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17 おかーさん、知ってる?
「地下牢?」
「そうだ。」
地下牢…そんなとこにいたんだ。階段でも変わらない足取りで僕を抱えたまま歩くクレイグ。最近では抱えられるのに諦めて、自分から腕を伸ばすようになってしまった。
「スミレ、急に思い立ったわけを聞いても?」
「んー、たぶんね、思い出したの。僕、タカギと出会って洗脳解けるまでの記憶が曖昧でしょう?倒れて眠っている時に夢に出てきたの、おかーさん。でも、確証がないから聞いてみようかな?って。僕を拾ってくれた偉い人に。」
「宰相か。」
「そう!さいしょーさん。」
地下へ降りるのに、見張り番の騎士さんたちがクレイグをみてギョッとして、更に抱かれている僕を見てギョッとする。
「へ、陛下…この先は…」
「良い。」
ひとつ、ふたつ、と扉を開けながら階段を降りる。下へ行けば行くほど薄暗く、物々しい雰囲気でクレイグの首筋に顔を埋めた。
「どうした、怖いのか?」
「んー、わからない。でもドキドキはする。」
久しぶりだから怖いのかな?むずむず?うずうず?
やっぱりドキドキかな?
「僕の本当の名前も、思い出せそうで思い出せなくて。知ってるか聞いてみる。」
「あぁ。そうだな。気になることは最後に聞いておいた方が良い。」
「はぁい。クレイグは、何もしないでね?」
「…彼奴らが何もしなければスミレに任せよう。」
あぁ、早く話をして、タカギと赤ちゃんに会いたい。たぶん、絶対怒られるけどちゃんと怒られて抱っこさせて貰わなくちゃ。
実はこっそりとタカギの赤ちゃんを抱くために侍女さんたちに人形を使って抱き方やお世話の仕方を習っていたのだ。
獣の姿で生まれた子は一週間ほどで人の姿も取れるようになる子もいると聞いた。狼の子の期間は短いので堪能しなくちゃ!と笑みが洩れると同時に最下層の扉の前にいる見張りの騎士が扉を開けた。
「…う、わぁ。」
思わず部屋全体にクリーンをかけると頭を撫でられた。
「もう、後は死ぬのを待つだけだからな。助かる。」
「ちょっと、びっくりした。」
王様たちも吃驚した顔をしている。
でも、身綺麗にしてくれた、とでも思っているのか
やれ助けろだとか拘束をとけだとかクレイグを攻撃しろだとか…
「うるさいなぁ。おくちはチャックです。」
「チャック?」
「おしゃべりが止まらないとね、タカギに良く言われたの。口閉じろって意味なんだって。」
「…っ!ふ、ふざけるな!拘束を取れッ!結界にしか能のない奴隷が!!……ぐがッ」
「ねぇ、さいしょーさん、僕の名前しってる?」
「ヒッ、へ、陛下っ!」
「うん。クレイグが蹴ったら王様の首ボキってしちゃったね。クレイグも、約束したのに。」
「何もしなければと言ったんだ。スミレを侮辱したからな。」
ん?いいの、かな?王様には聞きたいこともなかったからいいかな?
