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第三章 王立学校
仲直り
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今回の騒動……というか、事の顛末はあっけないもので、俺とガルドの決着がついたすぐ後、校内にいた教師が現場に駆け付け、意識を失ったガルドは医務室へ、俺は事情聴取を受けることとなった。
説明を求められた俺は、単に喧嘩をしただけ、と主張し続けた。喧嘩にしてはやりすぎだということは現場の状態から見ても明らかで、教師も疑念を向けてきていたのだが、目を覚ましたガルドが話を合わせてくれたらしく、それ以上追及されることはなかった。
もちろん、教室の一部を破壊してしまったためお咎めなしとはいかず、俺もガルドも一週間の謹慎処分を食らった。
教師からは大目玉を食らい、同級生からは白い目で見られ、シャロ達にはもっと頼れと怒られてしまった。
そして現在、あらためて担任の先生に話を聞かれている。
「それで……どうして喧嘩したかとかは……」
「些細な言い争いから発展しただけです」
「はぁ……まさか優等生の君たちが問題を起こすとは一ミリも思わなかったよ……」
「す、すみません……」
この武闘祭最終日というタイミングでやらかしたのは非常に申し訳ない。しかし、事情が事情だ。後悔はない。
俯く俺に先生は椅子に深く座り直し、
「ま、それも青春かな!」
怒ることもなく、そう楽観的に話す。
教師としてそれでいいのか?と思うところはあるが、こちらとしてはありがたい。
「あ、そういえばうちのクラスは四位に入ったんだよ。いやはや、大健闘も大健闘だね!」
「そうなんですか?」
閉会式に出れなかったので、今ここで初めて知った。確かに、どの部門でも一位は取れてはいないが、割と上位に名前を残すことはできていた。二年生という立場なら十分良い結果と言えるだろう。
「それで、お祝いも兼ねた慰安旅行を僕の実費で計画してたんだけど、君たちが問題起こすからさー」
「そ、それは……すみません」
「まぁ、クラスに貢献したガルド君と君を除け者にして行くっていうのも違うから、それはまた今度行けばいいよ」
「はぁ……」
「とにかく、一週間きっちり反省して、また戻ってくること! いいね?」
「は、はい!」
フォルト先生が生徒に人気の理由が少しわかった気がする。いい意味で、生徒との距離が近いんだ。同じ目線に立って話してくれているというのが良く伝わってくる。
話が終わり、一礼をして俺は立ち去ろうとする。
すると、「あ」と先生は俺を引き留め、白衣のポッケに手を入れ、
「そうだ、これを君に」
俺に一枚の紙を手渡してくる。
「これは?」
「ガルド君からだ。君と二人で話がしたいそうだよ」
手紙には、『屋上で待つ』とだけ書かれている。
屋上……行ったことないな。
「喧嘩してすぐの君たちをまた会わせるってのも心配だけど……その顔を見た感じ、もう平気そうだね」
「はい。ありがとうございます」
きっとフォルト先生じゃなきゃ、許してくれなかっただろう。先生には感謝しかない。俺達の謹慎が一週間で済んだのも先生のおかげだと聞いている。
つくづく頭があがらないな。
こうして俺はもう一度深く先生に頭を下げ、屋上へと向かった。
▷▶▷
「……来たか」
「怪我は平気か?」
「ああ。あのくらい大丈夫だ」
「お、おう……」
結構しっかり魔法が入ったと思ったのだが、もう動けるのか。
「イスルギ……すまなかった」
ガルドはそう言って頭を深く下げる。
「そして、止めてくれて感謝する」
己の行いを恥じるような態度が言葉から伝わってくる。これは目を覚まさせられたってことでいいんだよな。
「あの時は何故か、溢れ出る感情が制御できなかった。どうしても、ああする以外に手段がないと……そう思ってしまったんだ」
「頭上げてくれ。俺は単に自分のエゴでお前を止めただけだ。そんで、お前が悩んでいたのに気づけなかった俺にも責任はある」
あの時、ガルドに真実を打ち明けてから俺は、ガルドの心の闇に気づくことが出来なかった。肉親が亡くなって、恨みを抱えないわけがないのに、そのケアを怠ったのは紛れもない俺の責任だ。
「ま、俺から言いたいのは一個だけだ」
言いそびれた。言うべきだった。その一言でどれだけ救われるかを、俺は良く知っている。
「頼れ。何か悩んだら、真っ先に俺を思い浮かべろ」
