貴方は僕の運命のひと

まつぼっくり

文字の大きさ
20 / 36

大好きな人たちとの再会

しおりを挟む


「さぁ!今は考えるのは後にして仕事しましょう?」

ユノさんの声にぽわぽわとした思考から現実に引き戻される。
とりあえず仕事だ。
僕はただでさえミスが多いのだからシャキッとしなきゃと無理やり気を引き締める。

「てゆーかユノア何でここにいるんだよ!勝手に僕たちの更衣室に入らないでよ!」

「ナジュの声が大き過ぎるのよ。ミナトがあなたに苛められてると思ったの!」

同期ということで仲の良い2人の言い合いを聞きながら厨房でユノさんと別れてナジュ先輩とホールへ出る。

まだ昼時には早く、がらんとしているホールのテーブルを手分けして拭いて備品を足して用意をする。

それが終わるとナジュ先輩と並んでメニューを覚えているか問題を出されながらカウンターの中で大量の玉葱の皮をぺりぺりと剥く。
僕はいつの間にか皮を剥くのに夢中になってナジュ先輩に小突かれたりしながら時間が過ぎ、お客さんが入り始めた。

そこからはもうバタバタで。注文を受けて料理を運んで片付けての繰り返しで、時間が経つのが本当に早く感じられる。

ランチタイムの1番忙しい時間が過ぎて片付けも一段落した頃大好きな人達が食堂に入ってき来るのが見えた。

「っ……!」
 
僕はそこまで遠くない距離なのにその距離さえもどかしくて走る。

「ミナト様。いいえ、ミナト。そろそろお顔を見せてはくれませんか?」

アイラさんの胸に飛び込んでそのままえぐえぐと泣き出した僕の頭を撫でながら優しい声で名前を呼ばれる。

おずおずと顔を上げると少しだけ赤い目を細めて微笑まれるが、アイラさんの格好良い黒い角の片方が根元から折れているのに目がいって思わず凝視してしまう。

「アイラさんっ。、アイラさん。ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい。」

辛いのはアイラさんの筈なのに、また胸に顔を埋めて今度はわんわんと子供のように泣いてしまった僕を、1度ぎゅっと抱き締めると肩に手を置いて離して目線を合わせてくれる。

「こんな怪我、全然痛くなかったですよ?でもミナトは私達にとって我が子同然なんです。あんな目にあって…怖かったでしょう?」

あの方の事など気にせずにしっかりと送り届けるべきでした、と後悔の滲んだ声で言いながらそっと涙を拭われ、止まったと思っていた涙がまた溢れた。

しばらく抱き合っていると横から声がかかる。

「おーい。ぱぱもいるぞー。ミナト、おいコラアイラだけか!」

ゆるりとしたその声にアイラさんから顔を離すとフラフラと隣に移動し、ばふっとリズさんの胸に飛び込んだ。
緩い声とは対照的に力強く抱き締められ、抱き上げられ小さな子供にするように頬擦りされる。

「リズさん。本当にすみませんでした。アイラさんの角も…ごめんなさい。」

「アイラは意外と喧嘩っぱやいからな。ミナトは悪くない。心配は死ぬほどしたが、今2人とも元気ならそれだけで良い。」

ニカッと笑ってそう言ってくれる。

感謝してもしきれなくて、話すことがまだまだあるのだが離れているところから此方を見ていたナジュ先輩が近づいてくる。

「ミナトまだ仕事中だよ!ほら、ちゃんと案内して!しっかり働けてるところ見せて安心させたいって言ってたでしょっ?」

プンプンしているナジュ先輩に、まだまだしっかりなんてしてないけど僕が教えてるんだからミスしないでよね!と言われながら、ぐちゃぐちゃな顔をハンカチで少し乱暴に拭われてから背中を押される。

