林間学校に待ち受ける異次元のワナ

Ryo

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4.異常なキャンプファイヤー

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 富士山と――なんだか妙に恐ろしい――青空を楽しんだぼくらは、来たときとはまた別のルートを通って宿泊施設のコトリ荘に戻った。
 帰りはあっという間だったなあ。
 夕食前に入浴の時間があるんだけど、ここでまたひと騒動。

「やばい! バスタオル忘れた!」

 叫んだのはもちろん、忘れ物王ケンだ。
 コトリ荘の風呂は大浴場。
 ホテルじゃないから、タオルが用意されているなんてことはない。
 このままではケンは、ビショぬれのまま夕食の席につかなければならない大ピンチに!
 しかしそこへ、ドクという名の救いの神がさっそうと登場する。

「ボクのバスタオルを貸してあげるよ。頭を乾かす用のタオルと両方持ってきたんだ。二枚も使うほどじゃないからさぁ」

「ドクぅー! ありがとう、恩に着るぜー!」

 うんうん、持つべきものは用意のいい友人だよね。
 なんだか見たことのある光景だぞ……そうだ、『ドラゴン・オデッセイ』だ。
 オンラインで集まって四人でボスと戦うとき、ケンは攻撃役の戦士でドクは回復役の神官なんだ。
 ボス戦では弱点をついてボスをダウンさせたとき、パワーアップのまほう薬を使って全員でいっせいに攻撃するのが一番いいんだけど……ケンはいつも集合してからまほう薬を忘れたといいだすんだ。
 そうするとドクが、「しょうがないなぁ」っていいながらその場でアイテムを作ってあげる。
 まさかここでも同じような展開になるとはね。

 なんてアツい友情に気持ちを和ませながら、手早く服を脱いでひと足先に大浴場へ。
 体と頭を洗ってから湯船に浸かる。
 全然、なんでもないようにふるまっているけれど、実はけっこう緊張しているんだ。
 だってぼく、お風呂屋さんや温泉に行ったことがないんだよね。
 テレビの旅番組なんかでなんとなく雰囲気はわかっていたけれど、本当は湯船の大きさにビビっていた。
 深さがわからないから、足が着かなかったらどうしようかと思ったよ。
 でもふつうに足は着いた。
 それより、お湯が家の風呂よりかなり熱かったのがビックリだった。

 あとはそう……すっぱだかになってから、前をかくすかどうかという問題。
 お母さんには、腰にタオルを巻いて入るって教わったのに、先生からの説明では浴室内にタオルを持ちこんじゃダメってなって。
 そんなの聞いてないよ! 心の準備が!
 しかたなく前をかくして入ろうとしたら、フルオープンのケンが「なんだぁ、はずかしがってんのかー?」とゲラゲラわらった。
 さっきまでバスタオルがなくて涙目だったのに、調子いいなあ……。

 体と頭をあらって湯船につかっていると、隣にドクがやってきた。
 ドクは物知りだから、きっとこういう大浴場にも行ったことがあるんだろうな……と勝手に思っていたら。

「いやぁ、こういうお風呂初めて入ったけど、お湯が熱すぎるよねぇ」

「ドクもかーい!」

 思わずツッコミを入れると、今度はケンがやってきて肩までお湯に浸かった。

「ハァー……生き返るなー!」

 それ、よくお父さんがいうヤツじゃない?
 ケンって、こんなオッサンキャラだったっけ?

「リラックスするには少し、温度が高い気がするけれどね」

「そんな甘っちょろいこというもんじゃないぜー。風呂ってのはな、熱くてナンボだ。この熱さが血の流れを良くして、健康にしてくれるんだぞ」

「……確かに、間違ってないね」

 ケンのたびかさなるオッサン発言に、ドクがちょっと考えてからうなずいた。
 なんなんだケン、意外なところで物知りなんだな。
 それから三人並んで大きな湯船を楽しんでいたんだけれど、ちょっとヘンなことに気づいた。

「なんだか寒気がしない?」

「おっ、カズキもそう思うか? 実はオレもなんだよ」

「わかるよ。お湯は熱いんだけれど、体がちっとも暖まらないというか……むしろ寒いような」

 どうやら全員同じように感じていたらしい。
 うまく伝わるかわからないけれど、高熱をだして寝込む直前みたいな、熱いはずなのに体がブルブル震えてしまうような、そんな感じなんだ。
 熱いと感じるのが正解なのか、寒いと感じるほうが正しい感覚なのか自信がなくなってくる。
 このまま入り続けていると、のぼせるかこごえるか……どっちだろう?

「出よう」

 ぼくの言葉を待ちかねていたかのように、ドクとケンは同時にザブンと音をさせて立ち上がった。
 もうこれ以上、湯船に浸かっていたくないとでもいいたげだ。
 もちろん、いいだしっぺのぼくも勢いよく立ち上がって脱衣所に向かった。
 そうそう。
 ドクはケンにバスタオルを貸したから自分はフェィスタオルで体をふいていたんだけれど、まったく問題なかった。
 カゼを引く心配もなさそうで、なによりだね。
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