貴方は僕の運命のひと

まつぼっくり

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番外編

兎さん視点


*兎さん視点のお話です。
兎さんは月日は経ちましたが、反省していません。
兎さんにもシエロさんにもイラつくと思います。
幸せにはなりませんが破滅することもないです。

最後にミナトとアランが出てくるシーンがありますが接触はしないです。

前書きを読んだ上で大丈夫な人だけお進みください。

____________________








パシッと軽い音がして自分の手が振り払われたのに気づいた。

「…出てって!今すぐ出てってよっ!」

ヒステリックな娘の声にふらふらと部屋を出る。

今日、娘の恋人に運命の相手が現れた。

あんなに仲が良かったのに。
お互いに運命なんて関係ないって言っていたのに。
酷い。酷すぎる。






ルルは3人兄弟の唯一の女の子で、上2人はシエロと同じ白狐だったけどルルだけは僕と同じ白兎だった。

だから心配してた。
自分が今まで他の獣人たちからどういう風に思われていたか知っている。

頭が弱くて快楽にも弱い。
見た目もいいしすぐにヤらせてくれる兎族。
セックスする相手には良いが番たくない相手。

そんな事を言われているからこそ、運命の人に出会うまで体の関係を持たない同族もいるのに、僕は違った。

発情期には毎回違う男。
相手には困らなかった。
みんな可愛い可愛いって優しくしてくれた。
頭を撫でてくれて贈り物をされて、心も体も満たされていた。

だからシエロと出会ったときは吃驚したけど、凄く嬉しくて。適当に生きてきた僕でも運命の相手と番になれるって舞い上がってた。

僕がヒートだったこともあってシエロも触発されて少しだけ早くヒートになった。

出会って直ぐに宿へ誘った。
もう理性の糸が千切れそうなのに話をしようというシエロに強引にくっついた。

事が済んで少しずつ我に返るシエロに「赤ちゃんできたかなぁ。」って言ったら青い顔して責任取るって言ってくれた。

でも責任ってなに?運命だよね?好きだよね?僕は好きだよ。

 運命だもん。だから大好き。



とにかく1度ルーラに戻ると言うシエロに着いていくと言ったら、好きな子がいると窘められた。
ちゃんと別れて、人族だから王都で保護して貰うから待っているようにと。
お互いにきちんと恋人に話す時間を作ろうだって。

うん、でも別れるのなんて簡単でしょう?
それに好きな子がいるっていうのも可笑しい。
シエロの好きな子は僕でしょう?


その時はやたらとしつこい男と付き合ってた。
束縛とか凄くて、だからちょうど良かった。
運命って言えば大抵許してもらえるもんね。
良くあることだよ。

でも、それでも何故だ何故だってうるさいからシエロの恋人の人族の事を教えてあげた。
人族は小さくて可愛い子が多いし僕のかわりになるんじゃないかなって思ったの。

僕の別れ話は早く終わったからやっぱりシエロに着いていく事にした。
こっそり後から着いていってルーラに着いたらびっくりさせよう。


シエロの恋人っていうか元恋人はやっぱり小さくて細くて、でも前髪が長くて目にかかっているし、うつ向きがちで顔は良く見えないけど、可愛くないんじゃないかな?
可愛かったらもっと髪型とか気にするだろうし…
僕のかわりにはなれないかなぁ。
イルダには悪いけどしょうがないよね。

それに本当にシエロのことが好きだったらもっと祝福してあげても良いと思うんだよね。
だって運命に出会えたんだから。

なんだかモヤモヤする。
この人族が使用人にチヤホヤされているのも気にくわないや。



結局ルーラには住めなくなったけれど僕はシエロがいればそれだけで十分だよ。

シエロは僕が我が儘言ったりしても困った顔で笑うだけ。
怒ったのは元恋人がイルダに監禁されたときだけだよ。

これって愛されてるって事だよね?


