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14.超高級ブランドの意味深指輪を飲み込む①
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「つまり……、大叔母様ということですね?」
水野の確認に、メイド服姿のオバサン、もといハルさんは、小首を傾げながら
「そ。叔母さん」
と頷く。
「……知らなかったのか?」
「……初めて会いました」
水野にこそっと囁かれて頷いた。
アカリの母親は、それはまあ自由な人で、親戚関係はおろか実家も、父親が誰なのかさえ教えてくれない。今もふらりと出かけたきり帰ってこないのだが、よくあることなのでもう慣れた。
アカリが生活に困窮していても誰も何も言ってこないところを見ると、母は天涯孤独か絶縁されたかのどちらかじゃないかと踏んでいた、のだが。
「アタシ長いこと外国にいて、久しぶりに日本に帰ってきたら、この辺に可愛い姪っ子がいるって言うじゃない? もう、取るものも取り敢えず飛んできちゃったリン」
この妙な陽気さと話し方も、長い海外生活で培われたのだろうか。
「……姪孫、ですね」
水野が細かい修正を試みている。多分誰も聞いてないけど。
三畳一間の狭いアパートの居室で、膝を付き合わせて座る、担任の水野、同級生の真田、ヤマト、タケル、そしてド派手ピンクな大叔母のハルさんと、アカリ。
なんだ、この妙な集まりは。と思うものの、ハルさんはまるで頓着せず、終始ご機嫌でお茶まで淹れてくれた。
段ボールを食卓テーブル代わりにして。
お茶の葉をはじめ、気が付けば、今朝までこの家になかったものが微妙に増えている。
食器とか食材とかリネン類とか。
アカリが学校に行っている間にハルさんが用意してくれたらしい。
一体どうやって部屋に入ったのだろうと思うが、「叔母さん、偉大リンリン」とよく分からない説明をされた。どうやら遠くから来た親戚と知って大家さんが開けてくれたらしい。不用心この上ない。
「アタシ、これでもそこそこ貯蓄あるから、あーちゃんの保護者として頑張るリン! 水野先生、よろしくリン!」
ハルさんが水野ににじり寄ると、水野の腰が引ける。
「あ、……はい。安心しました」
「こんな可愛い小豚ちゃんも飼えて嬉しいリン」
モモはハルさんが用意してくれたミルクをミルク風呂にして遊んでいる。
節約生活が長いアカリには想像もつかないけれど、モモは意外と贅沢な育ちをしてきたのかもしれない。
迷子ペットなのかなぁ……
一応届け出はしておいた方がいいかな、と思っているのはアカリだけで、誰もモモには注目していない。
「ボーイズたち、あーちゃんをよろしくリン! アタシも仲良くしてあげるリンっ」
「あ、……はあ」
というか、ハルさんが強烈過ぎて、真田とヤマタケは、借りてきた猫のように大人しくなっている。
なんか。
にわかには信じがたい気もするけれど、この陽気な人が本当にアカリの親戚で、後ろ盾になってくれるのなら、どんなに嬉しいことだろう、と思う。
この部屋にこんなにも多くの人が集まったことがあっただろうか。
こんなにも多くの声で溢れたことがあっただろうか。
もしも。
この派手で陽気なオバサンに何か思惑があったとしても、
はっきり言ってしまえば騙されているのだとしても、それでもいいんじゃないか、とアカリは思った。
盗られるようなものはないし、もはや、自分には失うものも何もない。
ずっと張りつめていた神経がほぐれて、初めて自分が気を張っていたことに気づいた。
「ハルさん。あの、……よろしくお願いします」
頭を下げたアカリに、ハルさんは女性にしてはえらく大きな手をのせると、
「あーちゃんは、自分の魂を磨くことだけ考えていればいいリン」
頭を優しく撫でてくれた。
……魂?? 成長しろってことか??
