとても突き刺さる。咄嗟に抱きしめたい衝動に駆られるが、近くにあった肉を食べて誤魔化した。
「それで……やっぱり学校は行くの?」
「うん、行くよ。メアの体質を治してやりたいしな」
「で、でもさ……これからはずっと一緒なんだし、無理に行かなくても……」
言葉を濁してそう口にする。メアはきっと心配なのだろう。人間の世界では、俺という存在は恐らく悪だ。気づかれることはないとは思うが、ゼロではない。危険も大いにある。俺自身、フリードに止められると思ってたくらいだ。
「メアの言いたいことは分かってるつもりだ」
「じゃ、じゃあ!」
パッと明るくなった顔を見て、一瞬言うのを躊躇うが、
「それでも……それでも俺は行くよ」
「どう……して……?」
俺は人間の国に行く。これはもう決めたことだ。
「……正直な話、フリードのためだ」
「お父さんの?」
「アイツにはさ、すげー感謝してんだ。俺が生きれるように色々与えてくれて、なんだかんだしっかり俺を見て、考えてくれてて」
フリードがいなければ俺はきっと死んでいた。人間が異世界人をどうしてるだとか、そこら辺はまだ分からないけど、あいつはきっと嘘を言っていない。これだけ長い期間一緒にいれば分かる。
「だから恩返しがしたい。今度こそ、ちゃんと」
俺の中でのあいつの存在はそれほどまでに大きくなっているのだ。そう、―――と呼びたいくらいに。
「フリードが俺に頼んだのはメアのためってのが第一だと思うけど、きっとメアのお母さんの残した物が気になるんだと思う。俺はそれを見つけたい。俺はそれを、フリードに渡したい。そう、思ったんだ」
俺しかできない。だからこそ意味がある。これは俺がフリードにできる、最高の恩返しだ。
「……そっか。それなら納得」
「メア……」
「またすぐ離れちゃうのは寂しいけど、その代わり行くまでは、うんと甘えちゃうんだから!」
気持ちを抑えて、俺がしたいことを優先させてくれる。メアには本当に頭が上がらないな。
「分かったよ。その間は俺も覚悟しとく」
▷▶▷
腹をいい感じに満たしつつ、使用人の人達とも一通り話して、今度はロイドのところに向かった。
「おー、お前らも食べてるかー?」
「肯定。ここまで盛大な夕食会は久しぶりです。」
「…………」
レイズも小さく頷き、反応を示す。
「そうだ。お前に付き合ってもらったアレ、実技で役に立ったぜ」
「重畳。それは良かったです。ですが、先程の戦いを見てもやはり練度が足りない。隙がありすぎるのがネックですね」
「そうなんだよなぁ……」
雷鳴鬼と戦う前から分かっていたことだが、あれは強敵相手には通用しない。その理由は詠唱が長いだとか消費魔力量が多いだとかなのだが、それらは一朝一夕で解決できるようなことではない。模擬戦闘でも、ロイド相手には発動する暇すらなかった。
「…………」
会話を聞いていたレイズが、指をくいっとジェスチャーしてロイドに何かを伝える。
「同意。確かにその手がありますね」
「なんでお前は話さなくても分かるんだよ……」
「疑問。逆になんで分からないのかが、分からないです」
二人してキョトンとした顔をしている。この感じ、マジだ。
「そんで、レイズはなんて言ってるんだ?」
「提案。あの鬼の少女の力を借りればいいと言っています」
「雷鳴鬼の?」
「肯定。要するに、詠唱、そして消費する魔力を半分請け負ってもらえばいい、ということです」
「そんなことできんの?」
「連携。呼吸を合わせる必要はありますが、可能です。見たところ相性も良さそうですし、練習次第ではかなり有用かと」
「呼吸を合わせる……かぁ……」
あのマイペースな鬼と呼吸を合わせることなど果たして可能なのだろうか。うまくいけば某忍者漫画みたいに、雷鳴鬼モードみたいなのとかできるのかな。
「詠唱の肩代わりなんかはすぐにできると思いますよ」
いつの間にかシルバーも傍に来ていて、そうアドバイスをしてくる。
「詠唱の肩代わりってあんまりイメージ湧かないんですけど、実際どんな感じなんですか?」
「そうですね……例えば、片方が詠唱しているのをもう一人が受け継ぐ、といった感じですね」
「詠唱を受け継ぐ……」
要は俺が「雷砲」と唱えたら、雷鳴鬼に「雷槍」と唱えてもらうといったところだろう。この場合だとあまり意味がなさそうだが、前半部分を雷鳴鬼に唱えてもらって、最後のみを唱える形なら瞬時に発動できるし、結構使えそうだ。
「そしたら何発も雷鳴鬼に見せなきゃな」
魔法はイメージの世界だ。その威力は魔力量に依存するが、それを引き出し、形にするのは想像の力だ。故に、何度も魔法を使ったことのある魔導士はその形が強固なものとなり、強力な魔法が撃てる。
一方俺の場合は、地球にいた頃に見ていたアニメやら漫画やらのおかげで、それを補う事ができている。アニメーションの絵を想像するだけでお手軽に魔法の行使ができるのだ。これが唯一、この世界で役に立った力だろう。それでもチート能力とは全く言えないのだが。
その以前の知識を利用した魔法は俺にしか描けないわけで、つまり雷鳴鬼にもそれを覚えてもらう必要がある。
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