運命の相手だもん。
愛し合って当然だよね?今でも愛し合ってるよ。
最近はヒートのときだけだけど。シエロは元々淡白なんだよね。
昔から僕が誘ったときしかシないの。それだけがちょっと不満。












ルルが恋人を連れてきたときは本当に嬉しかった。
ルルは可愛いのに伴侶となる人としか関係を持たないって言ってて将来は番たいって言ってくれた人と付き合ってた。

相手のご両親にも会ってたみたいだし、シエロもホッとしていて、今は学生だけど卒業したら婚約するって言ってた。


それなのに、運命の相手が現れるだなんて。
本当に本当に可哀想なルル。

恋人は運命を連れて来て、2人でルルに別れて欲しいって言ったそうだ。
2人に何度も謝られて頭を下げられて結局身を引くしかなかったルル。
惨めな思いをしたルルを慰めに行って、手を振り払われた。


うーんと考えて僕は馬鹿だから何にも良いこと言ってあげられなかったけどそういえば昔同じような事をしちゃったなって思い出した。

人族の子。名前は思い出せないや…
あの子もルルみたいに泣いたのかな?

うーん、うーん。謝りに行こうかな?
許してくれたら神様がルルに恋人を返してくれるかも!

とりあえずシエロに話に行こう。1人で何かをするのは禁止されている。僕の行動を把握したいらしいシエロ、そんなに気にしなくてもシエロ以外には行かないのに。


シエロは僕の話を聞くといつものように困った笑顔をしてくれなかった。

疲れた顔でため息を吐いて言う。

「私たちには謝る資格すらないよ。お願いだから馬鹿な事言わないで大人しくしていて?」

そう言われると何で謝っちゃいけないのかがわからない。
小さい頃ありがとうとごめんなさいはちゃんと言いなさいって教わらなかった?


まぁいいか、会えるかは別としてとりあえず王都へ行こう。
思い立ったら直ぐに行動しなきゃな僕はシエロが微かにすすり泣く声が聞こえるルルの部屋へ入っていった隙に走り出した。





久しぶりの王都に心が踊る。
人が多くて沢山の香り。宿をとって荷物を置き、あてもなくふらふらと歩く。
1日目は見つからなかった。馬鹿な僕は久しぶりの王都で食べ歩きしたり買い物をしたり、それだけで満足して当初の目的を忘れていた。

2日目、見覚えのある有名なレストランの扉を中から開ける黒羊には見覚えがあった。
だいぶ会っていないが多分そうだろう。あまり変わっていない。
そういえばいきなり殴られた事あるなー
あれは痛かったなー
よし、もう一度文句を言おう。そう意気込んで近づくが頭を下げながら出てきた体の大きい獣人をみて歩みを止めた。

顔が怖いしあいつと親しそうだし物陰から様子を見る事にする。


後ろを振り返り大きな手を差し出すとそこに乗る小さな手。
しっかりと手を繋ぎもう片方の手で黒羊に手を振ると並んで歩き出す。

繋いだ手を引き寄せてこめかみや額にキスをしながら何か言っているのか耳元に唇を寄せる。

顔を赤くしながらも笑顔を見せるその人から何故だか視線を外せなくて、追いかけると後ろから強めに肩を捕まれた。

「あっ!、シエロ。今ね素敵な2人を見つけたんだよ。」

呆れた顔のシエロはまたため息。

「…帰るよ。」

シエロに手を差し出されたことはなくて、いつも勝手にシエロの腕に自分の手を絡める僕は今見た光景が羨ましくてシエロの手を握る。

すると吃驚したのかシエロは手を跳ねさせたから僕の手は離れてしまう。

「驚いてしまってごめんね、手を繋ぐの苦手だからいつもみたいに腕組んでくれる?」

困った顔のシエロに誰だって苦手な事あるよねーっと声をかけながら今度は手を腕に置いた。


そしてふと思い出すさっきの2人。
どっかで見たことあるような、ないような。

あの小さな人族は耳元で何を囁かれたのだろう。
好きだとか愛してるとかだろうか。




…あれ?僕はシエロに愛してるって言われたことあったかな?
    
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