「それで、そんな事よりさいしょーさん、僕の名前しってる?」
「し、しらないっ、なにも!」
「うーん、でもさ、さいしょーさんが僕のおかーさん殺したの思い出したの。何なら知ってる?」
「なにも知らないッ!お願いだ!助けてくれ!」
「おかーさんもね、さいしょーさんに助けてって言ってなかった?」
顔は思い出せない。でも、優しくぎゅっとして、宝物とか宝石さん、とか言いながらほっぺにキスを送られたのは思い出したんだよ。
「そんなやつは知らんッ!お前は捨て子だ!それを保護してやったのに恩を仇で返すなど!この、恩知らずが!」
「そっか。知らないならいいや。」
身を捩ってクレイグから降りると、彼の腰についている剣を鞘から抜く。うーん。持ち手は使い込まれているけど刃はピカピカで綺麗だ。鞘に戻すと目線で「いいのか?」と問われる。
「ん。クレイグの剣はピカピカで申し訳ないからそこの壁にかかってるのにするね。」
「俺が殺ろう。」
「だめです。この人たち剣でぶすってするの好きみたいだから僕がしてあげるの。」
「じゃあ、一緒に。一人ではさせたくない。」
重くて少し錆びている剣を持ってきてキリやおかーさんを殺した時のように振り上げた。
騒ぐのがすっごく煩くて魔法でおくちはチャックにした。
一度だけ、刺した。のたうち回っているさいしょーさんを見ても何も感じない。タカギのお勉強で人が死ぬと悲しい気持ちになるって言ってたけど全然悲しくない。もう、さいしょーさんはいいや。残っていたもう一人。たぶん魔術師さんにふらりと近づくと石壁しかないのに後ずさろうとしている。目の前に行くと、ぴたりと動きを止めた。
「ひ、あ、貧民街、東の端の方の貧民街だ。お前と母親が住んでいたのはっ。そこに魔獣と呼ばれる異形の人喰いの獣を放した。その時、母親と共に喰われそうになったお前が結界を張ったのだ。そ、それで、目をつけられて…」
「何でそんなに危ないものを街に放したの?」
「…獣は珍しいものが好きだった幼い頃の陛下への献上品だ。陛下は、人喰いなら、人を喰らうところが見てみたいと…」
「僕の名前知ってる?」
「それは…知らない…す、すまない。だが!必ず思い出す!」
「おかーさん、僕を捨ててないよね?」
コクリと頷く魔術師さんを見て僕は剣を捨ててクレイグの大きな手のひらを掴む。
「クレイグの手も汚させてごめんなさい。戻ろう?お腹すいた。」
「こいつは良いのか?」
「魔術師さんはおかーさんのこと教えてくれたから痛いことはしないようにする。」
「…俺が殺ろうか?」
「ううん。何もしなくてもそんなにもたないよ。」
そうか、と手を繋いだまま僕を抱き上げてくれたクレイグと自分にクリーンをかけて、その場を後にした。
一度クリーンはしているけど、食事とタカギたちに会いに行く前にとクレイグとお風呂へ向かう。
服を脱がせて貰って、脱がせてあげて。お互い裸になったところでクレイグの逞しい身体に抱きついた。
「ふぅ。」
「心が疲れただろう?大丈夫か?」
「ん。クレイグは僕が怖くない?僕、簡単に人のこと殺せちゃうんだよ。」
「…簡単にではないだろう?あの三人以外にそんな気持ちになる奴はいないはずだ。それに…俺だったら最後の一人も殺していただろうし、今からでもこの手で殺したいと思う。」
「ごめんなさい。ありがとう。」
「謝るのは俺の方だ。儚くて、凛々しいスミレを見ていたら正直興奮した。」
「ふふ。なにそれ。」
そっと、滾りつつあるクレイグのおちんちんに触れるとぴくりと動く。
「こら。悪戯するな。スミレはまず、食事をとらなければ。」
「はぁい。でも、ちょっとだけ。クレイグとくっついてると安心する…」
毎日イチャイチャしてたのに、四日も寝ちゃってたからまた準備し直しかなぁ。
「…はやくクレイグと繋がりたいな。」
「あまり、煽らないでくれ。」
ぐぅっとクレイグの苦しそうな声がして、すっかり立ち上がってしまった二人のおちんちんをまとめて擦られる。
「ふぁッ、」
「俺も、もう待てない。だが、とりあえず食事と診察だ。タカギにも会いたいだろう?」
恥ずかしい水音が浴室に響く。
「ひゃっ、アッ、んんっ!」
それからまるっと洗われて温まって部屋で食事を取ってからタカギとライさんの部屋を訪ねた。
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