アカリの顔に浮かんだ疑問符を読み取ったのだろう。
「あっ、……ええっと、一人前の人間として、磨きをかけて欲しいってことだリン‼」
慌てたようにハルさんが付け加えて、
「痛いデス―――っ‼」
なぜかモモに臀部あたりを噛みつかれていた。
水野の確認に、メイド服姿のオバサン、もといハルさんは、小首を傾げながら
「そ。叔母さん」
と頷く。
「……知らなかったのか?」
「……初めて会いました」
水野にこそっと囁かれて頷いた。
アカリの母親は、それはまあ自由な人で、親戚関係はおろか実家も、父親が誰なのかさえ教えてくれない。今もふらりと出かけたきり帰ってこないのだが、よくあることなのでもう慣れた。
アカリが生活に困窮していても誰も何も言ってこないところを見ると、母は天涯孤独か絶縁されたかのどちらかじゃないかと踏んでいた、のだが。
「アタシ長いこと外国にいて、久しぶりに日本に帰ってきたら、この辺に可愛い姪っ子がいるって言うじゃない? もう、取るものも取り敢えず飛んできちゃったリン」
この妙な陽気さと話し方も、長い海外生活で培われたのだろうか。
「……姪孫、ですね」
水野が細かい修正を試みている。多分誰も聞いてないけど。
三畳一間の狭いアパートの居室で、膝を付き合わせて座る、担任の水野、同級生の真田、ヤマト、タケル、そしてド派手ピンクな大叔母のハルさんと、アカリ。
なんだ、この妙な集まりは。と思うものの、ハルさんはまるで頓着せず、終始ご機嫌でお茶まで淹れてくれた。
段ボールを食卓テーブル代わりにして。
お茶の葉をはじめ、気が付けば、今朝までこの家になかったものが微妙に増えている。
食器とか食材とかリネン類とか。
アカリが学校に行っている間にハルさんが用意してくれたらしい。
一体どうやって部屋に入ったのだろうと思うが、「叔母さん、偉大リンリン」とよく分からない説明をされた。どうやら遠くから来た親戚と知って大家さんが開けてくれたらしい。不用心この上ない。
「アタシ、これでもそこそこ貯蓄あるから、あーちゃんの保護者として頑張るリン! 水野先生、よろしくリン!」
ハルさんが水野ににじり寄ると、水野の腰が引ける。
「あ、……はい。安心しました」
「こんな可愛い小豚ちゃんも飼えて嬉しいリン」
モモはハルさんが用意してくれたミルクをミルク風呂にして遊んでいる。
節約生活が長いアカリには想像もつかないけれど、モモは意外と贅沢な育ちをしてきたのかもしれない。
迷子ペットなのかなぁ……
一応届け出はしておいた方がいいかな、と思っているのはアカリだけで、誰もモモには注目していない。
「ボーイズたち、あーちゃんをよろしくリン! アタシも仲良くしてあげるリンっ」
「あ、……はあ」
というか、ハルさんが強烈過ぎて、真田とヤマタケは、借りてきた猫のように大人しくなっている。
なんか。
にわかには信じがたい気もするけれど、この陽気な人が本当にアカリの親戚で、後ろ盾になってくれるのなら、どんなに嬉しいことだろう、と思う。
この部屋にこんなにも多くの人が集まったことがあっただろうか。
こんなにも多くの声で溢れたことがあっただろうか。
もしも。
この派手で陽気なオバサンに何か思惑があったとしても、
はっきり言ってしまえば騙されているのだとしても、それでもいいんじゃないか、とアカリは思った。
盗られるようなものはないし、もはや、自分には失うものも何もない。
ずっと張りつめていた神経がほぐれて、初めて自分が気を張っていたことに気づいた。
「ハルさん。あの、……よろしくお願いします」
頭を下げたアカリに、ハルさんは女性にしてはえらく大きな手をのせると、
「あーちゃんは、自分の魂を磨くことだけ考えていればいいリン」
頭を優しく撫でてくれた。
……魂?? 成長しろってことか??
アカリの顔に浮かんだ疑問符を読み取ったのだろう。
「あっ、……ええっと、一人前の人間として、磨きをかけて欲しいってことだリン‼」
慌てたようにハルさんが付け加えて、
「痛いデス―――っ‼」
なぜかモモに臀部あたりを噛みつかれていた。
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