セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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柚くんとタヌキ

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キツネに手を振るタヌキ。「またね」
折りたたまれた紙飛行機を広げると、ちょっと笑える。

「なぁヒロ。お前寺田に何かしたの? すげー泣いてたぞ」

中校舎の廊下に立って外を見ていたら、後ろからシンが覆い被さってきた。

「…いや」

紙飛行機をたたんで制服のポケットにしまう。

「寺田って可愛いよなー」

シンが煩わしくぶら下がりながら、嬉しそうに話す。

「小さいし、すぐ真っ赤になるし、ふわふわしてて、笑うとホント最高に可愛いっていうかー」

寺田マユは男子に人気があって、さっき中校舎裏に呼び出された。

「柚木が好きなの。付き合って」
「…ごめん」
「なんで? 好きな人いるの?」
「…まあ」
「誰? 教えてくれたら、諦める!」
「…タヌキ」

で、寺田は捨て台詞を吐いて号泣して立ち去ったわけなんだけど。

「もう俺、修旅で告っちゃおっかなー」

シンが一人で照れて頭を抱えている。

「…そんな可愛い?」
「は? ヒロ、マジか? 学校一っていうか、もうアイドル並みじゃん。可愛くて清楚で口汚いことは言わないしー」

…あいつ、さっき、「クソ馬鹿野郎」って言ってなかった?

修学旅行は奈良・京都へ2泊3日。
法隆寺、奈良公園など奈良は団体で見学し、金閣寺や清水寺などの京都は班別行動で回る。

「柚くん、明日から修学旅行なんだ。楽しいよねー。いいなぁ、また行きたいなぁ」

俺の修学旅行を知って、単純な家庭教師が学習途中で浮き浮きし始めた。

「わらび餅でしょ、豆腐ソフトでしょ、ゴマ団子にぬれおかき。京都の食べ歩き、美味しかったなぁ」

…何しに行ってきたんだよ。

「体験学習でくみひもを作ったんだけど、みんなで好きな人とお揃いのストラップにしたりして」

…。

イラっとしたのであおいの頭を軽く殴っておいた。
あおいがびっくりした顔で俺を見るから見つめ返すと、

「柚くん、問3! 問3だよ!」

急に赤くなって、とっくに終わった問題集をまたやらせようと頑張り始めた。

『小さいし、すぐ真っ赤になるし、ふわふわしてて、笑うとホント最高に、…』

…ばかタヌキ。



修学旅行2日目の夜。

ホテルの中庭にシンが寺田を呼び出していた。
見回りの教師に見つかると、3日目の自由行動が禁止になり、駅で教師と待機することになる。

タヌキの絵を描いた紙飛行機を部屋の窓から投げた。
願いを乗せて星明かりに浮かび、空を切って飛んで行った。

「昨日の夜、部屋を抜け出している生徒がいた。追いかけたが、逃げられた。心当たりのある生徒は正直に申し出なさい。さもないと、全員自由行動禁止にするぞ」

翌朝は教師の説教から始まった。
シンが蒼白な顔をしている。

「…はい。紙飛行機を探しに行きました」

前に出ると、学年全体から注目を浴びた。

「これか」

教師が掲げた紙飛行機にうなずいた。学年の奴らが騒めいていた。

「柚木は、なんで紙飛行機なんか飛ばしたんだ?」

京都駅で、教師と生茶アイスバーを食べた。

「…就職祈願」
「お前んち、姉ちゃんいるんだっけ?」
「…まあ」

…姉ちゃんじゃないけど。

「ヒロ、ホントごめんな。お前のおかげで、寺田と自由行動回れたんだけど、なんか寺田、結構口が悪くてさ、俺、自信なくなってきた」

シンが京都駅に来て神妙な顔をしていたので、生茶アイスをおごってやった。



東京に帰ると、能天気な家庭教師が嬉しそうな顔をして待っていた。

「柚くん、お帰り。どうだった? 何が美味しかった?」
「…生茶アイス」
「あれねー、美味しいよねー」

あおいがあんまり嬉しそうにしているから、

「…食べに行く?」

言うと、あおいは一瞬固まって、

「えっ? ええっ?」

顔を赤くして分かりやすく動揺した。

そのうちに。
お前が行きたいなら。

「はい」

おみやげを渡すと、あおいは満面の笑顔で受け取り、

「ありがとう!」

中を見て、きょとんとした顔になる。

「柚くん、…タヌキが好きなの?」

京都タヌキ饅頭。

『小さいし、すぐ真っ赤になるし、ふわふわしてて、笑うとホント最高に可愛い』

別に。
俺が好きなのは、タヌキじゃない。
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