「イスルギ……」
「俺にできることなんて限られてるし、頼りないかもしんねぇ。でもな、一緒に悩まさせてくれ」
ガルドは優しい。父親に似て寡黙で、なのに人を思いやる心はあって、それで……自分ですべてを抱えてしまう。
そんなガルドの助けになりたいと、頼ってもらえる人で在りたいと思っていた。
でも、思うだけじゃ伝わらないよな。
「こう見えても俺、年上だしさ、頼って欲しいんだよ。あ、もちろん俺が頼ることもある。でも、そんなのお互い様だ。それが、友達ってモンだろ?」
「とも……だち……」
「ああそうだ。友達だ。友達だから、たまには喧嘩くらいもする」
「……」
「で、これで仲直りだ」
そう言って、俺はガルドに右手を差し出す。
ガルドはそれを見つめ、動く様子はない。
再び、「ほら」と手をさらに前に出して、ガルドの手を待つ。
ガルドは戸惑いながらも手を出し、それを宙に彷徨わせる。未だに思うところがあってうまく飲み込めないのだろう。
その迷子の手を無理やりこちらから迎えにいき、強く手を握る。
少し驚いた表情を見せるガルド。だが、心なしか不安が取り除かれたように見えた。
「いいのか……俺はお前を……殺そうとした」
「いいんだよ。大事なのは今だ。今、俺は死んでねぇ。それにガルドも生きてて俺からすればハッピーエンドでしかないね」
「しかしっ―――」
「あーうるせぇ!! あんまごちゃごちゃ言ってっと、また直に電撃浴びせるぜ?」
「それは……」
「償う必要なんかねぇ。もし、それでもどうしても気が済まないって言うんなら……」
「言うなら?」
「学食、一週間お前のおごりな?」
ガルドは顔をポカンとさせ、目を見開く。
「そんな……ことで?」
「ああ、十分だ。本来ならいらないって言うべきところを、少し自分の欲を出させてもらった。言ったからには、ノーは言わせねーぞ?」
「あ、ああ、もちろんだが……」
それでもガルドは納得のいかない顔をしている。
きっとどうやっても、ガルドは納得をしないだろう。
それがガルドという男なのだ。
だから、無理やりにでも飲み込ませるしかない。
「よし、じゃあこの話はおしまい。お互い、気長に謹慎期間楽しもうぜ」
ガルドの肩をポンと叩き、俺は屋上の出口へと向かう。
その俺の後ろ姿をガルドは眺め、
「イスルギ、あらためて感謝を……ありがとう」
投げかけられる礼に俺は振り返り、手を上げ、
「おう! また一週間後な!」
こうして、わだかまりはなくなり、俺の武闘祭は幕を下ろしたのだった。
説明を求められた俺は、単に喧嘩をしただけ、と主張し続けた。喧嘩にしてはやりすぎだということは現場の状態から見ても明らかで、教師も疑念を向けてきていたのだが、目を覚ましたガルドが話を合わせてくれたらしく、それ以上追及されることはなかった。
もちろん、教室の一部を破壊してしまったためお咎めなしとはいかず、俺もガルドも一週間の謹慎処分を食らった。
教師からは大目玉を食らい、同級生からは白い目で見られ、シャロ達にはもっと頼れと怒られてしまった。
そして現在、あらためて担任の先生に話を聞かれている。
「それで……どうして喧嘩したかとかは……」
「些細な言い争いから発展しただけです」
「はぁ……まさか優等生の君たちが問題を起こすとは一ミリも思わなかったよ……」
「す、すみません……」
この武闘祭最終日というタイミングでやらかしたのは非常に申し訳ない。しかし、事情が事情だ。後悔はない。
俯く俺に先生は椅子に深く座り直し、
「ま、それも青春かな!」
怒ることもなく、そう楽観的に話す。
教師としてそれでいいのか?と思うところはあるが、こちらとしてはありがたい。
「あ、そういえばうちのクラスは四位に入ったんだよ。いやはや、大健闘も大健闘だね!」
「そうなんですか?」
閉会式に出れなかったので、今ここで初めて知った。確かに、どの部門でも一位は取れてはいないが、割と上位に名前を残すことはできていた。二年生という立場なら十分良い結果と言えるだろう。
「それで、お祝いも兼ねた慰安旅行を僕の実費で計画してたんだけど、君たちが問題起こすからさー」
「そ、それは……すみません」
「まぁ、クラスに貢献したガルド君と君を除け者にして行くっていうのも違うから、それはまた今度行けばいいよ」
「はぁ……」
「とにかく、一週間きっちり反省して、また戻ってくること! いいね?」
「は、はい!」
