異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

文字の大きさ
76 / 142
第三章 王立学校

プレゼント

しおりを挟む
 街の中心へと戻ってきた。昼間と比べると人の数が少し減ったかな、という印象を受けるがそれでも多い。流石、ここらでは一番大きい街なだけはある。

 中央の広場には屋台がいくつも出ていて軽いお祭り会場のようだ。いつ来てもここはこんな様子なので、どれくらい栄えているかがよくわかる。

 見渡していると、アイスクリーム屋が目についた。

「メア、あれ食べない? ていうか俺が食べたい」

「いいよ、行こ! 私もちょうど気になってたの!」

 デザート代わりのアイスを買って、ベンチに座って食べる。陽気な天気の下で、冷たいものを食べるこの時間、とても好きだ。

 俺が頼んだのはこの抹茶アイス。スプーンで掬って口に運びながら、懐かしい味を楽しむ。そういえばこの世界に抹茶があることを知ったときは死ぬほど喜んだな、と記憶が思い出される。

 屋敷では抹茶が好きな人がほとんどいなかったのだが、ジェイルさんがよく好んで飲んでいた。あの人が俺に抹茶という存在を教えてくれたのだ。以来、たまにジェイルさんの部屋に行き、茶をもらうことが俺の密かな楽しみとなったのだ。

「んん~、おいしい。イスルギも食べる?」

「おい、わかって言ってるだろ……」

「えへへ~、そんなことないよぉ~」

 メアが食べているのはストロベリー味だ。そして、俺の一番苦手な食べ物は苺だ。匂いですら、あまり嗅ぎたくない。

 抹茶とは正反対に、屋敷の苺信者は多い。マイノリティな俺の意見は中々通らず、面白がって無理やり食べさせてくるやつもいた。しかし、俺は断固とした態度でそれを跳ね除け、なんとか身の安全を確保していたのだ。

「苺の何がそんなにいいのかね」

 そう一言不満を零し、少し溶けかかったアイスの最後の一口を口に入れた。

 ▷▶▷

 買い食いをしたり、芸を見たりと広場付近の店を制覇する勢いで回っていく中、メアがある店の前で足を止めた。

「わぁ……」

「おぉ嬢ちゃん、何かいいのが見つかったかい?」

 どうやらアクセサリーの出店のようだ。店主をしている男は大柄で、言っちゃ悪いがアクセサリーを売るのに適していないほど顔が強面だ。

 店に並んでいる商品はシンプルだが、なかなかに悪くないデザインだと思う。俺のセンスはあてにならないが、メアが目を奪われている様を見ればあながち間違っていないだろう。

「これ、すごい可愛い……!」

 そう言って手に取ったブローチは、小さいながらその輝きをもって迫力というか存在感がある。淡いピンク色をしたそれは、まさにメアのためにあるのではないかと思うほどにピッタリだ。

「いいセンスだ。それは遥か遠方の国でしか取れない魔石で出来てるんだ。お嬢ちゃんの雰囲気にもぴったりだと思うぜ」

「ほ、本当ですか?」

「ああ、もちろん。そこの坊主もそう思うよな?」

 店主のおっさんはウィンクをして、俺にパスを回してくれた。商売上手だなとおもいつつ、

「もちろん。メアにすげー合ってると思う。せっかくだし俺が買ってプレゼントするよ」

「いいの!? やった! ありがとう、イスルギ!」

 か、かわいすぎる……

 喜びが全身に表れている姿にほっこりする。孫についついおもちゃを買ってしまう全国のおじいちゃんの気持ちが少しわかった気がする。

「せっかくだしあの二人のもお土産で買うか。メア、何が良いと思う?」

「うーん、私が選んでもいいけど……あの二人ならやっぱり、イスルギに選んでほしいんじゃない?」

「うっ……そ、そうか……」

 確かにそんな気はするが、俺のセンスに任されると思うと気が重くなる。どれだ、どれがいい?

 悩んでいると、その中の二つが俺の目に留まった。

「これと、これ……」

 手に取ったのは、雪の結晶の形をした髪飾りに、月の形をしたネックレス。それぞれ、シャロとティアのイメージと脳内でマッチした。

「うん、いいんじゃない!」

「よし、じゃあすみません。この3つをください」

「毎度あり」

 会計を済ませ、ブローチをメアに、そして残りは袋に丁寧に入れてもらった。

「にしても、坊主モテるんだなぁ。まぁ顔も結構良いし、そりゃ女が放っておかねぇか!」

「ははは、そう言われると照れますね」

 お世辞だとしても嬉しいものは嬉しい。おっさんの思うつぼかもしれないが、機会があったらまた来たいな。

 帰り道、メアはさっそくそのブローチを服につけていた。物をプレゼントするのは初めてだが、こうやって喜んでくれると言語化できないような幸せな気持ちが奥から湧き上がってくる。

「今日は楽しかった! また、来たいね」

「そうだなぁ。ま、少し我慢すればいつでも来れるようになるから。な?」

「期待……していい?」

「大船に乗ったつもりでいてくれ。なんなら、もっと遠くだって行ってやろうぜ!」

「うん! 約束!」

 夕日に照らされ、二つの影が繋がれる。胸に膨らむ幸せな気持ちを噛み締めながら、俺達は屋敷へと帰った。

 ▷▶▷

「おお、いいのか!?」

「すごい、綺麗です……」

「二人にもってことで俺が選んだんだが……」

「ありがとな! すごい気に入った!」

「ええ、すっごく。大事にしますね」

 選んだ二つのアクセサリーはかなりの好評だった。その日から毎日つけてくれるようになり、俺としてもかなり満足だ。おっさん、ナイス。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム) 目を覚ますとそこは石畳の町だった 異世界の中世ヨーロッパの街並み 僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた 案の定この世界はステータスのある世界 村スキルというもの以外は平凡なステータス 終わったと思ったら村スキルがスタートする

無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜

黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。 ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。 彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。 賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。 地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す! 森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。 美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。 さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる! 剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。 窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...