セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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「橘さん、お疲れさまです」

気が付くと、既に終業時刻を過ぎ、隣の清水さんも課長もいなくなっていた。

振り仰ぐと、にこやかな丸顔。
丸い鼻。丸い体型。丸いお腹。

「あ、加藤さん、お疲れさまです」

加藤さんは最近よくうちの会社に来る。
監査業務はとっくに終わっていて、経理課的に用はないのだが、

「この映画、どう思います?」
「…いいんじゃないですか」
「本当ですか? 絶対ですか?」
「…知りませんけど」
「クラシックコンサートの方がいいですかね?」
「…いいんじゃないですか」
「ちょっと、ちゃんと考えて下さいよ!」

どうでもいいデートの相談に来るのである。

「本人に聞いた方がいいんじゃないですか」

見かねた谷くんが助け舟を出してくれる。

「え、…でも。彼女、奥ゆかしいからはっきり答えてくれなくて」

なんだか加藤さんがもじもじしている。

「…全然奥ゆかしくないから。むしろ毒々しいから」

谷くんがぼそっと本音をのぞかせるが、そこは激しく同意する。

やっとのことで加藤さんを秘書課に追いやり、谷くんとため息をついた。

ハニートラップの報酬として、結子さんに加藤さんを紹介したら、絞め殺される勢いで切れられたのだけど、意外なことに何度かデートを繰り返しているらしい。

加藤さんはメロメロで、身も心も捧げている気配がするけど、実らない恋が長かった結子さんも、安心して一緒に居られる心地良さがあるらしい。

「別に好きとかじゃないけど、何気にお金もあるし、社会的な地位もあるし、よく見ると結構愛嬌のある顔だし、…」

わざわざお昼休みにうちの課の控室にのろけにくるくらいだから、…うまくいっているのかもしれない。

それはそれで、良かったな、と思うけど。

「…橘? 仕事終わった? メシ行く?」

優しい大きな手が私の頭をなでた。

「谷も行くか?」

桐生さんが相変わらずデキる男のいでたちで、穏やかな笑顔を見せながら私の後ろにやってきた。

「わー、行きます」

谷くん、即決。

「じゃ、行くか。橘は拒否権ナシ、な」

桐生さんが私の頭をポンポンなでる。
そういう優しいことをされると余計さみしさが増すような気がする。
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