フォルト先生が生徒に人気の理由が少しわかった気がする。いい意味で、生徒との距離が近いんだ。同じ目線に立って話してくれているというのが良く伝わってくる。
話が終わり、一礼をして俺は立ち去ろうとする。
すると、「あ」と先生は俺を引き留め、白衣のポッケに手を入れ、
「そうだ、これを君に」
俺に一枚の紙を手渡してくる。
「これは?」
「ガルド君からだ。君と二人で話がしたいそうだよ」
手紙には、『屋上で待つ』とだけ書かれている。
屋上……行ったことないな。
「喧嘩してすぐの君たちをまた会わせるってのも心配だけど……その顔を見た感じ、もう平気そうだね」
「はい。ありがとうございます」
きっとフォルト先生じゃなきゃ、許してくれなかっただろう。先生には感謝しかない。俺達の謹慎が一週間で済んだのも先生のおかげだと聞いている。
つくづく頭があがらないな。
こうして俺はもう一度深く先生に頭を下げ、屋上へと向かった。
▷▶▷
「……来たか」
「怪我は平気か?」
「ああ。あのくらい大丈夫だ」
「お、おう……」
結構しっかり魔法が入ったと思ったのだが、もう動けるのか。
「イスルギ……すまなかった」
ガルドはそう言って頭を深く下げる。
「そして、止めてくれて感謝する」
己の行いを恥じるような態度が言葉から伝わってくる。これは目を覚まさせられたってことでいいんだよな。
「あの時は何故か、溢れ出る感情が制御できなかった。どうしても、ああする以外に手段がないと……そう思ってしまったんだ」
「頭上げてくれ。俺は単に自分のエゴでお前を止めただけだ。そんで、お前が悩んでいたのに気づけなかった俺にも責任はある」
あの時、ガルドに真実を打ち明けてから俺は、ガルドの心の闇に気づくことが出来なかった。肉親が亡くなって、恨みを抱えないわけがないのに、そのケアを怠ったのは紛れもない俺の責任だ。
「ま、俺から言いたいのは一個だけだ」
言いそびれた。言うべきだった。その一言でどれだけ救われるかを、俺は良く知っている。
「頼れ。何か悩んだら、真っ先に俺を思い浮かべろ」
「イスルギ……」
「俺にできることなんて限られてるし、頼りないかもしんねぇ。でもな、一緒に悩まさせてくれ」
ガルドは優しい。父親に似て寡黙で、なのに人を思いやる心はあって、それで……自分ですべてを抱えてしまう。
そんなガルドの助けになりたいと、頼ってもらえる人で在りたいと思っていた。
でも、思うだけじゃ伝わらないよな。
「こう見えても俺、年上だしさ、頼って欲しいんだよ。あ、もちろん俺が頼ることもある。でも、そんなのお互い様だ。それが、友達ってモンだろ?」
「とも……だち……」
「ああそうだ。友達だ。友達だから、たまには喧嘩くらいもする」
「……」
「で、これで仲直りだ」
そう言って、俺はガルドに右手を差し出す。
ガルドはそれを見つめ、動く様子はない。
再び、「ほら」と手をさらに前に出して、ガルドの手を待つ。
ガルドは戸惑いながらも手を出し、それを宙に彷徨わせる。未だに思うところがあってうまく飲み込めないのだろう。
その迷子の手を無理やりこちらから迎えにいき、強く手を握る。
少し驚いた表情を見せるガルド。だが、心なしか不安が取り除かれたように見えた。
「いいのか……俺はお前を……殺そうとした」
「いいんだよ。大事なのは今だ。今、俺は死んでねぇ。それにガルドも生きてて俺からすればハッピーエンドでしかないね」
「しかしっ―――」
「あーうるせぇ!! あんまごちゃごちゃ言ってっと、また直に電撃浴びせるぜ?」
「それは……」
「償う必要なんかねぇ。もし、それでもどうしても気が済まないって言うんなら……」
「言うなら?」
「学食、一週間お前のおごりな?」
ガルドは顔をポカンとさせ、目を見開く。
「そんな……ことで?」
「ああ、十分だ。本来ならいらないって言うべきところを、少し自分の欲を出させてもらった。言ったからには、ノーは言わせねーぞ?」
「あ、ああ、もちろんだが……」
それでもガルドは納得のいかない顔をしている。
きっとどうやっても、ガルドは納得をしないだろう。
それがガルドという男なのだ。
だから、無理やりにでも飲み込ませるしかない。
「よし、じゃあこの話はおしまい。お互い、気長に謹慎期間楽しもうぜ」
ガルドの肩をポンと叩き、俺は屋上の出口へと向かう。
その俺の後ろ姿をガルドは眺め、
「イスルギ、あらためて感謝を……ありがとう」
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