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18 おにいちゃんになったよ
怒鳴られて、頭をバシッと叩かれて。
そんなのを想像していたけど全然違った。
タカギはベッドで体を起こしていたけれど、僕をみて、口をパクパクして、でも言葉が出てこないのか唇を噛み締めて涙を流した。
「…ごめんなさい。」
「………」
「ごめんなさい。でも、後悔はしてない。」
「反省しろっ!この、バカ!…うぅ」
声に出して泣き出したタカギをみたら、僕も涙が止まらなかった。
さっき人を殺めときは何も感じなかったのに、今は心が痛くて、タカギの泣き顔を見るだけでどんなに心配をかけたのかわかった。
「タカギ…心配かけてごめんなさい。」
泣きながらぷるぷるして、こっちをみて、またうわあぁと泣き出すタカギ。
「うぁ、スミレ、ありがとう。こ、この子、助けてくれて。うえぇ」
タカギにつられて「うわぁぁん」と泣き出しそうになって口を大きく開けたところでガバリと抱き締められた。
それは嗅ぎ慣れたクレイグの匂いではなくて。
「ッ、スミレ君!!!本当に!ほんっとうに!ありがとう~~!!」
ぎゅうっと痛いくらいで、でも「ありがとう、ありがとう」と涙声で耳元で呟くライさんに何にも言えなくなって、我慢できなくなったクレイグにベリっと剥がされるまでライさんの背中をポンポンとし続けた。
「おぉ!」
ふわふわでほわほわ。
ふんわりミルクの匂いがして…
何と言うか…とっても可愛い。
「タカギ!タカギタカギ!」
「ハイハイ。俺に似て可愛いだろ?」
「うん!似てる!凄く可愛い!!ふんわりしてて良い匂い。おめめは何色?」
いや、俺要素なくね…?似てなくね…?狼だぞ…?
ぶつぶつ呟いているタカギは無視だ。とにかく可愛い。
「まだ目ぇ開かないから瞳は何色かわからないんだよね。でも可愛いはマジで同意。可愛い以外の何者でもないわ。」
ふふって笑うタカギが綺麗で思わず見とれる。
「ふぁぁ。本当に可愛いねぇ。お名前は何ですか?」
「急に敬語うける。んー、ライオネルに俺が決めて良いよって言われたから、無難にヒスイとかにしようかなって思ってたんだけど…」
なんでも、タカギのいたところではエメラルドグリーンはヒスイって色らしい。それで、その色の瞳だとつける人が多い名前だそうだ。らのべとかで。
「あいつはエメラルドグリーンだけど、この子の瞳もかはわからないしさ、でもせっかくだからスイ繋がりで睡蓮にしようかなって。」
「スイレン?」
不思議な響きだ。
「そう。スミレも花の名前だからさ、スイレンっていうのも俺がいたところの花の名前。俺の中では凛として強いイメージだよ。」
スイレン。うん、良いお名前。
「そっかあ。スイレン、よろしくね?」
すぴすぴと眠っているスイレンのお鼻をこしょこしょと撫でてご挨拶。
「スミレの弟みたいなもんだからよろしくな?色々教えてやって。」
「っ、はい!スイレン、僕をお兄ちゃんにしてくれてありがとうね?沢山遊ぼうね?」
さわさわと背中をなでなで。そっかあ。弟かあ。ってことは男の子なんだなぁ。とほんわか。
「タカギ、あのね、レイラさんたちとぬいぐるみ使って抱っこの練習してたの。おめめ開いたら抱っこしてもいい?」
「おー。ぜひ抱いてやって。ってか今でもいいけど?」
「んーん。練習はしたけどふにゃふにゃでちょっぴり怖いからまたにする。落としたりしたら大変だもの。狼さんのぬいぐるみでもう少し練習するね?」
赤ちゃんは大事に大事にしないと。
それから久しぶりにお腹がぺったんこになったタカギに正面から抱きついてぎゅうっと抱き締めて貰ったらまた涙がじんわり滲んでしまったのは内緒だ。
「じゃあ、また会いに来るね。タカギはゆっくり休んで!」
産後一月ほどはお部屋でゆったりと過ごすらしいタカギにいつでも会いに来て良いとライさんから許可を貰って、クレイグと部屋に戻る。
「スイレン、可愛かったねえ…ふわふわで、ほわほわだった…」
僕は夢見心地で、身ぶり手振りを交えながらクレイグに説明する。
いつの間にか服を脱がされて、寝間着を着せられて、寝る準備が整っていく。
「スミレ、すまない。自分にクリーンかけれるか?」
そう言われて自分とクレイグにクリーンをかける。クレイグが僕に魔法を使うように言うなんて珍しいこともあるなぁと見上げれば、ムギュッと抱き締められた。
「はぁ。タカギはともかく、ライオネルの匂いがついていて柄にもなくそわそわとしてしまった…知らない奴でないだけでなく目の前で見ていたのだが、すまない。」
「ううん。獣人さんには匂いが重要だってお勉強でも習ったもの。こちらこそごめんね?お風呂もう一回入ろうか?」
タカギの性教育で獣人さんにとって匂いがとても重要だと聞いた。それと、匂い付け。僕とクレイグも今までえっちなことはしてきたけど、挿入はしていない。挿入して、精子を中で出すとしっかりと匂いがついて、ちょっとやそっとじゃ他の匂いに染まらないらしい。
だから獣人さんたちはお互いに好意を感じられたら直ぐに性行為をする。他の誰にもとられないように。
だから片想いの期間や今のクレイグの立場はとても辛いはずだとタカギやメイドさんたちにも言われたのだ。
「いや、今日はもう疲れただろう?歩くのも久しぶりだったのに魔法を使わせてすまない。風呂は明日にして早めに休もう。」
あぁ、それなのにクレイグはこんなにも優しい。
「あのね、僕スイレンにお洋服とかおもちゃとかプレゼントしたい。だから城下におりてみたいな。」
「それは…」
「色んな匂いつくの嫌だよね?だからさ、僕もクレイグの匂いになりたい。僕は人だから、あんまりわからないけど、でも、僕は大好きなクレイグのものなんだって感じたいし皆に自慢したい。」
僕もクレイグに触れたいし体温を感じたい。
皆にクレイグに沢山愛されてるんだって知って欲しい。
「それは嬉しいが、疲れているだろう?今夜は寝た方がいい。あまり煽らないでくれ、このまま壊してしまいそうだ。」
もう、僕がいいって言ってるのになぁ。クレイグは本当に心配性だ。
「ね…したいな。…だめ?、んンっ」
途端に掠めるような口づけ。
「…駄目なわけがあるか。本当に良いんだな?」
「ん。クレイグとひとつになりたいよ。」
僕の返事と同時にベッドに押し倒された。
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