セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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「課長、社労士会議10時からB会議室です。資料確認してください」
「…はい」

「清水さん、帳簿チェック12時までです。領収書が不足しているので関係部署に至急確認してください」
「…はい」

「谷くん、倉庫の商品確認ありがとう。午後は私も行くので棚卸票の確認だけお願い」
「はい」

決算期。経理課は目の回る忙しさである。

「…主任何かあったんですかね」
「…でしょうね」
「フラれたんすかね」

無駄話をしている余裕は一ミリたりともない。

「私語厳禁!」
「ひぃっ、鬼や。鬼がおる…」
「清水さん、仕事しましょう」

仕事に集中しろ。仕事に集中しなきゃ。

油断すると、思い出してしまう。

おでこに触れた唇の感触。低く囁く甘い声。
真摯な眼差し。髪をなでる指。耳をくすぐる吐息。

ゴン!
机に突っ伏せる。

「主任? 大丈夫ですか?」
「…ちょっと、伝票確認してきます」

…おでこが熱い。
「ナミちゃーん、予約って何ーーーっ!?」

午前3時の迷惑電話に、ナミちゃんは怒らなかった。
「イクがまだ時々夜泣きするから慣れてる」と言って。女神かな。

「それって、あおいの気持ちが追い付くまで待ってくれるってことじゃない?」

気持ちが追い付くまで…

まだ明けない夜の街。物静かな暗がり。
窓の外に浮かぶぼんやりとした月。
お風呂に入りすぎてのぼせた身体を扇ぐ。

桐生さんは、なんで私のこと、何でもわかるんだろう。

「あおい、良かったね。奥さんなし。大人で間違いなし。きっと幸せにしてくれるよ」
「…うん」

ナミちゃんの言うことは正しい。

柚木紘弥はもういない。

なのに。

ぼんやりした月は、私の代わりに泣いているみたいだった。



年度末は仕事に徹した。
終電で帰って、始発で出かけた。
サプリメントとドリンク剤を大量摂取した。
寝不足で立ちくらみがして、抜け毛が増えた。

肌荒れしてファンデーションはなじまないし、隈も消えない。

電車を乗り過ごして、会社に遅刻しそうになった。
駅の階段でバックの中身をぶちまけて、通勤中の皆さんを邪魔してしまった。
近年まれにみる猛ダッシュで会社に駆け込み、
酸欠状態で息を喘がせたから、幻覚を見た、んだと思った。

え、…

「も~、主任遅いですよ。新人さん、来ちゃったじゃないですかぁ」

清水さんの浮き浮きした声が現実離れして聞こえる。

なんで、…

長い脚。伸びた背筋。新品のスーツ。
柔らかい髪。長いまつ毛。少し掠れた甘い声。

「経理課に配属されました、藤倉紘弥です」

経理課に、柚くんがいる。
これって、リアル地獄なんじゃないでしょうか。
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