セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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幸せな誕生日の余韻冷めやらぬまま、迎えた翌日。
朝の報道番組で、美雨さんが怪我をしたことを知った。

『モデルmiu 刺され軽傷』

『18日午前5時40分ごろ、都内世田谷区の路上で、モデルのmiu(本名:藤倉美雨)さんが何者かに腕などを刺され軽傷を負った。刺した人物は逃走しており、所轄の警察署で行方を追っている。現場は住宅街で、目撃者はいなかった。刃物は残っておらず、持ったまま逃走したとみられる。
 逃走した人物の年齢や性別は不明。体格は中肉中背で、帽子をかぶっていた。同署は周辺の防犯カメラを調べるなどしている。』

頭から冷水を浴びせられた気分だった。
軽はずみに愛を叫んだことを咎められたような気がした。

朝食は喉を通らず、機械的に着替えて出社したが、どんよりした曇り空がますます心を重たくした。

その日、柚くんは会社を休んだ。

「美雨ちゃんの事件があったからですよね。…以前からストーカーに狙われてたって話もあるし。心配ですね」

清水さんもどことなく元気がない。

重苦しい空気の中、業務をこなしたが、全然はかどらなかった。

昼食をとっている控室が、うすら寒く感じる。
1人でコンビニおむすびを食べるのが日常だったのに、空いている隣の席が心細い。

柚くんにミネストローネもらったの、昨日のことなのに。

「橘ちゃん、今日もシャケおにぎり、…持ってないの? 結婚諦めたの?」

真鍋部長のセクハラ発言は本格的にどうでもいい。

…いつの間にこんなに贅沢になっていたんだろう。

柚くんがいない。
それだけなのに。
ずっとそうだったのに。

ため息しか起こらず、思い立ってコーヒーを淹れ、柚くんからもらったラテマシュマロを入れてみた。
溶けていくウサギの表情が、なんだか泣いているように見えた。

どうにも滅入った気分のまま午後のデスクに戻ると、折りたたんだメモ用紙が置いてある。
中を開いて背筋が凍った。

『浮気の代償は重い』

「補佐? どうかしましたか?」

谷くんに声をかけられて、我に返った。

「あ、…ううん。何でもない」

声が震えないように気を付けた。
こわばった指先を無理やり動かしてメモを折りたたみ、デスクの引き出しにしまう。

谷くんがいぶかしそうにこちらを見ているのが分かり、何気ない風を装ってパソコンに向かったが、心臓の音が大きすぎて周りに聞こえてしまうんじゃないかと思った。

誰が。なぜ。何のために。

疑問符だけが頭をぐるぐる回る。

どこにでもありそうなA4用紙。
プリンターで出力された簡素な文字。
その無機質さがかえって怖い。

悪意を持った不特定多数の目に見張られている。
見えない憎悪に背後から刺される。

そんな気がして、デスクに座っていても、後ろを通る気配や物音にいちいち怯えた。

『浮気の代償は重い』

…どういう意味?

人気のなくなったフロアで残業していても、エレベータに乗る時も、
ビルを出る時も、駅の改札も、電車の中も、路上を歩いている時も、
常に誰かに見られているような気がして落ち着かなかった。

何度も後ろを振り返ってしまう。
過剰に反応して通行人と距離をとってしまう。

部屋に着いて、ドアと窓の全てを施錠しても、やっぱり落ち着かなかった。
夜が更けるほど不安が募り、隣の物音や車のサイレン、風の音が気になって眠れなかった。
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