9 / 13
9
しおりを挟む
「糞まじい」
コクがなく薄い。その割に妙に喉に残る後味の悪さだ
やっぱり爺の血は飲めたもんじゃないと、悪魔は顔をしかめた。
握り潰し血を絞った心臓を床に転がる魔術師の体にたたき付ける。
ぶつかった心臓が残った血をびちゃりと飛び散らせ灰色の石畳を赤く染めた。
(でもまぁ、魂は少し期待できっかもな)
魔術師の体の上を浮遊する灰色の球体。
ゆらゆらと陽炎をたゆたせるそれに悪魔は手を伸ばす。
悪魔にとって魂は嗜好品だ。
人間で言う甘味のようなものだ。
心が濁っていればいるほど魂は黒く濁る。
逆に生まれたての赤子のように濁りがなければ、魂は白く清んでいる。
清んでいる魂と濁った魂。どちらの方がより美味いのか。
濁っていればいるほどどろどろに甘く、清んでいればいるほど穏やかで柔らかな甘さ。
悪魔の間でもよく議論になるが、これは完全に好みの話で悪魔自身は濁った魂の方が好みである。
口を大きく開き男の魂を口に入れる。
三度舌の上で転がすともったりとした甘味が広がった。
痺れるようなどろどろとした甘さとは程遠い、小悪党の味だ。
それを数秒堪能し、そのまま噛まずにごくりと飲み干した。
一瞬、体に熱が点る感覚がして、それはすぐに消えた。
飲み込んだ魔術師の魂が悪魔に消化されたのだ。
悪魔は自分の腹を一撫ですると、先程まで魔術師であった塊にはもう目は向けず歩き出す。
「あ、そうだ」
言って左手を握る。
と、背後で甲高い音が一瞬鳴りすぐに静かになった。
「食ったら片付けはしとかないとな」
その言葉の通り、背後にあった肉の塊は一欠けら、血の一滴も残さず消えていた。まるで初めから何もなかったかのように。
コクがなく薄い。その割に妙に喉に残る後味の悪さだ
やっぱり爺の血は飲めたもんじゃないと、悪魔は顔をしかめた。
握り潰し血を絞った心臓を床に転がる魔術師の体にたたき付ける。
ぶつかった心臓が残った血をびちゃりと飛び散らせ灰色の石畳を赤く染めた。
(でもまぁ、魂は少し期待できっかもな)
魔術師の体の上を浮遊する灰色の球体。
ゆらゆらと陽炎をたゆたせるそれに悪魔は手を伸ばす。
悪魔にとって魂は嗜好品だ。
人間で言う甘味のようなものだ。
心が濁っていればいるほど魂は黒く濁る。
逆に生まれたての赤子のように濁りがなければ、魂は白く清んでいる。
清んでいる魂と濁った魂。どちらの方がより美味いのか。
濁っていればいるほどどろどろに甘く、清んでいればいるほど穏やかで柔らかな甘さ。
悪魔の間でもよく議論になるが、これは完全に好みの話で悪魔自身は濁った魂の方が好みである。
口を大きく開き男の魂を口に入れる。
三度舌の上で転がすともったりとした甘味が広がった。
痺れるようなどろどろとした甘さとは程遠い、小悪党の味だ。
それを数秒堪能し、そのまま噛まずにごくりと飲み干した。
一瞬、体に熱が点る感覚がして、それはすぐに消えた。
飲み込んだ魔術師の魂が悪魔に消化されたのだ。
悪魔は自分の腹を一撫ですると、先程まで魔術師であった塊にはもう目は向けず歩き出す。
「あ、そうだ」
言って左手を握る。
と、背後で甲高い音が一瞬鳴りすぐに静かになった。
「食ったら片付けはしとかないとな」
その言葉の通り、背後にあった肉の塊は一欠けら、血の一滴も残さず消えていた。まるで初めから何もなかったかのように。
0
あなたにおすすめの小説
キズモノ令嬢絶賛発情中♡~乙女ゲームのモブ、ヒロイン・悪役令嬢を押しのけ主役になりあがる
青の雀
恋愛
侯爵令嬢ミッシェル・アインシュタインには、れっきとした婚約者がいるにもかかわらず、ある日、突然、婚約破棄されてしまう
そのショックで、発熱の上、寝込んでしまったのだが、その間に夢の中でこの世界は前世遊んでいた乙女ゲームの世界だときづいてしまう
ただ、残念ながら、乙女ゲームのヒロインでもなく、悪役令嬢でもないセリフもなければ、端役でもない記憶の片隅にもとどめ置かれない完全なるモブとして転生したことに気づいてしまう
婚約者だった相手は、ヒロインに恋をし、それも攻略対象者でもないのに、勝手にヒロインに恋をして、そのためにミッシェルが邪魔になり、捨てたのだ
悲しみのあまり、ミッシェルは神に祈る「どうか、神様、モブでも女の幸せを下さい」
ミッシェルのカラダが一瞬、光に包まれ、以来、いつでもどこでも発情しっぱなしになり攻略対象者はミッシェルのフェロモンにイチコロになるという話になる予定
番外編は、前世記憶持ちの悪役令嬢とコラボしました
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
真面目な王子様と私の話
谷絵 ちぐり
恋愛
婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。
小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。
真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。
※Rシーンはあっさりです。
※別サイトにも掲載しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる