無気力魔王子レオン、最上級の魂【レベル9】を宿す平凡貧乏女子高生を護る

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24.真田豹、養護教諭に挟まれる①

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 おい。ケンシって誰だよ?

「ブヒ、ブヒブヒブヒブヒ」

 レオンの腕の中で何やらつぶやいて倒れたアカリの言葉が気になって、豹はアカリによじ登った。しかしアカリは蒼白な顔で目を閉じたままぐったりとしている。

「ブヒヒっ?」

 大丈夫なのか。
 こいつすさまじい勢いで妖狐に突撃していったけど。

 アカリの一撃で谷口カナに憑いた妖狐は完全に吹っ飛び、

「あれ。どうしたんだっけ?」
「うわあ、遅刻、遅刻っ!!」

 ゾンビ化された人たちも元に戻って、駅前の町は朝の騒々しさを取り戻していた。

 谷口カナといい、草村アカリといい、女ってマジ怖えな。
 結婚したらやっぱり尻に敷かれる生活になるんだろうか。

 ハラハラする心臓を押さえながら妄想が広がる豹の目の前で、

「ブヒぃ―――っっ!?」

 レオンが抱えあげたアカリを抱き寄せ、そっとおでこに唇を押し上げる。

 な、……ななな、なんて大胆かつ絵になる俺。
 公衆の面前ででこちゅーとか、付き合い始めたばかりのカップルイベントとして高難度なんじゃないの!?
 それをさらっとやっちゃう俺ってやっぱりイケてるんじゃないの?

「やるー、真田さんっ」
「男が上がったぁー」

 ゾンビから解放されたヤマトとタケルもここぞとばかりに指笛を吹いている。

 まあな。悪いな。イケ散らかしてて……って、俺じゃねえ。何してくれてんだ、レオンの奴っ

 ヤマタケの称賛に我を忘れてポーズを決めてみたが、指先に短い豚の毛を感じて正気に戻った。

「ブヒブヒブヒっ!!」

 おいこら、気安くアカリに触るな。
 俺だけど。……見た目俺だけどもっ

「うるさいな。妖気を浄化しただけだ」

 レオンの指先に噛みついた豹は、めんどくさそうなレオンに跳ね飛ばされて地面に転がり落ちた。

「ブヒぃ……っ」

「やだ、大丈夫? モモブタちゃん」

 アスファルトの上で三回転半を決めた豹は、柔らかいが妙に力強い女性の手に救い上げられた。

「ブヒっ!?」

 それはつい先ほど別れたばかりの元カノで、空手道場の娘であり、妖狐にとり憑かれたが立ち直った谷口カナだった。

「ブヒヒ、ブヒヒ……っ」

 レオンに顔面蹴りをお見舞いしたり、アカリに捨て台詞を残したり、妖狐に憑かれて燃え盛る目の炎はマジもんだったりで、……今はちょっとあまりお近づきにならない方がいいだろうとブタの本能が告げる。

 そろりそろりと短い足で退却を試みるが、

「頭打ってるかもしれないから、診てもらわなきゃ」

 がっちりぎっちり握りしめられ、身動きできない。

「ブヒっ、ブヒブヒっ」

 うおい、助けろっ

 と、助けを求めるも、絶対気づいているはずのレオンはしれっと無視して、目を覚ましたアカリを支え起こしているし、

「真田さん、急に男らしくなったな」
「大人の階段上っちゃったからかな」

 ヤマトとタケルはそんなレオンを羨望のまなざしで見つめ、ブタには目もくれない。

「ブヒヒ―――っ」

 やっぱり俺にはアカリだけだと鳴き声を上げるも、

「やだ、カナちゃん。ブタ拾ったの?」
「可愛いね。カナちゃんに抱かれて喜んでる」

 カナの取り巻きであるヒロナとエリナが寄ってきて、きゃっきゃとはしゃいだ歓声にかき消されて届かない。

「養護の先生に診てもらおうよ」
「学校で飼えるかな」

 飼えるわけねえだろっ

 という、豹の抵抗虚しく、肉厚なカナの手にがっしりと抱かれたまま、コブタは学校に連れ去られた。
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