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柚くんが、動揺する私を見て、かすかに笑いながらお弁当を食べ始めた。
あ。
再会してから初めて見た。柚くんの笑顔。
そう。柚くんに笑ってほしくて。
笑ってくれたらそれだけで幸せで。
無邪気な、子どもみたいな笑顔が好きで。
好きで好きで好きで。
「ほぉ~、藤倉くんは料理男子ってやつか。そりゃあモテるんだろうね。なんだっけ、ほら、リア充?」
ふいに涙が込み上げそうになって、私は慌てておむすびにかじり付いた。
「いえ、全然。逃げられてばかりで」
爽やかに切り返す柚くんに、むせそうになる。
逃げ…
「ははは、わかるよ。女ってのは勝手だからね。追えば逃げるし、追わなきゃ拗ねるし」
「…ですね」
って納得するんかーい!
などという突っ込みは、目の端でチラリと私を捉えた視線の前に為す術もなく、無駄にドキドキして終わった。
…ギブです。
鬼の勢いで残りのおむすびを口に詰め込んで、半ば逃げるように控室を出た。
そのままトイレに駆け込み、脱力して座り込む。
はああああ。死ぬ。
もう無理。
同じ会社ってだけでもツラいのに、同じ課なんてひどすぎる。
忘れられるわけない。
柚くんが近すぎる。
柚くんはなんか、全然普通だったけど。
そう思って、胸の奥がまたチクリと痛む。
とっくに過去は割り切っているから、既に奥さんもいるから、
だから普通なんだよね。
『お前、不器用すぎ』
ふいに過去の情景が浮かぶ。
そういえば、父子家庭の柚くんは自分で夕食を作っていた。
『絶対、俺のが上手い』
私より、ずっとずっと手際が良くて、
いつか食べさせてくれたミネストローネが、温かくて優しい味で、お腹の底から元気が湧いて心が満たされたのを思い出す。
…食べさせてもらえばよかったかな。
女々しいことを思いそうになって、ため息とともに頭を振り、トイレを出たところで、結子さんにつかまった。
「あ、あおちゃ~ん。探したよ」
なぜだろう、相変わらず可愛らしさ抜群の笑顔なのに、空恐ろしい感じがするのは。
「ゆ、結子さん、こんにちは。先日はありがとうございました」
なんとなく後ずさりしながら、必死で笑顔を作る。
「やだ、あおちゃん。なんか警戒してる? 大丈夫だよ。颯人と付き合ってるわけでもないんだし」
とたんに、桐生さんの熱を帯びた眼差しと甘い言葉を思い出し、背筋が凍った。
…これはかなり、ヤバいのでは。
「今日は常務に頼まれて。これ、過去の役員会の議事録だから、経理課でもサーバに入れて保管しておいてねって」
私の冷や汗には気づかないふりで、結子さんはにこにこ笑顔のまま、USBメモリを手渡した。
「はあ、…」
「じゃあ、またね~」
本当に用件はそれだけだったようで、結子さんは颯爽と上階へ去って行った。
なんかもう、いろいろツラい。
午後は柚くんが新入社員研修で席を空けていたので、黙々と仕事に精を出した。
そして、勤務時間終了間際、突然パソコンがバグり出し、決算関係のデータが全てとんだ。
あ。
再会してから初めて見た。柚くんの笑顔。
そう。柚くんに笑ってほしくて。
笑ってくれたらそれだけで幸せで。
無邪気な、子どもみたいな笑顔が好きで。
好きで好きで好きで。
「ほぉ~、藤倉くんは料理男子ってやつか。そりゃあモテるんだろうね。なんだっけ、ほら、リア充?」
ふいに涙が込み上げそうになって、私は慌てておむすびにかじり付いた。
「いえ、全然。逃げられてばかりで」
爽やかに切り返す柚くんに、むせそうになる。
逃げ…
「ははは、わかるよ。女ってのは勝手だからね。追えば逃げるし、追わなきゃ拗ねるし」
「…ですね」
って納得するんかーい!
などという突っ込みは、目の端でチラリと私を捉えた視線の前に為す術もなく、無駄にドキドキして終わった。
…ギブです。
鬼の勢いで残りのおむすびを口に詰め込んで、半ば逃げるように控室を出た。
そのままトイレに駆け込み、脱力して座り込む。
はああああ。死ぬ。
もう無理。
同じ会社ってだけでもツラいのに、同じ課なんてひどすぎる。
忘れられるわけない。
柚くんが近すぎる。
柚くんはなんか、全然普通だったけど。
そう思って、胸の奥がまたチクリと痛む。
とっくに過去は割り切っているから、既に奥さんもいるから、
だから普通なんだよね。
『お前、不器用すぎ』
ふいに過去の情景が浮かぶ。
そういえば、父子家庭の柚くんは自分で夕食を作っていた。
『絶対、俺のが上手い』
私より、ずっとずっと手際が良くて、
いつか食べさせてくれたミネストローネが、温かくて優しい味で、お腹の底から元気が湧いて心が満たされたのを思い出す。
…食べさせてもらえばよかったかな。
女々しいことを思いそうになって、ため息とともに頭を振り、トイレを出たところで、結子さんにつかまった。
「あ、あおちゃ~ん。探したよ」
なぜだろう、相変わらず可愛らしさ抜群の笑顔なのに、空恐ろしい感じがするのは。
「ゆ、結子さん、こんにちは。先日はありがとうございました」
なんとなく後ずさりしながら、必死で笑顔を作る。
「やだ、あおちゃん。なんか警戒してる? 大丈夫だよ。颯人と付き合ってるわけでもないんだし」
とたんに、桐生さんの熱を帯びた眼差しと甘い言葉を思い出し、背筋が凍った。
…これはかなり、ヤバいのでは。
「今日は常務に頼まれて。これ、過去の役員会の議事録だから、経理課でもサーバに入れて保管しておいてねって」
私の冷や汗には気づかないふりで、結子さんはにこにこ笑顔のまま、USBメモリを手渡した。
「はあ、…」
「じゃあ、またね~」
本当に用件はそれだけだったようで、結子さんは颯爽と上階へ去って行った。
なんかもう、いろいろツラい。
午後は柚くんが新入社員研修で席を空けていたので、黙々と仕事に精を出した。
そして、勤務時間終了間際、突然パソコンがバグり出し、決算関係のデータが全てとんだ。
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