貴方は僕の運命のひと

まつぼっくり

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大好きな人たちとの再会



「さぁ!今は考えるのは後にして仕事しましょう?」

ユノさんの声にぽわぽわとした思考から現実に引き戻される。
とりあえず仕事だ。
僕はただでさえミスが多いのだからシャキッとしなきゃと無理やり気を引き締める。

「てゆーかユノア何でここにいるんだよ!勝手に僕たちの更衣室に入らないでよ!」

「ナジュの声が大き過ぎるのよ。ミナトがあなたに苛められてると思ったの!」

同期ということで仲の良い2人の言い合いを聞きながら厨房でユノさんと別れてナジュ先輩とホールへ出る。

まだ昼時には早く、がらんとしているホールのテーブルを手分けして拭いて備品を足して用意をする。

それが終わるとナジュ先輩と並んでメニューを覚えているか問題を出されながらカウンターの中で大量の玉葱の皮をぺりぺりと剥く。
僕はいつの間にか皮を剥くのに夢中になってナジュ先輩に小突かれたりしながら時間が過ぎ、お客さんが入り始めた。

そこからはもうバタバタで。注文を受けて料理を運んで片付けての繰り返しで、時間が経つのが本当に早く感じられる。

ランチタイムの1番忙しい時間が過ぎて片付けも一段落した頃大好きな人達が食堂に入ってき来るのが見えた。

「っ……!」
 
僕はそこまで遠くない距離なのにその距離さえもどかしくて走る。

「ミナト様。いいえ、ミナト。そろそろお顔を見せてはくれませんか?」

アイラさんの胸に飛び込んでそのままえぐえぐと泣き出した僕の頭を撫でながら優しい声で名前を呼ばれる。

おずおずと顔を上げると少しだけ赤い目を細めて微笑まれるが、アイラさんの格好良い黒い角の片方が根元から折れているのに目がいって思わず凝視してしまう。

「アイラさんっ。、アイラさん。ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい。」

辛いのはアイラさんの筈なのに、また胸に顔を埋めて今度はわんわんと子供のように泣いてしまった僕を、1度ぎゅっと抱き締めると肩に手を置いて離して目線を合わせてくれる。

「こんな怪我、全然痛くなかったですよ?でもミナトは私達にとって我が子同然なんです。あんな目にあって…怖かったでしょう?」

あの方の事など気にせずにしっかりと送り届けるべきでした、と後悔の滲んだ声で言いながらそっと涙を拭われ、止まったと思っていた涙がまた溢れた。

しばらく抱き合っていると横から声がかかる。

「おーい。ぱぱもいるぞー。ミナト、おいコラアイラだけか!」

ゆるりとしたその声にアイラさんから顔を離すとフラフラと隣に移動し、ばふっとリズさんの胸に飛び込んだ。
緩い声とは対照的に力強く抱き締められ、抱き上げられ小さな子供にするように頬擦りされる。

「リズさん。本当にすみませんでした。アイラさんの角も…ごめんなさい。」

「アイラは意外と喧嘩っぱやいからな。ミナトは悪くない。心配は死ぬほどしたが、今2人とも元気ならそれだけで良い。」

ニカッと笑ってそう言ってくれる。

感謝してもしきれなくて、話すことがまだまだあるのだが離れているところから此方を見ていたナジュ先輩が近づいてくる。

「ミナトまだ仕事中だよ!ほら、ちゃんと案内して!しっかり働けてるところ見せて安心させたいって言ってたでしょっ?」

プンプンしているナジュ先輩に、まだまだしっかりなんてしてないけど僕が教えてるんだからミスしないでよね!と言われながら、ぐちゃぐちゃな顔をハンカチで少し乱暴に拭われてから背中を押される。

ナジュ先輩のお陰でやっと笑顔を見せる事ができた。


「…2名様、お席にご案内します!」

僕は張り切って2人に給仕する。
水を注ぐのも料理を運ぶのもアイラさんは僕以上に緊張した面持ちで手伝おうと手を出しそうになってリズさんに笑いながら何度も止められていた。

食事している2人からそっと離れてマオさんのところへ行く。

「マオさん。さっきはうるさくしてすみませんでした。」
 
大きな声で泣きじゃくってしまった事を恥ながら謝る。

「ミナトは元々の声が小さいからな、そんなに煩くなかったぞ。泣き顔は可愛かったがな!」

泣き顔を見られるのはそれはそれで恥ずかしい。

「2人の食事代、お給料から引いてくれますか?」

「ん?金はアランが払っていったぞ。ぴーぴー泣いてるお前みて心配そうな顔をしてたがエリヤに引っ張られて戻っていった。」

「今日はあの2人と一緒に上がって良いぞ。アランも久しぶりで話すこともたくさんあるだろうと言っていた。」

アランの手際の良さに吃驚したのと気使いが嬉しくて固まってしまったが、再会できて良かったなと頭をぐりぐりと撫でられて素直にはいと返事をする。

みんなにお礼を言って上がらせてもらい、出入口でアイラさんたちに待っていてもらってアランのところへ走る。
ノックをすると直ぐに返事が聞こえ、そっと顔を出す。

「アラン、今大丈夫ですか?」

優しい声で大丈夫だと返事があり、座っているアランのもとへ近づく。

「アラン、いろいろありがとうございます。支払いもすみません。」

アランは自然な動作で僕の手を取り引き寄せると膝の上で向かい合うように抱き上げられる。

「いや、俺がしたくてした事だ。夕食は4人で取りたいとお願いしておいてくれるか?」

「うん!もちろん。アランのお家でお話していてもいいですか?」

そういうとアランは少し眉間に皺を寄せた。
家主がいないのに図々しかったかと言ったことを後悔していると困った顔。

「あの家はミナトの家でもあるだろう?俺とミナトの家だ。」

その言葉に胸が暖かくなる。
そしていつもは安心するこの距離が急に恥ずかしくなった。
ドキドキと胸が鳴る。

「…アラン、ありがとうございます。アランにも話したいことがあるので帰ったら聞いてくれますか?」

「あぁ。改まって何だか怖いな。良い話にしてくれよ?」

そう言いながらぎゅっと痛いくらいに抱き締められた。




アランに抱き締められて火照った顔を、手でパタパタと扇ぎながら小走りで2人の元へ戻る。
家まですぐ近くだけれど僕を真ん中に3人で手を繋いで歩く。
それだけで嬉しくて、無駄に手をブンブンと振ってしまってリズさんには笑われてしまったけれどアイラさんは何も言わずに微笑んで僕に付き合ってくれた。


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