ナジュ先輩のお陰でやっと笑顔を見せる事ができた。


「…2名様、お席にご案内します!」

僕は張り切って2人に給仕する。
水を注ぐのも料理を運ぶのもアイラさんは僕以上に緊張した面持ちで手伝おうと手を出しそうになってリズさんに笑いながら何度も止められていた。

食事している2人からそっと離れてマオさんのところへ行く。

「マオさん。さっきはうるさくしてすみませんでした。」
 
大きな声で泣きじゃくってしまった事を恥ながら謝る。

「ミナトは元々の声が小さいからな、そんなに煩くなかったぞ。泣き顔は可愛かったがな!」

泣き顔を見られるのはそれはそれで恥ずかしい。

「2人の食事代、お給料から引いてくれますか?」

「ん?金はアランが払っていったぞ。ぴーぴー泣いてるお前みて心配そうな顔をしてたがエリヤに引っ張られて戻っていった。」

「今日はあの2人と一緒に上がって良いぞ。アランも久しぶりで話すこともたくさんあるだろうと言っていた。」

アランの手際の良さに吃驚したのと気使いが嬉しくて固まってしまったが、再会できて良かったなと頭をぐりぐりと撫でられて素直にはいと返事をする。

みんなにお礼を言って上がらせてもらい、出入口でアイラさんたちに待っていてもらってアランのところへ走る。
ノックをすると直ぐに返事が聞こえ、そっと顔を出す。

「アラン、今大丈夫ですか?」

優しい声で大丈夫だと返事があり、座っているアランのもとへ近づく。

「アラン、いろいろありがとうございます。支払いもすみません。」

アランは自然な動作で僕の手を取り引き寄せると膝の上で向かい合うように抱き上げられる。

「いや、俺がしたくてした事だ。夕食は4人で取りたいとお願いしておいてくれるか?」

「うん!もちろん。アランのお家でお話していてもいいですか?」

そういうとアランは少し眉間に皺を寄せた。
家主がいないのに図々しかったかと言ったことを後悔していると困った顔。

「あの家はミナトの家でもあるだろう?俺とミナトの家だ。」

その言葉に胸が暖かくなる。
そしていつもは安心するこの距離が急に恥ずかしくなった。
ドキドキと胸が鳴る。

「…アラン、ありがとうございます。アランにも話したいことがあるので帰ったら聞いてくれますか?」

「あぁ。改まって何だか怖いな。良い話にしてくれよ?」

そう言いながらぎゅっと痛いくらいに抱き締められた。




アランに抱き締められて火照った顔を、手でパタパタと扇ぎながら小走りで2人の元へ戻る。
家まですぐ近くだけれど僕を真ん中に3人で手を繋いで歩く。
それだけで嬉しくて、無駄に手をブンブンと振ってしまってリズさんには笑われてしまったけれどアイラさんは何も言わずに微笑んで僕に付き合ってくれた。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

国民的アイドルの元ライバルが、俺の底辺配信をなぜか認知している

逢 舞夏
BL
「高校に行っても、お前には負けないからな!」 「……もう、俺を追いかけるな」  中三の卒業式。幼馴染であり、唯一無二のライバルだった蓮田深月(はすだ みつき)にそう突き放されたあの日から、俺の時間は止まったままだ。  あれから15年。深月は国民的アイドルグループのセンターとして芸能界の頂点に立ち、俺、梅本陸(うめもと りく)は、アパートでコンビニのサラミを齧る、しがない30歳の社畜になった。  誰にも祝われない30歳の誕生日。孤独と酒に酔った勢いで、俺は『おでん』という名の猫耳アバターを被り、VTuberとして配信を始めた。  どうせ誰も来ない。チラ裏の愚痴配信だ。  そう思っていた俺の画面を、見たことのない金額の赤スパ(投げ銭)が埋め尽くした。 『K:¥50,000 誕生日おめでとう。いい声だ、もっと話して』  『K』と名乗る謎の太客。  【執着強めの国民的アイドル】×【酒飲みツンデレおじさんV】

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...